第2話 承
居酒屋。
そろそろ時間的にも賑わい始め、奥の座席からは宴会か何かだろう、乾杯の音頭や既に出来上がったような賑やかな声がしている。
友人との待ち合わせは時間まであと15分程だろうか。
外で待つのもなんだし、予約も取ってあったので店内で待つことにし、案内された席に着きタバコをふかす。
周りの音を聞きながら、ゆっくりと立ち昇る煙をながめ昼間のニュースを思い出していた。
「しかし、両眼をくり抜くとは、またなんとも小説じみた事件だよな。愉快犯、では無いとは思うが被害者に共通点が無いとなると通り魔的なものか。となると、俺も被害に合うかもわからんな。用心した方がいいのかな。」
しかし、ニュースによると犯人の目星もついておらず、人相や背格好等の情報も何もないらしい。
ま、そんなのは警察に任せて、一般人である俺はたまに耳にする、報道された情報を追うだけだ。
有力な情報が出ればテレビで流れるだろう。
対策を考えるのは、それからでも遅すぎると言うことはないだろう。
そんなことをぼんやりと考えていると、後ろから声をかけられた。
「よう、待たせたな。なんだ、まだ何も注文して無いのか。先にやってりゃ良かったのに。」
「おう、やっときたな。と言ってもほぼ時間通りだが。なに、奢ってもらうのにお金を出してくれる奴より先に飲んでるわけにもいかないだろう。しかし待ちわびた。始めようや。」
友人は席に着き、適当に見繕って注文した。
友人もタバコに火をつけ、煙を吐きながら、
「そういえば、お前知ってるか。目玉をくり抜かれる事件。」
「ああ、ニュースで見た。ひどい事件だよな。犯人の手口も人相も、被害者の共通点も何もわからないときた。防ぎようがないよな。」
男がそう言うと、友人は顔をしかめながら答える。
「しかし何か引っかからないか。」
運ばれて来たお酒を口に流し込みつつ、男は聞き返す。
「何かってなんだ。」
「ほら、どうも聞いた事あるような気がするんだ。たぶんお前も聞いてたような気がするんだが。」
2人は考え込み、やがて友人が口を開いた。
「あ、そうだそうだ。思い出した。不謹慎と言われるかも知れないがあの話に似てないか。ほら、前に俺たちで肝試しに行った時の……。」
「ああ、あの時の。そんな話もあったなあ。」
相槌を打ちながら、男は去年の夏、肝試しに行った時のことを思い出していた。
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