第2話 事情説明
「少々困った問題があるというのは事実だ」
ザイケルさんが言う困った問題――それについて、詳しい話を聞くことになった。
「新しいダンジョンが発見されたんだ」
「えっ? それは喜ばしいことじゃないですか?」
「普通はそうなんだけどなぁ……」
歯切れの悪いザイケルさん。
なんか、このやりとりも懐かしいな。
――話を戻して。
普通、町の近くでダンジョンが見つかれば、大騒ぎになる。武器屋や宿屋などはさらなる集客が見込めるし、町の発展に大きく貢献できるからな。
それでもザイケルさんが浮かない顔をしているということは……そのダンジョンを調査した結果、とんでもない欠陥が見つかったってことだろうな。
「新しいダンジョンって、どんな場所なんですか?」
「我々は仮の名称として氷結のダンジョンと呼んでいる」
「氷結のダンジョン……」
それだけで、ダンジョンの特徴が読み取れた。
つまり、
「めちゃくちゃ寒いダンジョンってわけですね」
「ただ寒いというだけじゃない。厄介なのは、そのダンジョンに仕組まれたトラップにある」
「トラップ……」
前にもあったな。
ザイケルさんからの依頼で、みんなと新しいダンジョンを探索した時だ。あの時は日によってルートが変わるというかなり特殊なトラップが仕掛けられていた。
「あのダンジョンを突破した君たちならば、氷結のダンジョンも攻略できるかもしれない――と、考えていたが、本当にこのタイミングで帰ってきてくれるとはありがたいな」
ホッとしたように語るザイケルさん。
恐らく、それが偽りのない本音だろう。
俺たちとしても、世話になっているザイケルさんや、この商業都市ダビングがより発展するために力を貸すことはやぶさかではない。
で、肝心なのはそのトラップ。
俺は詳細な話を聞くことにした。
「一体、どんなトラップなんですか?」
「全容は未だ解明できていないが……転移系のトラップ」
「転移系?」
「そうだ。ある程度の場所まで進むと、いつの間にか入口に戻ってきてしまうらしい。いわゆる、ループトラップってヤツだ」
「ループトラップ……」
その手のダンジョンにも聞き覚えがある。
ただ、俺がいない間も、名のある冒険者たちが依頼を受けて調査を行っていたはず。それでもハッキリとした正体が掴めないとなると……これは攻略するのにかなり骨を折ると見た。
――まあ、だからこそやりがいがあるんだけど。
「分かりました。全メンバー総力を結集して挑みます」
「っ! 本当か! 助かるよ!」
「ただ、その調査ですが――明後日からでもいいですか?」
「構わないが……明日は何かあるのか?」
「王都へ行こうと思っています」
「っ! そうか……ブライス国王陛下に挨拶へ行くのだな」
「はい」
かつて、ともに魔界で戦ったブライス王子――いや、今は国王陛下か。
ともかく、盟友でもあるブライス国王にみんなで挨拶をしに行かなくちゃ。
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