第一章 復讐の幕は開かれた
翌日。仕事が休みである駆は、朝9時に目覚めると軽く朝食をとり、アパートを出た。
休日は、ジム通いをしている。いつも通っているジムに着き、トレーナーに着替えた駆は、2時間ほど身体を鍛え、ジムを出た。風は、冷たかったが鍛えた熱い身体には心地よかった。
久しぶりに本屋にでも行こうかと向かっていると、奈未と出会う。
「駆くーん。」
「奈未さん。」
こちらに駆けて来る奈未の姿に微笑んだ駆だったが、側に来た奈未の瞳が赤く潤んでいるのを見て、眉を寄せた。
「今日は、仕事休みなの?」
明るい口調で話し掛けてくる奈未であるが、その瞳の奥が悲しく揺れているのを駆は、見逃さなかった。
だが、優しく微笑み、駆は応える。
「ええ。今、ジムの帰りなんです。」
「へぇ-。駆くん、ジムに通っているの?どれどれ?」
そう言って、奈未は、駆の胸元に触れる。見た目より、厚い胸に、奈未は、少し頬を染めた。
「本当だ。たくましいのね。」
奈未は、駆の胸に手を置いたまま、呟いた。駆は、そっと、その手の上に、自分の手を重ね、奈未を優しく見つめる。
「フフ。奈未さん一人、守れる自信はあります。」
「駆くん……。」
ゆらゆらと揺れる奈未の瞳に、フッと笑う駆。
「なんてね。奈未さんは、お出掛けですか?」
スルリと交わした駆に、奈未は、少し寂しそうな顔をする。
「何だか、家にいたくなくて。ちょっと、ブラブラしてたの。」
「おじさんと喧嘩でもしたんですか?」
「ううん。違うの。ちょっと……ね。」
俯いた奈未の髪を優しく撫で、駆は言う。
「悩みがあるのなら、話して下さいね。俺で良ければ、話を聞きますよ。」
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