第230話 詐欺士撲滅?
「あそこか……」
「行ってみましょう」
俺とザイケルさんはラッセを縄で縛って動きを封じる。
念のため、近くの木の幹へ括りつけた後、魔剣の力を使って拘束魔法をかけ、逃げられないようにしておいた。
それから、改めてヤツらが根城にしていると思われる倉庫へと入っていく。
倉庫内は静まり返っていた。
一見、どこにも人はいないようだが……明らかに気配がする。
「どこかにヤツらのアジトにつながる道があるはずなんですが……」
「手分けして探してみるか」
「ですね」
とりあえず、倉庫内に怪しい場所はないか調査開始――と、
「! ザイケルさん」
早速怪しい場所を発見した俺は、連中に悟られないよう小声でザイケルさんを呼ぶ。ザイケルさんも勘づいたようで、音を立てないよう静かにこちらへやってきた。
「どうした?」
「この辺りだけ、不自然に埃がないんですよ」
俺が指差したのは、倉庫内に捨てられていた棚。
しばらくの間、誰もこの倉庫に入ってきていないことを証明するように埃まみれであったのだが、その棚の周りだけは綺麗になっている。――つまり、
「どうやら、連中はこの向こう側らしいな」
「すぐにこいつをどかしましょう」
「おう」
俺たちは極力音をたてないように注意を払いながら、棚をどかしていく。すると、その先には明らかに最近作られたと思われる真新しい鉄製のドアがはめ込まれていた。
「ちっ……こんなもの、一体どこから調達してきやがったんだ」
「北門周辺を整備していますから、そこに資材を搬入する業者のフリをしてここまで持って来たんですかね」
「姑息な手を使いやがる」
ザイケルさんは大きくため息を吐きながら、ゆっくりとドアを開ける。
すると、まず長い廊下が目に入り、その先にはぼんやりとした灯りが見えた。耳を澄ますと、話し声も聞こえる。
「面倒だ。とりあえず、ここにいる連中だけでも捕まえておくか」
「分かりました」
敵は複数。
だが、俺とザイケルさんを同時に相手とするなら……まあ、相当な人数がいないと無理だろうな。さすがにこの倉庫に収まりきる程度の数なら問題ない。変に勘づかれて逃げられるのも嫌だし。
忍び足で灯りに近づいていくと、広い空間へと出た。
そこではランプの灯りを囲むように合計で五人の男が札束を数えたり、これから詐欺に使うと思われるバッグやらコートやらのブランド品を整理していた。
「動くな!」
ザイケルさんが飛び出し、男たちに叫ぶ。
突然現れた侵入者に、男たちは動揺――が、こちら側の人間がふたりだけだと分かった途端、態度を急変させる。
「自警団か? この場所を知られたなら、生かしては帰せねぇな」
リーダー格の若い男が言うと、他の男たちも武器を手にして下卑た笑みを浮かべる。
……こいつら、俺はともかくザイケルさんを知らないのか?
「身の程知らずはまさにこのことだな」
ザイケルさんは拳をボキボキとならしながら臨戦態勢を取る。
なんか、急に向こうの連中が可愛そうに思えて来たよ。
「ほざけ!」
武器を手にした男たちが俺たちへ突進してくる。
――が、その勢いは一瞬のうちにしてねじ伏せられてしまい、彼らはあっさりと降伏するのだった。
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