「ケンタ」と「みゆり」・捜索編

ROUTE1 ありのままのぼく

『ケンタか、いい名前だな』


「くろづるさん」は、そう言ってほめてくれた。


『ところで、今、自分がどんな状態なのか気づいているか?』


 じょうたい? じょうたいってなんのこと?


『自分が今どんな姿なのか、ってことだ』


 すがた……。


 三角お耳をぴょこっと動かしてみる。うん、いつもどおり。


 しっぽ。ぴんっと立ってる。うん、これもいつもどおり。


 ちなみにこのしっぽ、「」って言うんだって。かっこいいでしょ。


 とら毛もようの前足を、ぷらぷらと動かしてみる。


 あれ。足の色に、地面の葉っぱの色がまざってる。ぼくの足、なんか、すけちゃってる?


「ぼく、足の色がうすくなっちゃったみたい」


『足だけじゃなく、全身がうすくなってるぞ。つまり今のきみは、犬のこども、しかも霊の姿なんだ』


「れい」? ぼく、今「れい」なの?


『霊ならば、私の姿が見える唯一の人間がきみの助けになるかもしれない。彼に会って、助けをあおぐといい。まだ、自分の名前しか思い出せないのだろう?』


 そうだ。ぼく、どこへ行こうとしてたんだっけ?


『この道をまっすぐ進んでみるといい。ちょうど、彼が走ってくるところだ』


「うん! ありがと!」


 よくわかんないけど、くろづるさんの言うとおりにまっすぐ走ってみた。足の強さには自信あるんだ!


 てけてけっと走ってると、くろづるさんの言うとおり、前から誰かが走ってくるのが見えた。灰色の服を着た、人間のお兄さん。紺色の服を着て、乗り物に乗ったお姉さんもいる。


「あっ、あのっ、こんにちは!」


 勇気を出して、話しかけてみた。すると、ぼくの前を走って通り過ぎたお兄さんが、くわっと大きく目を開いて、「ええっ??」と叫んで、前につんのめりそうになりながら立ち止まった。


甲斐かいさん?」


 お姉さんが、乗り物を止めて声をかけると、お兄さんは「美弥みやちゃん、ちょっと待っててくれる?」と言いながら、ぼくの方をじいっと見つめて近づいてくる。


 じいぃっ……。


 どうしよう。この人、目がちょっとこわい。


 ぼく、どうしたらいいのかな……?



●・○・●・○・●・○・●・○・●・○



【どちらか選んでね!】


◆かいくんに「お手」してみる


⇒ROUTE3 「かいくん」と友達になったよ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897049162/episodes/1177354054897222733


◆やっぱこわい、逃げよう!


⇒ROUTE5 「かいくん」がふっとんじゃった!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897049162/episodes/1177354054897222851

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