おなみだちょうだい
いざよい ふたばりー
第1話 起
空の機嫌が悪い。
今日は休日。
特にする事もなく、アパートの自室でダラダラとテレビを眺めていることにも飽き、外を眺めていた彼は今にも泣き出しそうな空を見上げそう思った。
「こういう日は良くない事が起こるもんだ……。」
タバコに火をつけ、煙を深く吸い込む。
気分がくさくさした時はこれが一番……
等と思っていると、部屋でつけているテレビからの、ニュースが耳に入った。
「事件です。本日未明、河川敷で両目をくり抜かれた死体が発見されました。医師の調べによりますと、殺害されたのは深夜0時頃で、通報があった時は既に息はなかったであろう、との事です。前回、前々回に続き、同様の手口で殺害された被害者は3人目。警察は同一犯と見て捜査を進めています。尚、被害者に共通点は無く……。」
全く、物騒な世の中になったもんだ。しかし目ん玉をくり抜くなんて酷いことをするもんだ、そう思いつつ、自分には関係ないだろうと考えながらタバコをふかしていた。
「お、雨か。やれやれ、洗濯物が乾きゃしない。」
洗濯物を取り込んでいると、電話のベルが鳴った。
「はいもしもし。なんだお前か。どうした、こんな雨の日に。」
電話の相手は古い友人だった。
「何だとはご挨拶だな。お前今日休みだったろ。どうせ家でごろごろしてるのなら飲みに行かないか。」
「あー、それはいい考えだがいかんせん、お金がね。」
「心配するな。たった今俺はギャンブルで大勝ちしたんだ。奢ってやるぞ。」
奢りと聞いて、男は目を輝かせる。
「そうかそうか、そう言う金は世のため人のために使うのが人情ってもんだ。ありがたくご馳走になるよ。」
少しの間世間話をし、それではあとで、と電話を切った頃にはニュースは終わっており、流行りのドラマが流れている。
「最近流行りのお涙ちょうだいか。俺苦手なんだよなこう言うの。しらけちゃって。とりあえず感動させればいいってのが透けて見えるんだよなぁ。」
悪態をついていると、どこからともなく
「おなみだちょうだい……。」
そう聞こえた気がした。
「なんだ、テレビからかな。いやにはっきり聞こえたが。」
あたりをみまわすが当然誰もいなく、外に人の姿もない。音が出ている物といえばテレビくらいか。
「気持ち悪いなぁ。まいいや、今日はあいつの奢りだ。待たせたら悪いしそろそろ支度でもするか。」
晩飯代が浮いたな。こりゃいいやと、男はのんびり出かける支度を始めた。
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