ROUTE10 誰かがずっと眠ってる

 先に「片水崎かたみさき動物病院」へ行くことになった。


 行く途中で、折賀くんは腕時計みたいなやつに向かって何かしゃべってる。なんかわかんないけどカッコいい!


 動物病院に入って、受付でまた折賀くんがお話をする。前もって電話しておいたから、お話はスムーズに進んで、あとはケンタの写真を置いてくだけ――だったんだ、けど。


「あの、ちょっとこっち来てもらえますか」


 受付の向こうの診察室から、男の人が顔を出した。たぶんここの獣医さんだ。


 言われるがままに、二人で奥に入った。室内は、思ったほど強くはないけど、いわゆる動物のにおいに少し保健室のにおいが混じったみたいな、初めてかぐ種類のにおいがする。別の部屋から、動物たちの声が聞こえてくる。入院中なのかな。


 その、別の部屋まで案内された。においがちょっとだけ強くなる。


 ケージがいっぱい並んでて、そのうちのいくつかに犬や猫が入ってる。みんながわたしたちの方をじっと見たり、かと思うとケージの中をうろうろ歩き回ったり。みんな可愛いな。


 一番奥の床の上に、ひとつだけ他とは離れて置かれたケージがある。


 その中に、白茶色のちっちゃくて可愛い犬が寝てる。柴犬かな?


「この犬は、ちょうど一週間前に運び込まれてきました。首輪に名前はあるけど、飼い主がまだ現れない身元不明犬です。首輪に刻まれた名前は『セレ』です」


 一週間前。ケンタが学校に現れたのと、同じころだ。


「治療はほどこしましたが、いまだに意識が戻らず、ここでずっと眠り続けています。ここへ来る前に、ケンタくんと同じように小学校付近で見かけたという方がいました。この『セレ』について、何かご存じありませんか」


 折賀くんは、獣医さんに断ってからまた腕時計みたいなのを操作し始めた。また監視なんとかで捜すのかな?


 そのとき、部屋の外、病院の入り口の方から誰かが入ってくる物音がした。


 振り返ってみると、そこにいたのはひとりの茶髪のお兄さん。


「折賀! その子は……」


 なんで? 目の前にいるのは、茶髪の知らないお兄さんだけなのに。


 なんで、一緒に入ってきた気がするんだろう。



●・○・●・○・●・○・●・○・●・○


つぎは

⇒ROUTE14 ケンタが消えちゃった!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897049162/episodes/1177354054897258478

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