第217話 ケーニルからの情報
その日の夕食時。
まず、俺からダンジョンで起きた出来事についてフラヴィアたち留守番組へ伝えた。
「ま、魔人族ですか……」
「こんな近くに……」
シェルニとザラはこれまで戦ってきた魔人族たちを思い出して顔が青ざめる。
対照的に、フラヴィアの表情に揺らめきはなかった。
その視線はジッとケーニルを見つめている。
恐らく、ケーニルの態度がいつもと違うことを見抜いたのだろう。
「その魔人族……もしかして、ケーニルさんと関係がある方ですの?」
フラヴィアは遠回りせず、最短距離で核心をつく。
直後、ケーニルの体がビクッと強張った。
そこで、シェルニとザラもケーニルの異変に気づいた。
周りのメンバーからの視線を集めたケーニルは、覚悟を決めるように小さく頷くと、静かにザイーガとの関係を語り始めた。
まず、帰り道で俺とレクシーに語った内容を伝えた後、さらに詳しい情報を教えてくれた。
「ザイーガは魔王軍の中でも上位の実力者で、魔族六将に欠員が出たらその穴埋めは間違いなく彼になると言われていたの」
「そんなに……」
言ってみれば幹部候補ということか。
しかし、そうなるとひとつ疑問が浮かぶ。
「なぜ、ザイーガは同じ魔王軍の兵士に殺されなければいけなかったんだ?」
「それは……正直なところ、私にも分からないの」
申し訳なさそうに、ケーニルは言う。
「ということは……魔王軍の中でもごく一部の者しか知らない事情があるってことか」
「ですが、それほどの大物が消えたとなったら、魔王軍も大騒ぎになるのではなくて?」
「私もそう思う。ザイーガは部下からの人望も厚かったし、彼のためなら身を投げ出しても守るという強い忠誠心を持つ者も少ないから」
「ほ、本当に凄い存在だったんですね……」
ザラが言った通り、ザイーガは魔王軍にとって欠かせない存在と言える。
それでもザイーガを消さなければならなかった理由――
「あっ」
その時、ケーニルが何かを思い出したようで、小さく声をあげた。
「どうした?」
「え、えっと……ザイーガを消すように指示を出したのは――氷雨のシューヴァルかも」
「シューヴァル?」
氷雨のシューヴァルといえば、魔族六将のひとりで、かつて俺の師匠である聖騎士ロッドと戦った魔人族だ。ケーニルは、そのシューヴァルが、今回の事件に何らかの形でかかわっているのではと推測したらしい。
「シューヴァルは昔からあまりいい噂を聞かなかったの。他の五人は魔王に忠誠を誓っているのに……シューヴァルだけは、どこか反抗的だって」
「それ、誰が言っていたんだ?」
「……ザイーガが」
「!」
……なるほどね。
もしそれが本当だとするなら、シューヴァルは現魔王体制に不満を持ち、反乱する意思があった可能性もある。それにザイーガはそれに気づき、報告をしようとしたが、シューヴァル派の魔人族に襲撃された、と。
「……いずれにせよ、一度報告のために騎士団へ行った方がよさそうだ」
ガナードの件も含め、行ってみるか――王都へ。
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