第168話 二手に分かれて
年内の投稿はこれが最後となります。
年末年始は書籍作業に邁進するため、次回投稿は1月5日と少し間があいてしまいます。申し訳ありません。<(_ _)>
それでは、良いお年を!
魔剣復活のため、俺たちは二手に分かれて行動することにした。
まず、ローグスク王国へ向かうのはシェルニ、フラヴィア、レクシーの三人。
そして、ここへ残り、一角狼の討伐へ向かうのが俺とケーニルとザラの三人だ。
「では、行ってまいりますね、アルヴィンさん」
「行ってきます!」
「お土産を期待していてよ♪」
「ああ。道中気をつけてな」
そう言って送り出した――が、フラヴィアとレクシーがいるなら問題ないだろう。シェルニも防御魔法は使えるわけだし。襲ってくるようなヤツらがいたら、そっちの心配をしなくちゃいけないレベルだ。
……いや、心配なのはむしろこちら側かもしれないな。
「私たちも行こう、アルヴィン!」
「頑張りますよ!」
ケーニルとザラ。
ハッキリ言って……未知数のコンビだ。
おまけに俺は魔剣でなく通常装備ときている。
ここが最大のウィークポイントだ。
今の俺は魔剣が使えない。
ハッキリ言って、ケーニルとザラよりも遥かに劣っている。
俺にできるのは、うまいことふたりをリードすること。
ここに力を注ぎ込むしかないな。
「まず、一角狼を倒したら、俺がすぐに角を切り取りに走る――だけど、一角狼の怖いところは群れで行動している点だ。仮に一匹を倒しても、角を回収する前に仲間が集まってくる」
「じゃあ、集まって来たヤツらも全員倒しちゃえばいいね」
「精霊さんたちの力とケーニルさんがいればへっちゃらです!」
ふたりは戦う気満々。
特にケーニルについては、砂漠の砦で一度戦った経験がある。
あの時のケーニルは戦いを楽しんでいる感じだった。自分に与えられた使命とか関係なく、ただ自分が楽しむためにケーニルは戦っていた。
恐らく、砂塵のデザンタもそれは織り込み済みだったのだろう。
それを知ったうえでも配下としてこの人間界に連れて来たということは、ケーニルが魔王軍の中でも有望株だった証し。それに、鉄塊のアイアレンもそんな感じのことを言っていたしな。
「期待しているぞ、ふたりとも」
「任せて!」
「はい!」
モチベーションは十分。
ザラについては恐怖感もあるかと思ったが、もう大丈夫そうだな。
「アルヴィン」
俺たちが出発しようとした直前、メアリーさんに呼び止められた。
「気をつけていってきな」
「っ! は、はい!」
……なんだか、懐かしいな。
両親の顔さえまともに覚えていない俺にとって、師匠とメアリーさんは親も同然だ。以前、師匠が酒に酔った際、「俺もメアリーも、おまえを息子だと思っているよ」なんて言っていたが……不意にそんなことを思い出してしまった。
「大丈夫ですよ、メアリーさん。私たちがアルヴィンさんを守りますから」
「ふふふ、いつもはアルヴィンに守ってもらってばかりたもんね。今日くらいは私たちが守ってあげる♪」
右腕をケーニルに、左腕にザラが抱きついてメアリーさんにそう宣言する。
嬉しいし、頼もしいのだが……男としてはちょっと複雑な気持ちだった。
◇◇◇
メアリーさんの工房周辺には、手製の結界によってモンスターが近寄れないようになっている。
だから安全に過ごすことができたのだが……工房から少し離れた場所はまるで景色が違っていた。
「な、なんだか不気味なところですね……」
さっきまで強気だったザラだが、さすがに恐怖感が出てきたようだ。
「ちょっと魔界に雰囲気が似ているね。私には快適な場所かも♪」
ザラとは対照的に、ケーニルは上機嫌だった。
確かに、この辺の空気は魔界だと言われても納得してしまうくらい不気味だ。
……まあ、魔界になんて行ったことはないんだけど。
「どこからモンスターが出てきてもぶちのめしてやるから!」
血気盛んなケーニル。
その活気につられたのか、
「グルルル……」
早速、物騒な出迎えがあったようだ。
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