第3話 地獄の始まり
「とう…さま?」
僕はこの地下牢という劣悪な環境の上、拷問器具や肉片の転がっている恐怖。
そして、父に殴られた時に折れたのか、肋骨の辺りに響く鈍い痛みにより上手く話せなくて、少し片言になってしまった。
「何を言っている?我が一族のスキルの無いお前は私の息子ではない。我がシュタットベルク家の汚点だ。」
父はそう言って僕の方へと近づいてきた。
「なにを…?」
父は僕の目の前にやってきた。
とても怖い。
そして耳元でそっと・・・
「お前を殺す。」
父の声はとても低く、本当のように聞こえてしまう。
「あの、うそですよね?」
「フハハハハハ!」
「さぁな。」
父は少し笑い、それだけ言って帰って行ってしまった。
(ありえない、あんなに真面目な人がそんなこと・・・ありえない。)
父は真面目で現近衛騎士団長で部下から慕われており、国王からの信頼も厚い国の重要人物である。
そんな人が実の息子を殺すわけが無い。
酷くても廃嫡ぐらいだろう。そうに決まっている。
そう思っていた。
しかし、現実は非情であった。
結局、地下牢で鎖に縛られたまま2日が経ってしまう。
(喉乾いた・・・お腹空いた・・・このままじゃ死んじゃう・・・水・・・・)
「・・・水・・・・・・水…を・・・」
この2日間、地下牢には誰の出入りもなく、水も食事も貰えていない。
カツっカツっカツっカツっ・・・
誰かの足音が聞こえてきた。しかし、衰弱している僕にそれを確認する元気は無かった。
「元気そうだな。」
(どこが元気そうに見えるんだよ)
そう反論したかったが声が出ない。
目の前に凶悪な笑顔の父がいた。
「そうか、無視をするのか生意気な奴だ。」
「では早速始めるか。」
何を始めるんだろ。
そう考えたが答えはすぐにわかった。
バチンっ!!
「ぐがぁぁぁぁ!!」
音が聞こえたと思った次の瞬間体に強烈な痛みが走った。
ムチで打たれたのだ。
バチンっ!!
「ガァ!!」
何をされたのか思考する前に再び強烈な痛みが走る。
「どうした?そんな大声出して。元気そうじゃないか。」
さっきまで空腹と喉の乾きで声が出なかったはずなのに大きな
バチンっ!!バチンっ!!
何度も何度もムチで打たれている。
「――ガハっ!!」
しかし、意識失う事も死ぬ事も出来ない。
痛みだけが走る絶妙な力加減で行っているのだ。
(なんでこんなことを・・・)
「ぐぁぁ!」
ムチで打たれ続けた。
何度も何度も何度も何度も
(こんなに痛いならもう死にたい。)
心の強くない僕はそんな風に思った。
どれぐらいの時が経ったのだろうか、1時間?2時間?
痛みにより思考ができない。
(早く終われ・・・)
ただひたすら終われ終われと願うだけ。
父が登場してからここまで、10分も経っていなかった。
バチンっ!!バチンっ!!
痛覚が麻痺してきて声を出す元気もなくなった。
そしてムチが止んだ。
「ちっ!つまらんな。
待機していた騎士に合図を送り、父は何処かえと消えていった。
(やっと終わった・・・)
そう思ったが次は父の腹心の騎士が僕に対して無理やり食事と水を飲ませる。
恐怖、痛み、絶望感。そんなモノに苛まれて喉を通らないが、吐き出そうとしても無理やり口に押し込まれた。
そして1日が終わった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は少し戻り、ユリウスがアンナを突き飛ばし、地下牢へ連れていかれた頃。
「旦那様!」
「アンナか。済まないな。怪我は無いか?」
ユリウスの父、フィリップはユリウスの侍女アンナへと謝罪をしていた。
「いえ!私は大丈夫です!しかし、ユリウス様はどうされるのですか?」
「ふむ、あいつには少し頭を冷してもらわねばならぬ。あの状態なら外に出すことは出来ないからな。」
これからユリウスに行う事を感じさせない程爽やかな態度であった。
これが普段のシュタットベルク公爵家当主としてのフィリップである。
そのため、部下達からも、民からも好かれている人物だ。
「そう…ですか。」
「あぁ、その間はアンナには済まないがユリウスから離れてもらう。甘やかしてはいけないからな。」
「でも…いえ、かしこまりました。」
フィリップの言葉は頼み事のような口調ではあったが、それでもれっきとした命令であるため、反論することは許されず、素直に従うしかないのだ。
結局、この後は父の行いを知る数少ない人物にユリウスを地下牢へと運ばせたのだ。
その後、ユリウスを見た者はいなかった。
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