ヒメヒ名は。

ひびき遊

ヒメヒ名は。



 SE:スマートフォンの目覚ましアラーム音。


田中「うーん……」


 SE:アラーム音停止。


田中「朝だー、朝……んー、まだ眠いや」


田中「遅くまで、また起きてたから……。でも『君の名は。』の無料配信、やっぱりよかったなあ」


田中「午前0時のプレミア公開と同時に、リアタイ視聴。そしてコメント爆撃――アニのオタのモノとしては外せないよね」


田中「『入れ替わってるう!』の、あの熱い弾幕。ふふ、今思い出しても……ふわあ」


田中「んー、もうちょっと寝たいけど……8時から『あつ森』のカブ価チェックがあるんだよねー」


田中「それと、Twitterの鈴木モーニングの更新準備もしとかなきゃだし。うーん、今日はどんなネタでいこうかなあ?」


田中「そろそろ平成仮面ライダーネタも……あれ? iPhoneの待ち受け、なんか変? ……画像のタテヨコが違くない?」


田中「あれえ、『総再生回数一億回突破』画像だけど……こっちのヤツだったかなあ?」


田中「待って。これ、アプリの配置もおかしいよね……?」


田中「あっ、これ――私のiPhoneじゃないよ。たぶん、ヒメのだ!」


田中「しまったあ。間違って持ってきたのかなー。おそろいで買ったヤツだしね」


田中「じゃあ私のiPhoneはヒメのとこかなあ。まあいいや、先にswitchで『あつ森』を……」


田中「え? ない、ない! 寝落ちするまで遊んでた、私の『あつ森』カラーのswitchが! どこ……?」


田中「――待って。なんか……おかしい感じが?」


田中「そういえばなんで天井にアニメのポスターが一枚もないの!? 嘘でしょ!」


田中「はっ! 壁に飾ってある、あの……『藍の華・発売記念複製原画』! サンプルでもらったのを、ヒメと一枚ずつわけっこしたヤツ……!」


田中「私のは、ヒメとヒナがくっついてる絵柄だったよね? なのにあれは、向き合ってる方で……!」


田中「ここ、ヒメの部屋だよ! 嘘! どうして?」


田中「――寝ぼけてうっかり、ヒメのお布団に入っちゃった? ずっと一緒に住んでるけど、今までそんな間違い、したことなかったのになあ……」


田中「でも……ヒメはどこ? ヒナがお布団とっちゃったから、私の部屋で寝たのかな? うーん」


 SE:ガチャッとドアを開けて、部屋を出る音。


田中「ヒメ~、こっちにいるの?」


 SE:ガチャッとドアを開けて、今度は部屋に入る音。


鈴木「……うーん、どしたの、ヒナあ? はおぉ~(まだ眠そうに)」


田中「はおー。あ、よかった。やっぱりこっちで寝てたんだ」


田中「ごめんね、ヒメ。私がお布団とっちゃったみたいで……あれ?」


鈴木「うー? なんのことぉお?」


田中「えっ」


田中「……ヒメ。いつから、頭にフカヒレ生やしたの? ぴょこぴょこしたヤツ!」


鈴木「んー、なぁに~?」


田中「お団子は? シニヨンは? ううん、寝るときはヒメ、いつも髪ほどいてるけど……でも!」


鈴木「もう、ヒナぁ。さっきからいったい、なに言って……はッ!」


鈴木「~~~~~~~~~~!(ヒメちゃん特有の、テンション上がっていくときのハッハッとした息づかい)」


鈴木「えっ、そこにいるのって――あたしぃ!? なんで……!」


田中「そうだよ、ヒメ! これは、どういう因果律の操作によるものかはわからないけど」


田中「いや……世界線の捻れ? それとも私たちこそが、いわゆる特異点という存在に――!」


鈴木「ッ!! そのよくわからないアニメ用語の言い回しィ! 間違いないね! これは!」


田中「私たち……!」


二人で「「入れ替わってるう――!!」」


 BGM:「前前前世」


田中「それはそうとさ、ヒメ。私のswitchある?」


鈴木「ええーーーー? この状態で、今それ? ヒナちゃん!」


田中「入れ替わったとしても、この鈴木ヒナの魂を、『あつ森』が呼んでいるんだ……!」


鈴木「間違いなく、ヒナだね……その中身」


田中「あっ、ヒメ。入れ替わってるなら、ついでに鈴木モーニングの更新お願いね」


鈴木「冷静な女ァ!!」


                                END

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