第202話 本当の力

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「バカなっ!?」


 信じられない事態が起きた――と、タイタスは思っているようだが、俺からしたらこれは必然の出来事だ。


「俺と魔剣もパワーアップしているんだ」


 短く告げて、俺は魔剣にまとわせた炎をタイタスへと放つ。

 渦を巻いて迫り来る炎を、タイタスはなんとか生み出した防御魔法で受け止める。しかし、それは完璧なものではなく、大きなダメージを負うこととなった。


 ……タイタスの中には、未だにパーティー時代の「魔剣を使えず力を発揮できなかった俺」がチラついているのだろう。プライドの高いヤツが、今さら「実はあっちの方が上でした」って現実を受け止めることは難しい。


「お、おのれぇ!」


 ゆえに、タイタスは俺に立ち向かってくる。

 すでに武器は破壊されているため、格闘戦に持ち込もうとしている――が、先ほどのダメージは深刻なもので、タイタスからいつものパワーとキレを奪っていた。

 それでも、タイタスは俺に勝てると思っている。

 今、自身のみに起きている事態を、どこか夢心地で見ているのだろう。

 ……仮に万全の状態であっても、格闘戦だけで魔剣使いの俺には勝てない。



 タイタスだって、それは分かっているはずだ。

 今も、風魔法の直撃を食らい、背中から壁に叩きつけられて倒れ込みながらも、その瞳は憎悪で埋め尽くされ、鈍い光を放っている。


 配下の者たちは少しでも援護しようと、レクシーとケーニルを人質にする作戦を思いついたようだが、全員漏れなく返り討ちに遭っており、そちらからの応援も望めない状態となった。


 万策は尽きた。

 もはや勝ち目などない。


 それでも、タイタスはあきらめない。


「貴様の……貴様のせいで……」


 歯を食いしばりながら立ち上がり、



「貴様さえいなければああああああああああああ!!!!」



 断末魔にも聞こえる雄叫びをあげながら、死力を尽くした拳を浴びせる。

 ――もちろん、それをもらってやるわけにはいかない。


 大振りのパンチをかわし、トドメを刺そうと魔剣の属性を変える。



《雷》



 一瞬の閃光のあと、タイタスの体を雷撃が貫いた。 

 もちろん、トドメを刺すと言っても殺すわけじゃない。調べれば、カジノでの違法行為もいろいろと見つかるだろう。

 そうなれば、あとはエルドゥーク王国騎士団の出番だ。

 ……ジェバルト騎士団長あたりはすっごい笑顔でやってきそうだな。


「お疲れ様、アルヴィン」

「やっぱりアルヴィンの方が強かったね♪」


 労いの言葉をかけてくれたのはレクシーとケーニル。

 ふたりとも、タイタスの配下に襲われかけたが、まったく問題なく蹴散らしていたな。



 

 ……しかし、タイタスがここまで堕ちたとなると、他のメンバーはどうなんだ?

 ガナードにフェリオ、そして新加入したリュドミーラ。

 もし、タイタス同様に解散して自由の身となっていたら、その優れた力を悪用する可能性もある。特にガナードは……大人しく従うようなヤツじゃないだろう。

 

 心配は心配だが、今はそれよりも、外で待っているフィーユにこのことを教えてやらないとな。


 俺は魔剣を鞘へとしまう――その時、


「動くな! エルドゥーク騎士団だ!」


 まだ通報していないにも関わらず、騎士団がやってきた。

 ちょっと早すぎやしないか……?


 疑問に思っていると、ひとりの女性騎士が前に出た。


「我が名はハリエッタ。魔剣使いの商人アルヴィンとは貴様のことか?」

「えっ?」


 俺を捜している?

 一体……なぜ?


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