第4話 結
夜も更け、そろそろお開きと言うことで2人は店を出た。
「いやあ、すまんな。あんなに奢ってもらって。」
「なに、気にするな。どうせ泡銭、パーっと使った方がいい金だ。」
「ありがとう。じゃあ、またな。」
「ああ。」
2人は挨拶もそこそこに、それぞれ帰路についた。
道中、男は肝試しの事など忘れていい気分で歩いていると、ある場所に差し掛かった。
「ん、ここは。」
例の廃墟の近くである。
天気も悪く、小雨が降っている事も手伝い、いつにも増して不気味な雰囲気が漂っている。
「やだなぁ。せっかく飲んで忘れたと言うのに。」
気にしない気にしない。そう言い聞かせ足早に去ろうとした所。
「おなみだちょうだい。」
今度ははっきりと、男の後ろから声が聞こえた。
男は振り返るが誰もいない。そもそも気配すら……。
いや、何か嫌な気配がする。
それによくみると、なんだ。黒い影のような物が見えるではないか。
どうも酔っ払ったようだ。全く、奢りだと言う事で飲み過ぎたな。いかんいかん。
男が歩きだすと、少し先の街頭の灯りが目に入った。
妙だな。灯の下に誰かいるような……。
どうやら子どものようだ。こんな時間に子どもがいるのか。
怪談を思い出し、気が進まないが道はひとつしか無く、迂回するには元来た道を戻り、だいぶ歩かなければならない。
男はうつむき気味で素早く通り抜けようとしたが、子どもの横を通った瞬間……。
「おなみだちょうだい。」
そうはっきりと聞こえ、思わず振り向く。
次の瞬間、男の目の前は真っ暗になった。
——————
———翌日、男は遺体で発見される事となる。
おなみだちょうだい いざよい ふたばりー @izayoi_futabariy
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