第三章 地獄の扉が開く時
ここは、とある金融業者の事務所。そう庄司達が昼間に訪れた場所である。
悪どい手段で手に入れた金の入った金庫の前で、田辺は、葉巻をくわえて高笑いをする。
「しかし、あの鈴木の、じじい。よく1千万も用意出来たなぁ?この分だと、まだまだ、絞り取れそうだな。」
そう独り言を呟いた田辺は、パッと部屋の明かりが消え、眉を寄せ辺りを見回した。
「おいっ!どうした?!誰か、居ねぇーのか?」
ウロウロとする田辺の耳に、コツコツと静かな靴音が響いてくる。
「悪い子は~おらんかね~?
地獄へ~行かんかね~?」
不気味な低い声が響き、田辺は眉を寄せる。
「誰だ!!」
叫んだ田辺は、背後に人の気配を感じ、振り向こうとした。その首に、サッと素早く、腕を回したのは、駆であった。身体に、ピッタリの黒い皮のスーツを着た駆は、クククと、田辺の耳元で低く笑った。
「おっと。動かないでね。ポキッと、いっちゃうよ?」
「誰だ!?てめぇ。」
低く唸り田辺は、言う。駆は、田辺の首に回した腕に、ギリッと力をくわえた。
「地獄からの使者……と、でも言っておこうか。」
「な………何だと?!」
苦し気に眉を寄せ、唸る田辺に、駆は言う。
「いったい、どんだけの悪さをしてきたんだ?
あの1千万、返して、もらおうか?あれは、俺が鈴木さんに貸した金だ。お前に、やった覚えはない。」
「わ、分かった!金は返すから、殺さないでくれよ!」
田辺の言葉に、グッと、更に腕の力を入れ、駆は、静かに言った。
「二度と、鈴木さん親子に関わらないと誓うか?」
「ち、誓う!」
駆は、腕の力を緩めた。その隙に田辺は、駆の身体を壁に力強く押しやり、側を離れた。
「このガキ!おいっ!誰か、いねぇーのか!」
叫ぶ田辺に、駆は、フッと笑う。
「無駄だ。みんな先に、地獄で待ってるぜ。」
「ぶっ殺してやるっ!!」
拳銃を取り出し、こちらに構えようとした田辺を鋭い瞳で見つめると、駆は、片足で壁を蹴りやり、床を滑るようにして田辺の側に近付く。
駆の行動に、あたふたとする田辺は、目の前に、スッと立った駆の姿に、小さく悲鳴を上げ、拳銃を落とした。田辺の首に、右手を伸ばし、駆は、無表情で言う。
「チェックメイト。」
ゴキッと音を立て、田辺の首の骨が折れ、田辺の身体が床に崩れ落ちた。
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