第百三十六話 実践的練習をこなす件

 合宿二日目。この日は予定通り全体練習がメインとなっている。


 今は内野のランダウンプレーを確認している。飛び出したランナーを挟んでアウトを取る練習だ。外野手がランナーを担当し、効率よく練習を行なっている。


 実は、高校野球はエラーや記録に残らないミスでの失点が多い。甲子園に出るような強豪校でもたまに信じられないようなミスプレーがでてしまうものだ。

 ただ、その頻度はチームが強ければ強いほど少なくなっていく。三割も打てば好打者と言われるくらい、バッティングという行為は難しい。

 

 だからこそ相手のミスを攻め込み、自身はミスをせず最小失点で切り抜けることが鉄則である。

 ランダウンプレーの練習は、まさに実戦でミスを減らすための確認練習だ。


 今は一塁ランナーが牽制にひっかかったケース。一、二塁間での挟殺プレーについて確認をしながら練習をしている。



「真斗。飛び出したランナーは前の塁に戻ってる時に追うんだ。逆に先の塁に向かって走っている時に追いすぎるのはダメだ。何故かわかるか?」


 氷室が青山に問いかけた。


「うーん……もしミスったら進塁されるから?」


「その通り。もし追いすぎてタッチが間に合わなかったり送球がズレた時に、一塁に戻ってる時でのミスなら現状維持で済むんだ」


 青山は、自身の回答が合っていたことに安心したのか、ホッとした表情をしていた。


「逆に二塁に向かってる時にミスったら、結果ランナーに進塁されたことになるでござる」


「ちなみに投げる時も気をつけろよ。ウザいランナーは受け手のボール軌道に、さり気なく体を入れにくるからな」


 山神と東雲も一緒に説明をしていた。



 その一方で外野勢は同じようにランナーでの心構えを話していた。



「自分が挟まれたら、まずは相手の立場になって考えろ。どんなプレーをされたら嫌なのかをイメージするんだ」


 チームナンバーワンの走者である兵藤が指導をしていた。


「今のケースだと、一番嫌なのは二塁へ進塁されること。次に嫌なのはアウトに取れないで一塁にとどまれることだな」


「送球をしにくいように走るとか、、守備力が低い選手の時に長くボールを持たせることが大切っすね」


 兵藤の説明に合わせて駄覇も付け加えていた。風見と松本はそれを頷きながら聞いていた。



 こうして全体練習は実践を想定した練習を重ねていったのである。



 ――そして練習後、終礼が行われた。


 普段通り上杉監督が今日の総括を話している中、それは突然発表された。



「合宿最終日は練習試合をします。相手は皇帝学院の二軍です。今度こそ勝ってくださいね〜」



 突然の発表に、一同はただただ固まっているだけであった。

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