第14話 穏やかな夜

襖を閉めて、フゥと一息ついた。

 部屋に備え付けの時計を見てもまだ9時前だというのに、異様に眠たい。瞼が重い。

 きっと不思議で不可解でけれども不愉快ではなかった今日の半日間。その怒涛のような出会いの数々に疲れたのだろう。

 そう思って、僕はおもむろに布団に入った。

 自分のベッドとは違うけれど、どこか落ち着く香りに、そっと包み込まれるような温かさ。その全てに身を任せても良いのだという安心感が感じられた。

 やはり疲れが溜まっていたらしく、そのうちにどっと疲れが押し寄せてきて身体が重くなった。

 よって頭も腕も、脚さえも動かすことなく、僕はただじっと天井を見つめた。見つめるしかなかったと言うべきだろうか。

 まあそんなことはどちらでも良く、目に入るのはただ単調に続いていく木目ばかり。時々節のような黒い部分があり、それを見つける度に僕は目線を動かすのを止めその場で思い出すのだ。

 あの日あのときあの場所で見せた、美夜のあの笑顔を。失いたくないと、失ってしまってはいけないと思った、あの笑顔を。

 ふと天井を向いたまま目を閉じる。瞼越しに透けて光る電灯の光をその目で感じながら、僕は誓った。

 美夜のあの笑顔を、取り戻す。現実世界でまたあの笑顔の美夜と再会する。例え、明日明後日明明後日と、この世界での日々が続いていくとしても。

 次第に電灯の光が薄くなり、意識も遠くなっていく。

 だいぶ眠気が回ってきたようで、こればっかりは避けられそうになかった。身体が睡眠を欲していた。

 そのまま光が段々と失われていき、ずんと沈み込むような深い感覚の中で、いつしか僕は眠りについていた。

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