外伝
第1話 帰ってきた魔剣使いの商人
「一年ぶりか……」
久しぶりに見る、商業都市ダビンクの町並み。
みんなと一緒に世界を見て回る旅をして、いろんな場所を訪れたけど……やっぱり、ここが一番だな。あれだ。旅行から戻ってきて「我が家が一番」って思ってしまうのと同じ現象だ。
「アルヴィン様、まずはお店に行きますか?」
「それともギルドにします?」
シェルニとフラヴィアの質問に、俺は笑顔で答える。
「確かに店も気になるが……それより、まずはザイケルさんとリサに戻ってきた挨拶をしていこうと思う」
「やっぱりそっち優先よね」
「おふたりには留守の間、お店を管理していただいていましたし」
「お土産もあるしね!」
レクシー、ザラ、ケーニルからも賛成を得られたので、早速俺たちはダビンクの冒険者ギルドへ寄ることにした。
一年ぶりに訪れたギルドは、特にこれといって大きな変化もなく、いつも通りの調子だった。
――ただ、
「「アルヴィン!?」」
ギルドマスターであるザイケルさんと、その娘で受付を担当するリサの反応はこれまでで一番大きかった。
「いつ戻ってきたんだ!?」
「ついさっきですよ」
「にゃ~……ようやくみんなに会えたにゃ~」
よほど寂しかったのか、リサは俺やシェルニたち女性陣とハグをして再会を喜んだ。
それから、俺たちは奥の応接室へと通され、そこで旅の土産話をすることに。
「それにしても、あの時は驚いたなぁ。まさか世界のさまざまな大陸を見て回って勉強してくるなんて言いだすから」
「俺たちはこの大陸から出たことがありませんでしたし……おかげでいい勉強になりましたよ。世界は俺の想像を遥かに超えた、凄い人たちで溢れていました」
「たとえばどんな?」
「そうですね……離島に教え子とたちと移り住んでいる賢者や、要塞を村にして暮らす少年たち、ダンジョンに農場をつくっている子もいれば、
「ほぉ……そんなにか」
「まだまだたくさんいるんですけどね」
俺はみんなと旅をして、本当に世界の広さを実感した。
正直、まだまだ回ってみたいところがあったにはあったが、あまり長く離れすぎると忘れられてしまうかもしれないと思い、一年という期限を設けたのだ。
「君たちにとって、実りのある旅になったようだな」
「えぇ」
そう語るザイケルさんの視線は、シェルニやフラヴィアたちに向けられている。あっちはリサと一緒に旅を振り返っているようだが、とても盛り上がっていて、笑い声が絶えない。
いかに充実した旅だったかがよく分かる。
「店の営業は、明日一日を準備期間として明後日から開始するつもりです」
「分かった。こちらも掲示板にそのことを載せておく」
「よろしくお願いします。――ところで、ダンジョン絡みで何かトラブルとかなかったんですか?」
「あぁ……何もないといえば嘘になるな」
歯切れの悪いザイケルさん。
どうやら、またしても厄介な事件が起きているらしい。
一体、何があったんだ?
…………………………………………………………………………………………………
【お知らせ】
新作を投稿しました!
「騎士団の落とし物係」
https://kakuyomu.jp/works/16817139558453876790
戦いの終わった戦場で回収される《落とし物》から始まる物語で、5~6万文字の中編になる予定です。
※こちらは「お仕事コンテスト」参加作品です。応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>
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