エピローグ

 あたしはあたしが嫌いだった。


 いや、正確には、あたしは私が嫌いだった。


 素直で、純情で、夢見がちで、それでいて寂しがり屋で気丈な私が。


 だけど、今は違う。


 今はあたし自身私のことがそんなに嫌いじゃない。


 素直で、純情で、夢見がちで、それでいて寂しがり屋で気丈な私。


 今日このときから、あたしはそんな私をもう一度好きになるんだ。なったんだ。


 自分でも突然だと思うし、何を今更と呆れてしまう部分もある。けれど、あたしが私を嫌う理由がなくなった今、何であたし自身が私を嫌うことがあろうか。


 今日、あの人は私を受け入れてくれた。ううん、私だけじゃない。あたしのことも、受け入れてくれた。


 あの人は、あたしも私も両方ともを受け入れてくれた。これ以上に、あたしにとって嬉しいものはなかった。


 その瞬間は、ホントのホントに涙を流したものだ。


 だから、あたしが私を嫌う理由はもうない。


 あたしは私を誇りに思い、私もあたしを誇りに思うのだから。


 あたしはあたしが好きだ。そして、あたしは私が好きだ。


 意地っ張りで、ひねくれてて、どこか現実的で、それでいて強がりで弱虫なあたし。


 素直で、純情で、夢見がちで、それでいて寂しがり屋で気丈な私。


 どちらもあたしでどちらも私。


 どちらも誇れる確かな自分だ。


 けれど、これだけは言いたい。


 あたしが私を私があたしを好きなのは違いない。だけどもし、あの人が私もあたしも好きになってくれなかったらーー


 ーーあたしは私を、私はあたしを、好きになれただろうか。


 その答えは、きっと決まりきっているのだ。

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