第8話 難関トラップ
新しく発見されたダンジョンの探索――それは思っていた以上に順調だった。
というか、正直言ってあまり難しくないというか……出てくるモンスターも弱い部類のものばかりだし、進むだけなら初心者でも平気そうだ。
ただ、このダンジョンの攻略を困難にしているのはモンスターの質じゃない。
ある程度の距離まで進むと入口に戻ってきてしまうという、いわゆるループ系トラップが問題だった。
で、俺たちもそのループ系トラップにかかり、ある程度進んだところで、
「あれ? ここって入口じゃないか?」
やはりスタート地点へ戻ってきてしまうのだ。
「おかしいですわね……トラップが発動したような気配はありませんでしたが」
フラヴィアが不思議そうに首を傾げる。
こうしたトラップが発動するには、必ず魔力が絡んでいる。そこで、代々一流の魔法使いとして名をはせたオーレンライト家の令嬢であるフラヴィアがずっと警戒をしていたのだが……それでも見抜けなかったらしい。
「フラヴィアでさえ、このトラップの発動に気づけないとは……」
「うっかり見逃してしまったのかもしれませんよ?」
レクシーとシェルニはそう語るが……実を言うと、俺も魔剣の力を利用してずっと辺りを警戒していた。それでも、トラップがどの時点で発動したかまでは明確に捉えられなかったのだ。
……どうにも不気味なダンジョンだ。
一見、初心者でも攻略できそうな雰囲気を醸しだしておきながら、その実、ベテラン冒険者も音を上げるほどの難易度――ある意味、探索している者たちの心をポッキリと折ってくる、精神的ダメージの多いダンジョンだな。
簡単に攻略できそうでできない。
これは結構なストレスだぞ。
とりあえず、今度はザラの精霊たちにも手伝ってもらい、俺とフラヴィアも周囲への注意をさらに払って二週目へと突入。
――だが、結果は変わらなかった。
「おかしい……また戻ってきたぞ」
「どうなっているんですの?」
「精霊たちも何も気づいてなったみたいです……」
一体どうなっているんだ?
ダンジョンとしては、このまま初心者向けってことで一般開放しても問題はないんだろうけど……何か、その背後には大きな秘密が隠されているような気がして、どうにもむず痒い感覚だ。
「この広大なダンジョンのどこかに……必ずヒントがあるはずだ」
しかし、俺たちはそれを発見できないでいる。
魔力を駆使して捜してみても、まったく探知できないのだ。
「――うん? 魔力、か」
俺はふと、あることを思い出した。
以前、霧の旅団という冒険者パーティーのリーダーから聞いた話だ。
彼によると、ダンジョンの中には魔力が足かせとなるケースがあるらしい。魔力に反発するタイプのトラップと対峙した時には、その正体を暴くのに骨が折れたと愚痴っていたな。
「魔力に反発するトラップ……」
そこが盲点だったのかもしれない。
俺たちは攻略法を探すため、魔力に頼った――が、その霧の旅団のリーダーが言っていたように、この魔力に反発して発動するようなトラップだった場合、むしろ魔力を使わない方が突破口を開けるかもしれない。
「……やってみるか」
魔法縛りでルート開拓。
次は、この手でいってみよう。
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