第234話 最初の標的
フェリオの手下によるギルド襲撃事件。
これがダビンクに与える影響はことのほか大きかった。
ヤツの狙いはこれだろう。
自分たちの行っている悪事に迫ろうとするならば容赦なく制裁する。
さらに勢力を拡大し、巨大組織へと成長したら、今度は堂々と表立って悪事を働くに決まっている。力を蓄えてから行動に移そうとする辺り、タイタスには感じられないしたたかさがあるな。
そうなる前に、対策を講じなければならない。
……まあ、対策っていうか、さっさと討伐すればいいだけの話。
ただ、あのフェリオがそう簡単に尻尾を掴ませるとは思えない。
あと、俺の名前を語っていることから――ヤツは俺を誘いだそうとしている節がある。
カジノを経営し、裏社会を牛耳ろうとしたタイタスと同じように見えて、俺への執着という面では明確な違いがある。
しかし……謎だな。
救世主パーティーにいた時、フェリオとはもっとも接点が少なかった。
タイタスやガナードはいろいろと難癖をつけてきたが、フェリオはそれに加担するようなことはなく、ただただ俺を見下しているって感じだったな。プライドだけは異常に高かったが……確か、それなりの名家出身って話だから、そのためかな。
いずれにせよ、今後は警戒を強めていこう。
そして、一刻も早くフェリオを見つけださないと……これ以上被害が広まらないうちにな。
◇◇◇
「アルヴィン様? どうかしましたか?」
店番をしている俺のもとに、シェルニが不思議そうな顔をしながらやってきてそんなことを言う。
「いや、特に何もないよ」
「そ、そうですか……」
シュン、と頭を垂れるシェルニ。
……そんな顔をされたら、黙っているわけにはいかないか。
「すまない、シェルニ。本当は……少し気がかりがあるんだ」
「気がかり……ですか?」
カクンと首を傾げるシェルニへ、俺はその気がかり――フェリオのことについて話をした。
「フェリオは俺を狙っている……それも、直接ではなく間接的に……そう考えると、次にヤツの標的になりそうなのは――」
そこで、ハッとなって口をつぐむ。
――そう。
最大の気がかりはそこだった。
俺の名を語ったことから、フェリオの狙いが俺を誘いだそうとしているのは明白。
ただ、そうなってくると……標的になるのはシェルニ、フラヴィア、レクシー、ケーニル、ザラが狙われることになる。
特に、戦闘手段のないシェルニはひとりになった時を狙われる可能性がある。
「シェルニ……しばらくは、俺たちの目の届く範囲で行動してくれ」
「分かりました! アルヴィン様とずっと一緒にいます!」
……別に、俺限定じゃなく、フラヴィアやレクシーといてくれてもいいんだけど――って、言おうとしたのだが、シェルニの瞳があまりにもキラキラと輝いていたので言いそびれてしまった。
すると、そこへ、
「旦那ぁ!」
情報屋のネモが慌てた様子で入ってきた。
「どうしたんだ、ネモ。そんなに慌てて」
「そ、それが……北門の外にあるダンジョンの辺りで見かけない冒険者たちがいたんですけど――彼らは旦那を捜しているようでした」
「何? ……待てよ」
あそこのダンジョン……今日はレクシーが挑んでいたはず。
つまり、ヤツらの最初の狙いは――レクシーだ!
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