第199話 カジノの秘密
周りの男たちは徐々に俺たちとの距離を詰めてくる。
それに合わせて、レクシーやケーニルも異変に気づき始めた。
「……アルヴィン」
「ああ……どうやら勘違いってわけじゃなさそうだ」
できれば思い過ごしであってほしかったが……どうやら違うみたいだな。さすがに向こうもここで戦闘を始めるつもりはないだろうから、目的は俺たちとの接触か?
俺たちが警戒をしていると、目の前にひとりの男が現れた。
「アルヴィンさんとそのお仲間ですね?」
チョビ髭を生やした中年の男性が尋ねてくる。
「……そうだけど」
警戒の色を出しつつ、男の質問に答える。
すると、それが合図であったかのように、これまで距離を取っていた周囲の男たちも近寄って来た。
物々しい空気が漂う中、最初に話しかけてきた男はふっと笑って続ける。
「支配人があなた方にお会いしたいと申しています」
「支配人?」
俺たちは顔を見合わせた。
当然、こんな大きなカジノの支配人なんて知り合いはいない。
もしかしたら……俺がかつて商売でかかわりを持った人物が経営者――で、そいつがすべての黒幕ってことなのか?
いずれにせよ、俺はその申し出を受けた。
男たちに連れられて、俺たちは支配人がいる部屋へと通される。
そこは高級宿屋のスイートルームも顔負けの広さで、いたるところに美術品が展示してある豪華な造りだった。
「いい趣味とは言えないわね」
「なんだか目がチカチカするよぉ」
「まったくだな」
なんというか……品性を疑うな。
高価な美術品はただそこに置いてあるだけって感じだ。単純に、自分の財力と権力を見せびらかしたいような、そんな薄っぺらさを感じる。これこそまさに宝の持ち腐れってヤツだ。
「一体どこのどいつなのよ……私たちに会いたいって」
「……恐らく、俺かレクシーの古い知り合いだよ」
「どうしてそう言えるの?」
「俺たちとこのカジノの接点はフィーユだ。――しかし、フィーユと出会ってから、周りに俺たちのことを監視している者がいた気配は一度も感じなかった。それなのに、このカジノに足を踏み入れてから数分の間に、俺たちはカジノ側にマークされた」
「……つまり?」
「カジノの支配人とやらは、俺たちがフィーユと接触していたから会いたいと言ったんじゃない。その前から俺たちのことを知っていたから、声をかけたんだ」
「な、なるほど……」
だとすれば、かなり候補は絞れそうだが……ダメだ。どうにもピンとくる人物が思い当たらない。
「でもでも、それって一体誰なの?」
「問題はそこなのよねぇ……正直、私は見当もつかないわ」
「……恐らく、俺が昔仕事をした人だと思うんだけど――」
「着きましたよ」
コソコソと話し合っているうちに、目的地へと到着。
そこでは、これまた趣味の悪い金色に輝く扉が待ち構えていた。
「この先でオーナーがお待ちです」
案内役をしていたチョビ髭の男が、その扉を開ける。
その先は円形に広がる天井の高い空間。
まるで闘技場を彷彿とさせる場所だった。
「……来たか」
部屋の中央には何者かが俯いて立っており、俺たちが足を踏み入れるとそう呟いた。
今の声は……まさか!
「こんなに早く再会できるとは……思ってもみなかった」
顔を上げた男の顔を見た瞬間、俺は思わず叫んだ。
「お、おまえは――」
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