第68話 砂漠での戦闘
魔族がいる砂漠の砦に向かう俺たちは、砂丘の上から様子をうかがうことにした。
「あれか……」
砂丘を越えてすぐという話だったが……結構距離があるな。
いや、それよりも、
「あれは……」
俺だけでなく、その場にいたメンバーは全員気づいたようだ。
……というか、気づかない方が無理って話だよな。
「あれって、騎士団? どうしてあんなところに?」
レクシーが素朴な疑問をぶつけてくる。
そう。
騎士団が展開しているあの場所……位置取りとしては最悪だ。
一体何を考えて、あんな敵から見やすい位置に展開しているのだろうか。
「もしかして、誘っているのか……?」
「わざわざ敵を? でもどうして?」
再び降ってくるレクシーの素朴な疑問。
「考えられるパターンとしては、あの騎士団が何か強力な武器を有していて――」
「そうは思えませんわね」
俺の推察を一刀両断したのはフラヴィアだ。
「今の騎士団に、そのような隠し武器があるとは思えませんわ」
「となると……」
「考えなしに陣取っているだけですわ」
バッサリと斬り捨てたフラヴィア。しかしその表情はバカにしているというよりはどこか憂いが感じられる。何か、思うところがあるのか。
「ともかく、あそこにいる騎士たちへ忠告に行こう。あのままじゃ、魔族たちにとっていい的だ」
俺たちは騎士団のもとへ急いだ。
――が、それよりも先に魔族たちの方が動きだしてしまった。
「!? まずいぞ!」
大勢の騎士団が待機している前方。不自然に盛り上がった砂地がある。それは静かに移動をはじめ、真っ直ぐ騎士団へと迫る――明らかに、モンスターだ。
だが、当の騎士団はまったく気づく素振りが見えないし、わざと誘い込んでいるようにも思えない。
――単純に、周囲への注意力が疎かになっているため、見逃しているようだ。
この距離じゃ、叫んだところで騎士たちへは届かない。
「まったく……世話が焼けますわ!」
フラヴィアが杖を構えた。
「《焔斬》――フレイム・カッター!」
魔力によって生み出された炎が三日月の形に変化して、モンスターへと放たれる。フラヴィアの狙いは正確で、見事に地中を移動するモンスターに直撃。轟音と砂煙が巻き起こったことで、ようやく騎士たちは自分たちの身に近づいていた脅威に気づいた。
それは――地中を移動する巨大なサメだった。
体長はゆうに五メートル超える大物で、砂漠の中を海のように移動する。
それに対し、騎士たちはただただ逃げ惑うばかりで戦おうとしない。
「なんだ? 本当に訓練を受けた騎士なのか?」
いくらなんでもここまでなんて……ただ武装した一般人としか思えない。
「まさか……」
言い知れぬ不安が脳裏をよぎった。
先ほどからチラつく素人同然の動き……もしかしたら、この人たちは――
そんなことを考えているうちに、敵は次の動きを見せる。
巨大な黒い背びれが砂の中から出現し、凄いスピードで騎士団へと迫っていた。
すると、
「させるか!」
ひとりの中年男性が剣を抜き、向かってくる地中鮫と対峙する。
度胸はいいが、足元はガクガクと震えており、その表情は必死に恐怖を噛み殺しているように映る。
「こんなところで死んでたまるかぁ!」
そう叫ぶと、めちゃくちゃに剣を振り回し始めた。むろん、そのような動きでは威嚇にすらならず、地中鮫は砂の中から姿を現し、男性へと襲いかかる。
――当然、俺たちがその状況を黙って見過ごすはずがない。
「せぇい!!」
姿を現した地中鮫に、ドルーが強烈な蹴りを浴びせる。その衝撃に、地中鮫の体は「く」の字に曲がって口から体液をまき散らす。
そのまま地面に叩きつけられ、ジタバタとしばらくもがいていたが、ドルーの放ったトドメのパンチを鼻っ面に食らうと動かなくなった。
「見事だな、ドルー」
「いえいえ、なんのこれしき」
ドルーは謙遜しているが、たった二発であのサイズの地中鮫を倒すなんて、たぶんタイタスでも無理なんじゃないか?
ともかく、これにて脅威は去った。
そういうわけで、俺たちは改めて騎士団との接触を試みることにしたのだった。
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