第231話 夜の来訪者
「こ、ここまで強いとは……」
拘束された男たちは口を揃えてそんなことを言う。
ちなみに、男たちはほとんどザイケルさんがひとりで片づけた。その戦い方は圧巻のひと言に尽きる。
最初の強烈な一撃で男たちを吹っ飛ばしたが、飛んだのは体だけでなく闘争心もあったようだ。それ以降、男たちはすっかり大人しくなってしまった。
外で縛り上げていたラッセも含め、これから早速ザイケルさんたち自警団による取り調べが行われるらしい。
「大丈夫でしたか、アルヴィン様!」
「ケガとかしてないですか!?」
北区のメイン通りに戻ってくると、すぐにシェルニとザラが駆け寄ってくる。
俺は自分と、詐欺組織を捕まえたことをふたりへ報告。
――が、メンバーでもっとも付き合いが長いシェルニは、俺の異変に気づいたようだ。
「アルヴィン様……何かありましたか?」
「えっ?」
「なんだか……そんな気がして」
明確に態度であらわれていたわけではなく、「なんとなくそんな雰囲気だった」というレベルなのだが、それがシェルニに違和感を与えていたようだ。
「ははは、シェルニには隠し事ができないな」
「さすがはシェルニさんです!」
「い、いえ、そんな……」
ザラに褒められて照れるシェルニ。
「アルヴィン様のことならなんでもご存知なんですね!」
「~~っ!」
子どもからの真っ直ぐな言葉を受けて、今にも倒れそうなほど顔を赤くするシェルニ。大丈夫か?
「とりあえず、もうじき夜になるし、今日のところは戻ろうか。シェルニが気にかけてくれたことについても、その時に話すよ」
「はーい♪」
「そ、そうですね!」
あとのことは自警団のみなさんにお任せするとして、俺たちはひと足先に店へ戻ることにした。
その日の夜。
食卓を囲みながら、フラヴィア、レクシー、ケーニルの三人にも本日の出来事を報告する。
その際、俺はシェルニにも指摘された気になる点――顔も名前も知らないが、同じ救世主パーティーに所属していた男についても語った。
「アルヴィンの後釜として入った割には、情けない男ね」
「リーダーがリーダーですものね」
ガナードを知るレクシーとフラヴィアはラッセの言動について「やっぱりな」という印象を抱いているようだった。
――まあ、確かにラッセのことも気がかりであるが、俺が気にかけているのはもっと別の件だ。
それはシェルニも分かっているようで、さっきからチラチラとこちらへ視線を送っている。
そろそろ本題に移ろうかなと思った、まさにその時だった。
ドンドンドン!
閉めている店のドアを激しく叩く音が響き渡る。
「な、なんだ!?」
突然の事態に慌てつつ、ドアへ向かうと、
「アルヴィン! 大変にゃ! 一大事にゃ!」
ギルドの看板娘でもあるリサだった。
ひどく狼狽しているリサは、さらに驚くべき情報を告げた。
「パパが……パパが……」
「! ザイケルさんに何かあったのか!」
……こりゃホントにヤバいことが起きたみたいだな。
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