第204話 コネクション強化
タイタスはエルドゥーク騎士団によって身柄を拘束された。
その後、いろいろとカジノ内の調査が進められ、さまざまな違法行為が発覚。
言い逃れができない証拠も続々と見つかったようで、タイタスはしばらくの間、塀の中で暮らすことになりそうだという。
一方、カジノに入って以降もまったく姿を見せなかったトーレス商会のトップ――クラーク・トーレスだが、彼は地下に幽閉されていた。
最初はいい顔をして近づき、このカジノも健全な運営を前提に共同経営をしていくという流れだったが、いつの間にかそれがなくなり、客から違法に金を巻き上げる悪徳カジノと成り下がっていた。
おまけに、武力によって商会のすべてを奪われ、さらには取引の際に顔見せ役として参加するためだけの理由で生かされていた。まさに奴隷って感じだ。
「フィーユ!」
「お父さん!」
ようやく再会を果たした親子は、カジノのエントランスで泣きながら抱き合う。
あとで分かったことだが、タイタスはフィーユを自分の妻として迎え入れる準備を進めていたらしい。
それを知ったクラークさんは、フィーユを逃がすために芝居をうった。
いかなる時も見張りが監視の目を光らせている状態では、綿密な打ち合わせもできず、クラークさんは娘のフィーユを信じ、外へと逃がす。
フィーユはそのショックから、当初は軽装でダンジョンに挑んだりと、冷静さを欠いた行動をとっていたが、なんとか持ち直し、今に至る。
「とりあえず、一件落着だな」
「そのようですわね」
俺とフラヴィア、そしてほかのみんなも、事件が解決してよかったと心から安堵するのだった。
「本当に、なんとお礼を言ったらよいか……」
カジノへのガサ入れが続く中、クラークさんが俺たちのもとへやってくる。
「いえ、助かって本当によかったですよ」
「娘から聞いたが、君も商人だとか」
「はい。まだまだ駆け出しのひよっこですけど」
「いやいや……うむ。噂通りの好青年だな」
「噂?」
「実は噂はかねがね耳にしていたのだ――君の噂を」
「ど、どんな噂ですか?」
「魔剣を使うとても強くて、誠実な商人がいる、と」
そ、そんな噂があったなんて知らなかったな……。
その後、俺とクラークさんはすっかり仕事の話で意気投合。
ついには世界でも屈指の大商人であるクラークさんから「困った時はいつでも声をかけてくれ。お手伝いするよ」とまで言ってくれた。
クラークさんとフィーユのふたりが、騎士団へ事情を説明するため離れた際、俺たちは集まって先ほどの話を振り返っていた。
「キースさんに続いてクラークさんと……強い力を持つ大商人たちとのコネクションが増えましたわね」
「「さっすがはアルヴィン(さん)♪」」
「まあ、アルヴィンなら当然の結果よね」
「俺だけの力じゃないよ。みんながいてくれたら、ここまで来られたんだ」
「アルヴィン様……」
そうなんだ。
タイタスを見ていて強く思う。
どんなに優れた力や才能を持っていても、自分ひとりでの行動には限界がある。
その先――限界を超えた先へ向かうには、仲間の存在が必要不可欠だ。
「こうした経験を積んでいれば……ガナードもまた違ったのかな」
タイタスが騎士団に捕らえられたことで、事態はまた大きく動くだろう。
果たして、救世主パーティーは、これからどうなってしまうのか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます