第198話 いざ、カジノへ

 俺とレクシー、それにフードをかぶって顔を隠すケーニルの三人で、いよいよ敵のアジトであるカジノへと乗り込む。


「カジノかぁ……私は入ったことないのよねぇ」

「そもそもカジノって何?」


 レクシーとケーニルには縁遠い場所のようだ。

 かく言う俺も、こういった類の店には入ったことがない。

 あまりいい話を聞かないしな……。


 俺たちは大きな橋を渡り、その先にある建物へと向かう。

 あれが……サルマーのカジノ。

 周辺は武装した屈強な男たちで守られている。

 カジノということで、結果次第では荒れ狂う客もいるのだろう。今も「イカサマしやがって! 金を返せ!」と叫んでいた客が、たくましい大男たちに担がれてカジノから放り出された。


「ちょ、ちょっと、あれ……」

「きっとカジノで大負けしたんだろうな」


 なるほど。

 確かに、健全とは呼べない状況か。

 これだけ大きな建物が町のど真ん中にあったんじゃ、気が気じゃないよな。


「もしかして……フィーユのお父さんもアレに加担しているの?」


 ケーニルが不安げに尋ねてくる。

 これについては……何も言えない。

 まだ何も分からない状態だからな。


「それを確かめるためにも……カジノへ向かうぞ」


 ふたりも覚悟も決めたらしく、俺の言葉に黙って頷いた。

 入口まで来ると、


「あっ、ちょっと」


 受付にいる男が声をかけてきた。

 まさか……俺たちのことがバレた?

 ドキッとしながら足を止めると、

 

「ここでは武器の持ち込みを禁じている。それぞれの武器を置いて行ってくれ」


 受付の男はそう言って、ある場所を指差す。

 そこには武器を預かるクロークがあり、カジノの従業員が管理をしているようだ。


「ア、アルヴィン……」

「大丈夫だよ、レクシー。剣を預けよう」

「! い、いいの!?」

 

 レクシーとケーニルは驚く。

 以前の俺なら、引き下がって作戦を立て直すが――メアリーさんの手によって生まれ変わったこの魔剣には、まだまだ隠された力がある。俺の手から離れても、こいつを扱える術はないし、取り戻すことも可能だ。


 手ぶらのケーニルを除いて、俺とレクシーはそれぞれ武器を預ける。

 それが終わり、署名をしてからカジノ内部へと入っていった。




 カジノ内部はまるで王室が抱えるダンスホールのような広さと絢爛さがあった。

 

「す、凄い……」

「とっても豪華だね!」


 初めて見るカジノに、レクシーとケーニルは興味津々。

 あちらこちらを忙しなく眺めるその姿は……ディーラーたちにとって格好のカモに移るだろう。


「どうだい、お嬢さん。俺とひと勝負しないかい?」


 イケメンディーラーがウィンクをしながらレクシーを誘う。

 が、


「いいえ。お断りよ」


 ビシッと「NO」の返事を送る。

 そりゃそうだ。

 遊んでいるわけにはいかないからな。

 俺たちはこれから――


「む?」


 行動を開始しようとした矢先、気配を感じた。

 ……間違いない。

 数人の男たちが俺たちを監視している。

 明らかに、こちらを特別視していた。


「今度は本当に俺たちの目的がバレたのか……?」


 しかし、だとしたら一体なぜ?

 カジノの親玉――フィーユの父親を騙そうとしている人物は俺たちに目をつけたのか。


 もしかして――俺たちと前に会ったことがあるヤツなのか?

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