第25話 ダンジョンでの新しい出会い

 奴隷商の館から戻った次の日。

 俺とシェルニはまずギルドを訪問した。


「アルヴィン! 聞いたにゃ!」


 真っ先にリサが抱き着いてきた。


「あのむかつく連中を蹴散らして町に平和をもたらした英雄にゃ♪」

「わ、分かったから離れてくれ」


 興奮するリサを引きはがして、俺は新しい家やシェルニとのことを話す。今やすっかり仲の良い友人となったリサとシェルニ。お互いが今後も良好な関係を築けるよう、たまにはうちに遊びに来いと伝えた。


 その後、ギルドと併設する武器屋やアイテム屋で準備を整える。と言っても、武器に関しては俺もシェルニも使い慣れた物があるので、購入したのはほぼ使用するアイテムだけにとどまった。




道中、パン屋でサンドウィッチを買い、軽く朝食を済ませると、俺たちはいよいよ二度目のダンジョン攻略へと挑む。


「アルヴィンさん、今です!」

「おう!」


 シェルニの防御魔法と俺の魔剣――両者の相性は抜群で、サクサクと進んでいく。そのうちに、


「あれ?」

「どうかしたんですか、アルヴィン様」

「……ここがダンジョンの最奥部のようだ」


 ダンジョンに潜ってからおよそ二時間で、最奥部である五階層へ到達。

 キースさんからもらった片眼鏡を駆使してアイテムを回収していったが、気がつくとこんなところまで来ていたのだ。


「この宝箱にあるのが最後か」


 早速開けてみると、中には短剣が入っていた。

 ゲットしたアイテムに関しては、アイテム屋で購入した《カタログ》で相場をチェックした後、《本》にしまっていく。


「シェルニ、こいつも回収してくれ」

「はい!」


 シェルニは返事をすると、リュックから一冊の本を取りだす。

 この本――正しくは《ストレージ・ブック》というアイテムで、一ページにひとつ、アイテムを収納することができる優れものだ。

 使い方は簡単。


「よいしょっと」


 短剣を掴んだシェルニは、本のページの上にそれを置いた。すると、まるで底なし沼に沈んでいくかのように、短剣はページの中に呑み込まれていく。やがて、純白のページにはしまった短剣の絵が自動的に浮かび上がる。


 これなら、ページがある限り、アイテムの持ち運びに不便することはない。


「しかし、これで終わりなら、次のダンジョンを探さなくちゃいけないな」

「でも、売り物になりそうなアイテムは結構集まりましたよ?」

「こういうのは早めの新規開拓が重要なんだ。やれる時にしっかりと次の目的を定めておかないと」

「なるほど!」


 商売は先手を打つのが必勝条件。

 後手に回ってしまっては売り上げに影響が出る。商売の足止めを阻止するためにも、商品は常にストックしておくべきだ。


 ダビンク周辺にはまだまだダンジョンがある。

 今、俺たちがいるところは難易度的にもっとも簡単なところ。より強力なモンスターが潜んでいるダンジョンには、それだけ価値のあるアイテムが眠っている。ここまで、難なく突破できたことを考えると、ダンジョンの難易度を上げても問題はなさそうだ。


「よし、明日からは南側にあるダンジョンへ行こう」

「南側って……確か、地底湖があるダンジョンですよね?」

「その通り。よく知っているな」

「リサが教えてくれました♪」


 いつの間にか呼び捨てする仲に発展していたのか……本当に仲が良くて何よりだよ。


「さて、それじゃあ、今日は早めに戻って部屋の掃除でもしようか」

「はい♪」


 俺とシェルニはダンジョン探索を切り上げ、店の開店準備に時間を使おうとした――その時、


「む?」


 前方に何やら影が見える。

 地に伏せるような格好をしたその影――近づくと、人が倒れていた。


「お、おい! 大丈夫か!」


 俺たちは慌てて駆け寄る。

 倒れていたのは、長く赤い髪をツインテールでまとめ、褐色の肌を持つ少女だった。


「しっかりしろ!」


 抱き起した瞬間――俺は息を呑んだ。

 その子が可愛いと感じたっていうのもあるが、一番驚いたのはその特徴的な耳だ。どうやらシェルニもそれに気づいたらしい。


「ア、アルヴィンさん……この子って」

「ああ、間違いない――エルフだ」


 倒れていたのはエルフ――その中でも、いわゆるワイルドエルフと呼ばれる種族の少女だった。

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