「ストライク！　バッターアウト！！」

　現在、明来の攻撃中だが八、九番が連続三振でねじ伏せられていた。

「ストレートと変化球、フォームが全く一緒で見分けがつかないよ……」

　お手上げと言わんばかりの風見のアドバイスを聞いた兵藤が左打席に入った。

　一方の轟大学の守備陣は今日好調なバッターという事もあり、緊張が走っているようだ。

　マウンド上の駄覇はプレートを外し、サードの方へ視線を向けた。

「サードもう少し前っす。その位置でセーフティされてアウト取れるんすか？」

「あとショート、その深い位置だとボテゴロがヒットになるんすけど」

　――ブチッ！！！

　年下、それも高校新一年生の駄覇にタメ口で指示をされた三遊間の二人は内心ブチギレていた。

　しかし彼らは一瞬で我に帰った。突き刺さる視線を感じ、ベンチを見たからだ。若井監督が怖い。炎常の件もあるし、舐めたプレーは許されない雰囲気だった。

　確かに、バッターの兵藤は今日二安打を放っている。足が速く、一歩目の遅れが命取りになる。駄覇はスピードという彼最大の武器を警戒しているようだった。

「プレイ！！」

　主審のコールと同時に駄覇が投球モーションに入った。ランナーがいなくてもセットポジションの状態で投げるようだ。

「ストライク！！」

　兵藤が思わず仰反ったボールだが、主審の手が上がった。兵藤は一度打席を外し、数回素振りをしてから元の場所へ戻った。

　――ギンッ！

「ファウル！」

　二球目は打って出るも、一塁線に力ない打球が転がっていた。明らかに窮屈そうにバットを出しているのは誰の目にも明らかだった。

　駄覇はボールを受け取り、すぐに投球モーションに入った。小さい身体を目一杯使った力強いフォームで三球目が投じられた。

　――ブンッ！

「ストライク！　バッターアウト！　スリーアウトチェンジ！！」

　兵藤のバットは空を切った。三球三振に倒れてしまった。

「ッしゃあ！！」

　駄覇は吠えながらマウンドを降りていった。

　兵藤はそんな駄覇を見つめながらベンチに戻っていた。

　五回表　開始前

　轟大学　三対一　明来

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