第4話 国王との再会

「お久しぶりです、ブライス国王陛下。ただいま帰還しました」

「君にその名で呼ばれるのは何だか照れ臭いな」


 そう言って苦笑いを浮かべるブライス国王――だが、俺と彼とではもう立場が違う。

 もともとはうちの店にバイトで入って、それから一緒に魔界へ乗り込んで……苦楽をともにした、いわば戦友と呼べる間柄の頃もあったが、こうして王の座につくブライス王の前にいると、立場の違いを改めて実感させられる。


 ――だが、ブライス王はあの頃と何ひとつ変わらない笑顔を俺に向けてくれている。

 正式に王位を継承してもなお、それまでと変化のない態度で接する。

 ブライス王のいいところでもあり、危うい面でもあるな。


 とはいえ、ブライス王はなかなかの切れ者だ。

 先見の明があるというか、とにかく「読み」が鋭い。


「元気そうで何よりだよ。旅の話を聞きたいのだが」

「はい。それでは、最初に俺たちが訪れた人魚族たちの住む島についてお話ししましょうか」

「人魚族!? それはなんとも興味深い……」


 まるで少年のような瞳でこちらを見つめるブライス王。

 では、その期待に応えられるよう、時間の許す限り、俺たちの冒険譚をお聞かせするとしよう。



 結局、俺たちの話は二時間ほどに及んだ。

 ここからは政務に影響が出るからということで、また後日改めてのんびり話をすると約束した。

 それから、戻ってきてからの俺たちの仕事について話題が移る。


「そういえば、新しいダンジョンが見つかったそうだね」

「えぇ。ザイケルさんからその話を聞きました」


 国王という立場上、やはり新しく出てきたダンジョンは気にかかるみたいだ。それによっては税収とかも変わってくるだろうし、最寄りの町である商業都市ダビンクがさらなる発展を遂げる可能性もあるからな。


「俺たちは明日になったらそのダンジョンへ挑むつもりです」

「あのシューヴァルを倒した魔剣使いの商人とその仲間たちならば、きっとダンジョンの謎を解けるだろう。報告を楽しみにしているよ」

「どこまでやれるかは分かりませんが、ご期待に添えるよう頑張ります」


 魔界での一件があってから、ブライス王は俺たちのことを信頼してくれている。

 今は国王という立場もあって、以前のように気軽な行動はできなくなった――だから、そうなってからこうして信頼してもらえるのはより嬉しいな。


 

 国王への報告が終わると、俺たちは残りの時間を王都散策に当てた。

 今日についてはこのまま宿に泊まって、明日の朝一でダンジョンに直接向かうとしようってことで決定した。


「この服いいわねぇ」

「レクシーさんにお似合いです!」


 レクシーとシェルニは新しい服を選ぶのに夢中となっている。

 一方、ケーニルとザラは雑貨屋でいろんな小物を仲良く見て回っていた。


「みなさん、久しぶりの王都ではしゃいでいますわね」

「これまでいろんなところへ行ったけど……やっぱり、どうしても仕事って感じがあったからな」


 俺とフラヴィアは、王都散策を満喫しているみんなを眺めながらカフェでティータイム中。


「フラヴィアは行かなくていいのか?」

「わたくしは――あなたと一緒に明日のダンジョン対策に頭をひねろうと思いまして」

「ははは、こちらの考えはお見通しか」


 さすがはフラヴィアだ。

 それじゃあ、彼女の知恵も借りながら、俺たちは作戦会議といきますか。

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