第148話 事情説明

「申し遅れました。私がこのレオルの町長でスミスといいます」


 レオル町長のスミスさんの自宅で、俺たちはクエストについて詳しい話を聞いた。


「領主様があなた方に依頼したのは地質調査です」

「その点はダビンクのギルドでも聞きましたが……本当に地質調査なのですか?」


 俺は率直な疑問をスミス町長へぶつける。

 これは俺だけでなく、他の四人も不思議に思っていることだ。

 俺たちがここまでこなしてきたクエストの九割は討伐と採集に分類できる。専門的な知識を伴う地質調査は、ハッキリ言って専門外と言わざるを得なかった。

 それについてはきっとレイネス家も把握しているはず。

 それに関わらず俺たちを指名してきたということは――


「何か、別の思惑を感じてしまうんですよ」

「…………」


 スミスさんは沈黙。

 恐らく、こういった質問を投げかけることは想定していたのだろうが、どう答えたものか悩んでいる様子だった。

 しばらくして、


「やはり……分かってしまうものですか」


 ため息を交えながら、スミスさんはそう漏らした。


「それではやはり、レイネス家がわたくしたちに依頼したのは単なる地質調査とは異なるものですのね」


 フラヴィアからの追及に対して、観念したスミス町長はゆっくりと真実を語り始める。


「お話をする前に一点だけ。領主様は、『本来ならば、依頼した自分本人が説明すべきなのだが』と仰っておりました」

「? その領主様は不在なのですか?」

「現場に出ておりまして……」

「領主自らが現場に? その行動力は買いますが、少々危険なのでは?」

「…………」


 すっかりダンジョン攻略にも慣れた御三家令嬢に言われても説得力はないが……まあ、言っている内容については同意する。


 だが、裏を返せばそれだけ逼迫した状況であるとも言えた。


「その現場では何があったんですか?」

「……ご存知かもしれませんが、このレイネス領地は古くから鉱山業で栄えてきた場所でして……」

「その鉱山で異常事態が発生したのね?」


 レクシーの言葉に、スミス町長は頷く。

 鉱山での異常事態。

 ようはその原因調査の手伝いを依頼されたということらしいが……俺はひとつの懸念を抱いていた。


 その異常事態を引き起こしたのは――魔族六将ではなかろうか。

 もしかしたら、レイネス家当主はそれも踏まえた上で俺に依頼を寄越したのかもしれないな。


「では、俺たちは現場にいるレイネス家領主様のもとへ向かえばいいのですね?」

「はい。今日は遅いので、宿屋をご利用ください。もちろん、店主にはすでに伝えてありますのでお代は結構です」

「分かりました」


 この後の段取りが決まった直後、部屋のドアをノックしてからある人物が入って来た。それは、


「お迎えにあがりました、アルヴィンさん」

「! クリートさん!」

「お久しぶりですね。ご壮健で何よりです」


 現れた男性の名前はクリートさん。

 レイネス家の御令嬢であるザラの護衛団長を務めている人だ。


「まさかあなたまで出張ってくるとは」

「お恥ずかしながら、人手不足でしてな。本来はザラ様のそばを離れるわけにはいかないのですが……事情が事情ですからね」


 こうなると、レイネス家は総力戦って感じがしてきたな。

 ……魔族六将絡みっていうのも、あながち見当違いってわけじゃなさそうだ。


 俺たちはクリートさんに宿屋まで案内してもらうと、そこでゆっくりと体を休めることにした。


 いよいよ、明日から本格的にクエスト開始だ。

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