第百六十九話 突然すぎる告知な件


 明来、そして一部皇帝の選手たちは試合後、不破の搬送された病院を訪れていた。


 最初、明来の人間だけで病院へ行く予定だった。

 しかし神崎をはじめ、皇帝の選手何名かが顔を出させて欲しいとのことだったので、それを承知した形だ。


 個室に入ると、頭に包帯を巻いている不破がベッドに座っていた。



「不破……大丈夫?」


「千河、お前たち……と、神崎たちもいるのかよ。随分沢山で来たんだな」


 不破はその人数に驚いていた。


「不破」


 神崎が口を開いた。


「不破、本当に申し訳ない」


 神崎、若林、そしてデッドボールを与えた張本人である中谷が頭を下げた。


「頭を上げろよ。試合中の事故なんだから謝ることはないさ」


「不破さん……スミマセン……スミマセン……」


 中谷は明らかに動揺した様子で頭を下げ続けていた。


「わざとじゃ無いんだろ? 気にすんなよ……痛って」


不破は中谷の方へ歩み寄ろうとしたが、痛みを耐えるように左手で右肩をさすっていた。



「デッドボールを受けて倒れた際、倒れ方が悪かったみたいだ。リハビリ込みで復帰に一ヶ月はかかるってよ」


「そ、そうなんだ。一ヶ月なら、何とか大会に間に合うな」


 守はできる限り明るく振る舞った。こちらが暗くなってしまっては、今一番苦しんでいるであろう不破が余りにも可哀想だからである。



 ――ガラガラガラッ!!!


 突然、スライドドアが勢いよく開かれた。そして二十代半ばくらいの女性が勢いよく個室に入ってきた。

 その女性は綺麗な茶髪のセミロングの髪で、薄めの化粧が逆に彼女の素材の良さを引き出しているようだ。


「盾!! 怪我は大丈夫!? ちょっと貴方達、退いてちょうだい!!」


 その女性は守たち、人だかりをかき分け、無我夢中で不破の元へ向かった。



「おいおい、何だよオネーちゃん。先に入ったのは俺たちだぜ?」


 割って入ったのが気に入らなかったのか、東雲が不満そうに指摘した。

 女性はそんな彼のことはスルーし、不破の無事に安堵した様子だった。



「……東雲。この人は俺の母だ」


 不破は気まずそうに口を開いていた。



「は……はぁぁぁぁ!? この人がお前のお袋さん!? どーみても二十代そこそこのネーちゃんじゃねぇか!!」


「ふふ……嬉しいことを言ってくれるのね」


 その女性は振り向きながら自己紹介をした。


「初めまして、不破盾の母です。一応、今年で四十歳になるわ」


「嘘……だろ、いや今日はアレか、エイプリルフールだったか?」


 東雲はゲシュタルト崩壊をしているようだった。


「貴方達が野球部のメンバーね。ちょうど良かったわ」


 不破母は嬉しそうな顔をして、話し続けた。



「不破盾は、今日をもって野球部を退部するわ」

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