第一章 復讐の幕は開かれた
店へ着くと、奥の部屋へと向かう二人。部屋の布団の上、庄司が眠っていた。
「お父さん。」
奈未の声に、うっすらと目を開けた庄司は、駆の姿に驚き、上体を起こす。それを止め、駆は、庄司を再び、布団に寝かす。
「駆…なんで、ここに?」
「おじさん。何も心配は、いりません。奈未さんと二人で、店の片付けをしますから、おじさんは寝てて下さい。」
駆の言葉に、庄司は、怒ったように、奈未を見た。
「奈未!お前、話したのか!」
「お父さん、ごめんなさい!」
庄司に怒鳴られ、ビクッとなった奈未の背を優しく撫で、駆は、庄司を見つめ、口元に笑みを浮かべた。
「おじさん。水臭いじゃないですか。俺達、家族でしょ?そう言ってくれたのは、おじさんじゃないですか。家族なら、何でも話して下さい。」
「……駆!」
庄司は、眉を寄せると、布団を頭から被る。
「勝手にしやがれ。」
駆は、奈未の方を見ると、クスッと笑う。奈未も呆れたように笑った。
「じゃあ、勝手にしますね。」
そう言うと、駆は、奈未と店の方へ向かった。
店は、椅子やテーブルが倒され、器やコップが割られていた。
割れた器やコップを袋に入れている駆に、奈未は、言った。
「駆くん、本当に、ありがとう。私……本当は、働こうと思ったの。」
「働くって、ここの仕事があるでしょ?」
「もし…立ち退いた時の話よ。」
奈未は、駆の背から顔を背ける。
「立ち退きなんてしなくていいさ。それに、働くと言ったって、どんな仕事をするつもり?」
背を向けたまま、片付けを続けながら、駆は、聞く。
奈未は、少し俯き、呟いた。
「うち、借金があるのよ。お店、潰れちゃったら、払えなくなるの。だから、普通の仕事じゃ、返せないのよ。」
「風俗にでも、行くつもり?」
駆の言葉に、奈未は、口を閉ざした。駆は、立ち上がると、奈未の方を向く。
「借金って、いくらあるんです?」
「……一千万ぐらい。」
駆は、軽く息をつく。
「そのぐらいの借金、普通に働いても返していける。」
「…返せるわけないじゃない!」
吐き出すように言った奈未に、駆は、腕を組む。
「お店は、潰させない。最悪、立ち退きになっても、借金は、俺が払う。」
「そんな……一千万なのよ?」
「…そのぐらいの貯金は、ありますよ。さぁ、そんなことより、店の片付けをしましょう。」
にっこりと笑った駆に、奈未は、涙を流し、頷く。
「うん……。」
その後、二人は黙ったまま、店の片付けを続けた。
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