第ニ章 悲しき依頼者

 翌日。駆から借りた現金を持って、庄司と奈未は、とある金融業者の事務所に来ていた。


待ち合い室で1時間ほど待たされ、奥の部屋から、この会社の社長、田辺 義一と社員らしい男が5人ほど入ってきた。名は、金融機関だが、闇の世界の者達である。


「いやぁ~、お待たせしました。」


田辺は、唇の端を上げ、ニヤリと笑うと、黒光りのしたソファーに、ドカッと腰を下ろす。


「まとまった、お金が出来たようで?」


じっとりとした目付きで見つめる田辺に、庄司は、大きなバッグから、1千万を取り出し、大理石のテーブルの上に重ねた。


「お借りしていた1千万です。確かに、お返ししましたよ。」


テーブルの上に置かれた1千万を見て、ニヤリと笑う田辺。


「1千万?フフ、とぼけちゃいけませんよ~。うちで貸したのは、2千万ですよ?」


「に、2千万!?借りたのは、1千万のはず……!」


「利子ですよ?お金を借りると利子がつく。知っていますよね?」


葉巻に火をつけ、フゥーと煙を吐く田辺に、庄司は、ガタンと席を立った。


「そんな!利子って………!」


「とにかく、あと、1千万、払って下さい。一つ、言いますが残りの借金にも利子は、つきますんで。この1千万は、利子として、頂いておきます。」


田辺が周りにいる男を見て、ニヤリと笑う。男も、ニヤリと笑い返す。


「そんな!それじゃ、いつまで経っても、返済が終わらないじゃないか!」


怒鳴る庄司に、田辺は、ギロリと見つめ、低い声で言う。


「それが借金というものです。じゃあ、残りの金、早く払って下さいね。でないと、利子が増えるばかりです。」


「そんな滅茶苦茶な話があるか!借金は返した!これ以上、金は払わん!」


怒鳴る庄司に田辺は、灰皿に葉巻を押しつけ、グッと潰した。


「話が分からん奴だな~、あんたは。おい、話がよく分かるように、奥の部屋に行ってもらえ!」


田辺の言葉に、数人の男達が庄司を取り囲み、無理矢理、奥へ連れて行く。


「お父さん!」


立ち上がり、庄司の元に駆け寄ろうとした奈未の前に、違う男が立ちはだかる。


「おっと。お嬢さんは、こちらで、お話が。」


「………!!」


震える瞳で、奈未は、男を見つめる。男は、いやらしい笑みを浮かべ、奈未を見下ろしていた。

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