第一章 復讐の幕は開かれた
二杯目のコーヒーを飲みながら、奈未は、少しずつ話をしだした。
「立ち退きの話が出てるの。でも、お父さんは、あの店は、ずっと、あの場所にあって、立ち退かないって。毎日のように、何人か押し掛けてきて、お父さんと言い争ってる。昨夜も、駆くんが帰った後、うちに来て、店の中を荒らされて。お父さんも、怪我しちゃって。」
「おじさんが怪我?!」
眉をひそめた駆に、奈未は、手を振る。
「あっ、お父さんの怪我は、大したことないの。でも、お店の中がめちゃくちゃで。今日は、お店、お休みするって。」
駆は、黙って、奈未の話を聞いていた。奈未は、続けて話をする。
「お店を荒らすだけじゃなく、あることないことを話したり、張り紙したりするものだから、お客さんも減っちゃって。駆くんも知ってるでしょ?お店、ガラガラだったの。あれ、昨日だけじゃないのよ。毎日、あんな状態。私……疲れちゃった。」
深い息をついた奈未の髪を優しく撫でると、駆は、静かに言う。
「一緒に、店に戻ろう。店の片付け、手伝うよ。おじさんのことも、心配だしね。」
「…駆くん、ありがとう。」
涙で濡れて顔で笑う奈未に、駆は、口元に笑みを浮かべた。
「こんな俺を家族だと言ってくれて、嬉しかった。
礼を言うのは、俺の方です。さぁ、行こう。」
二人は、立ち上がると、奈未の店へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます