第218話 再び王都へ
新しいダンジョンに出現した魔人族。
最近は鳴りを潜めていたが、ザイーガの件を通して何やら異変が起きていると察知した俺たちは、それをエルドゥーク王国の騎士団へ報告するため、王都へと向かうことに。
同行するのは王家にも顔が利く御三家の一角・オーレンライト家の令嬢フラヴィア。そして、こちらも顔が知られているザイケルさんのふたり。……このメンツだと、むしろ俺の方がおまけの同行者って感じだな。
「アルヴィン……」
不安そうな顔で俺を見つめるのはケーニルだ。
彼女自身も魔人族であり、殺されたザイーガには恩を感じている。
心境としては敵討ちをしたいのだろうが……まだまだ情報不足の現状では下手に手を出すわけにはいかない。
「大丈夫だよ、ケーニル。騎士団と情報を共有して、必ずザイーガを暗殺するよう企てたヤツを見つけてみせる」
「うん」
そう勇気づけて、俺は店の外へ出る。
そこでは、すでにザイケルさんが馬車の準備を整えており、フラヴィアが腕を組んで俺を待っていた。
「……準備はよろしいですの?」
俺にそう尋ねたフラヴィアの表情は険しい。
実を言うと、彼女は俺の王都来訪に反対だった。
理由は救世主パーティーが解散していたから。
王国としては、魔王討伐へ向けた大黒柱を失った形となっている。もっと言えば、国民にとって主役不在という現状。
フラヴィアは、この喪失を俺で埋めようとしている可能性があると推察していた。
俺としては大袈裟じゃないのかって感じだが、ザイケルさんもフラヴィアと同じで、騎士団の掌返しを気にしていた。
まあ、以前会ったハリエッタって女騎士がそのようなことを口走っていたし、まったくない話ではないのだろう。
俺としては、今さらそんなことを言われても困るっていうのが率直な感想だ。
俺が扱うのは、ガナードの使う聖剣と真逆の位置にある魔剣。
そういった名前にこだわりのある騎士団が、俺を新たな救世主に立てるというのは考えづらい。
――ただ、気になる存在がいる。
それは騎士団長であるジェバルトさんだ。
正直言って、あの人が何を考えているのか、俺には分からない。掴みどころのない、雲のような人だ。騎士団が何かを画策しているとするなら、間違いなくあの人絡みであると断言できる。
……いずれにせよ、
「俺が救世主として騎士団に加わるってことは万にひとつとしてないよ」
俺はふたりへキッパリとそう宣言する。
「アルヴィンさんなら、そう言うと思いましたわ」
「もちろん、俺もそう思っていたぞ。まっ、念のためってヤツだ」
俺のことをよく知るふたりだから、きっとそう答えてくれるものだと思ったよ。
改めて、俺は今回の目的を整理する。
ただ、内容は至極簡単。
ダンジョンに魔人族が現れた――そう伝えればいいんだ。
あとはもう何もしない。
スパッと城を出て、ダビンクに戻ってくる。
うん。
単純明快で分かりやすい。
「さあ、そろそろ出ましょうか」
「ああ」
フラヴィアに促され、俺は荷台へと移動。
レクシー、シェルニ、ザラ――そしてケーニルに見送られた俺たちは、一路王都を目指して出発した。
さて……当初の目標通り、何事もなく穏やかに終わってもらいたいものだ。
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