第235話 狙われたレクシー

 元救世主パーティーのひとり――フェリオが動きだした。

 明確に俺たちを標的にしているようで、その最初のターゲットはダンジョンへアイテムの回収に向かったレクシーだった。


 俺は店番をフラヴィアとザラに任せ、シェルニ、ケーニル、ネモを連れてダビンク北門の向こうにあるダンジョンへと向かった。


「俺だけを狙うならまだしも、仲間まで狙ってくることは……ないとも言えないな」


 フェリオの性格を考えたら、十分あり得る事態だ。

 なんというか、彼女は……粘着質なんだよなぁ。

 以前も、付き合っていた男が浮気をしていたと知った時、その男を――ああ、いや。思い出すのはよそう。

 ともかく、そういう意味ではタイタスより厄介な存在と言える。

 

「でも、レクシーさんは単体でも相当な戦闘力を持っているっすよね?」

「格闘戦なら、うちのパーティーでもトップクラスです」

「レクシー強いもんね~」


 そうなんだよな。

 純粋な殴り合いとなったら、レクシーに勝てるヤツなんてそうはいないだろう。身体能力が段違いな魔人族のケーニルは別として……俺はたぶん勝てないな。


 しばらく進んでいくと、何やら人だかりができていた。

 それは明らかに普通の状況ではない。

 何かトラブルが起きて、野次馬が集まっている――そんな感じだ。


「遅かったか!」

 

 ここまでの展開から、フェリオの放った悪党たちがレクシーに襲い掛かった――ってところか。


 人ごみをかき分けていくと、やがて人が集まっている理由にたどり着く。

 そこには、レクシーがいた。

 腕を組み、堂々たるたたずまい――ひとまず無事が分かってよかった。

 そのレクシーだが、険しい表情をしている。

 細められた瞳が見つめる先にいるのは……五人の武装した屈強な男たち。

 だが、五人は折り重なるようにして倒れており、気を失っていた。

 ……あんな風になるまでの経緯が手に取るように分かる。

 きっと、レクシーに俺の居場所を脅して聞きだそうとしたが、逆に返り討ちに遭ってしまったってところか。


「レクシー!」

「えっ? アルヴィン? それにみんなまでどうしたの?」


 いきなり大勢で押しかけたものだから、レクシーは戸惑っているようだ。


「あっ、そうそう。あっちにいる男たちがアルヴィンを捜していたみたいだけど……知り合い――じゃないわよね?」

「当然だ……とも言い切れないか」


 男たちの雇い主とは、元パーティーメンバーってつながりがある。

……それしかないし、逆恨みもいいところだけど。


「ともかく、無事でよかったよ」

「あの程度の連中ならどれだけ襲ってきてもたいした脅威じゃないわ」


 サラッと言い切るレクシーだが、それは決して強がりでもなんでもない。レクシーならば、それくらい軽くやってのけるだろう。


 さて、レクシーの無事だけでなく……フェリオが本気だっていうことも確認することができた。


「フェリオ……」


 早急に手を打つ必要があるな。

 そのためにも……気絶している五人からできるだけ多くの情報を聞きだすとしようか。

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