第58話 まさかの再会
ザラ・レイネスが送り込んだ水の精霊アクアムを加えた新生パーティーで挑む新しいダンジョンの奥地。
何が出てくるかまったくの未知数だが、このメンツなら大抵の敵は退けられるだろう。あとはちゃんと帰ってこられるかって点だけだな。
「さて、ここから先は正真正銘、未知なる空間だ」
「楽しみですわね」
「頑張りましょう!」
「腕が鳴るのぅ」
三人はどこか楽しみにしているような感じで、ダンジョンの先を見つめていた。顔には笑みさえ浮かんでいるが、決して緩んでいるわけじゃない。むしろ、理想的な精神状態といえる。
アクアムの加入も大きいが、みんなが心身ともに充実しているという点も大きい。これはいい結果が望めそうだ。
パーティーのコンディションに手応えを感じつつ、俺が先頭に立って先へと進んだ。
何かしらの条件によって、進める先が異なるというなら、それを検証する作業が当然必要になる。
それを少しでも消化しておけば、このダンジョンが一般の冒険者に開放される日がグッと近づく。ダンジョンの数が増えれば、それだけ冒険者の数も増えるわけで、ひいてはうちの売り上げもアップという寸法だ。
まあ、そういった商売根性を抜きにしても、個人的な好奇心で先を見てみたいという気持ちもないわけじゃない。ただ、ザラやフラヴィアに好奇心での探索は危険だと説いた後なので、ちょっと微妙な気持ちになるけど。
気を取り直して、周囲への警戒を強める。すると、視線の先にわずかだが光が見えてきた。
「お? どうやらあそこが出口らしい」
「まさか……このままダンジョンの外へ出てしまうなんてことは……」
「あり得ない――とは言い切れないな」
「えぇ~? それだとつまらないですよ~」
初参加のアクアムは盛り上がりに欠けるということで不満があるようだが、それならそれで問題ないから俺としてはひと安心だ。
ただ、火責めや水責めといった、物理的にダメージを負うトラップが面倒なのはもちろんだが、こういった、ルートを間違えたら外へ出されるという考察系トラップもややこしい。
さまざまな可能性を考慮しつつ、光の先へ出ると――そこはまだダンジョンの中らしかった。
「正解……なのでしょうか?」
「まだまだ油断はできぬぞ、シェルニ殿」
ドルーが注意を促し、シェルニも頷いて戦闘態勢を取る。そこは先ほどの幻想的な場所とは違い、いかにもダンジョンって感じのする空間であった。周りを岩壁に囲まれ、狭苦しい印象を受ける。
「ここが正解ルートであるかどうか……周囲を探索していこう」
「それしかなさそうですわね」
現状では特に目立って変わった様子は見受けられない。このままではなんの進展もないし、ダンジョンの外にも出られないので、もう少し奥まで進んでみることにした。
特に分かれ道などなく、進む先は一本道。
モンスターが出るわけでも宝箱が出るわけでもない。
ただただ道が続いているだけだ。
「こりゃあ……外れのルートだったかな」
「それっぽいですなぁ」
「残念ですわねぇ」
「でしたらまた挑戦しましょう!」
それぞれがそれぞれの反応をしながら、一本道を進んでいく。――と、
「うん? また光が……」
「今度こそ出口ですかね?」
ここまでは先ほどと同じ展開だが、今回も同じような展開になるとは限らない。今度こそ、何かしらのトラップが仕掛けられている可能性もある。
「油断せずにいくぞ」
一応注意を促すが、俺が言うまでもなくみんな気を引き締めていた。
何が待っているのか――期待と不安が入り混じる中、光の先へとたどり着く。
そこにはひとりの男がいた。
……俺のよく知る男だ。
「っ! タイタス!?」
「アルヴィン、か……?」
救世主パーティーの聖拳士――タイタスだった。
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