第一章 復讐の幕は開かれた


「この後、また仕事に行くの?」


ラーメンを食べてる駆に奈未は聞く。


「ええ。この後、一度アパートに戻って、風呂に入って、夜勤に行きます。」


「そっか……駆くんも大変ね。」


ポツンと呟いた奈未に、駆は眉を寄せる。それを見て、庄司は、コホンと咳払いをする。奈未は、一瞬、ハッとした表情をしたが、すぐに、アハハと笑みを浮かべた。


「いろいろあるけど、頑張らないとね。」


「ええ、そうですね。」


少し気にはなったが、駆も微笑んだ。


 ラーメン屋を出て、駆は住んでいるアパートへ向かう。古い二階建てのアパートの203号室が駆の部屋である。二階へと続く階段を上り、部屋の鍵を開けた駆は、中へ入った。奥の部屋へ向かい明かりをつけるとソファーに深く腰を掛け、駆は深く息をつく。


ソファーの前のテーブルの上のパソコンを開き、ホームページを開く。


『晴らせぬ恨み、引き受けます』


幾つかのコメントがあったが冷やかし程度のものだ。駆は、パソコンを閉じると上着を脱ぎ、風呂場へ向かう。


脱衣所で衣服を脱いだ駆の身体は、着痩せするのか、意外とがっしりとしていた。すりガラスのドアを開け、シャワーを出すと、駆は頭から、お湯を被る。

お湯が駆の髪を濡らし、顔、首筋、胸元へと流れていく。


左脇に残る古傷に目を止め、駆は、そっと、その傷に触れる。


「母さん……。」


呟いた駆の瞳は、ゆらゆらと揺れていた。

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