第2話 役立たず
「デスルート?なんだこれ・・・」
聞いた事も無いスキルだったため、固まってしまう。父はそれを訝しげに思い問いただしてくる。
「どうした?最上級スキルである剣聖では無かったのか?」
「えっ・・・あっ・・・その・・・」
「見せてみろ。」
そう言って父は僕からスキルの書かれた巻物を奪い取る。
「デスルート?なんだこれは!さっきの光からしてただのスキルでは無いだろうが、司祭は知っているか?」
父は今度は司祭に詰め寄り、問いかける。
「いっいえ、私も長い事やっていますが、初めて見ました。光からして恐らく最上級のスキルなのですが…。少し他の者に確認して参ります!」
スキルには、下級、中級、上級、最上級とランクがあり、それ以上のランクは確認されていない為、最上級が1番上のランクとされている。
一部の書物にはそれ以上もあるのでは無いかと言われているが、確認されていないため、誰も信じてはいない。
「さて、ユリウス。これはどういう事だ?お前は何故剣術系統のスキルでは無い?シュタットベルク家の血を引いているならば最低でも剣術は貰えるはずだが。」
「いっいえ、僕にもさっぱり…。父様と同じ剣聖になりたかったのですが・・・」
僕の方こそ聞きたいぐらいだ。光が凄いとか最上級とか期待させておいて、違うってどういうこと?
「まぁ、新スキルとして使えるものだったら問題は無いが…使えなかった場合は分かっているな?」
「はい・・・」
そんな脅しを受けていると先程の司祭が他の人を連れてきた。
「お待たせ致しました!」
「恐れ入ります。ご子息のスキル『デスルート』はこれまでの歴史上、1度も確認されたことの無いスキルでした!」
「おめでとうございます!宜しければこのスキルの能力が分かり次第、ご報告頂けますか?」
「かまわん。使えるスキルだったらな。」
「はい!ありがとうございます!」
「ではユリウス。帰るぞ。」
「はい。」
馬車に乗って家に帰るまでも行きと同様に無言であった。
ただ一言だけ。
「10日間だ。」
そう言われただけだった。
その言葉に最初は意味がわからなくて、問いかけたが何も答えてくれなかった。
結局意味を理解するまで、いつも通りの生活を行い、気がついたら一週間が経っていた。
一週間経過してようやく理解した事。
「――そういう事か!?」
10日間だ。
その言葉の意味は10日以内にスキルを理解し、使えるようになれ。そういう意味だと気がついた。
残りの期間は3日しかない。
「どうしよう。今まで何回か使おうとしてみたけど、使い方が全くわからなかったのに…。」
「死ぬ程強くなる?死ぬ程努力をしろって事?わからん・・・」
結局スキルを発動させるために大声で『デスルート!!』などと叫んだり、スキルが手に入れば問題ないだろと今までろくに触ったことの無い剣を振ったりしてみたが特に何も無かった。
最終日。約束の10日が過ぎた。
僕は今焦りからくるイライラがどんどん溜まっている。そして爆発する。
「はぁ、はぁ・・・。」
「くそ!死ぬほど強くなるってどういう事だよ!!」
持っていた剣を地面に叩きつけて声を荒らげる。
「くそ!くそ!もう時間も無いのに!!」
地団駄を踏み、イライラを床にぶつける。
「ユリウス様…大丈夫ですか?」
「うるさい!!!」
僕はそう言って心配してきたアンナを突き飛ばしてしまう。
「いたっ!」
「あっ…ごめん…そんなつもりじゃ…。」
アンナは突き飛ばされて転び、足に怪我をしてしまった。
普段はイライラしていても人に当たった事は無く、密かに誰にも見られないように、床や壁などに発散していた。
そして今回、今までお世話になったアンナを傷つけてしまったことに動揺する。
さらにタイミングが悪い事にその現場を父が偶然見ていた。
「ユリウス!お前は何をしているのだ!!」
「あっあの・・・」
「おい!誰かこいつを連れていけ!」
父は話を聞こうとすらしなかった。既に心の中では僕の処分を決めていたのだろう。
「まっまっt」
傷つけてしまったアンナに謝ろうとするも、家に滞在している騎士に連れてかれそうになる。
必死に抵抗してアンナに謝ろうとしたが――ボコッ――と言う音が聞こえたと思ったら意識を失ってしまう。
どうやら父に殴られて意識を失ったみたいだ。
アンナも何かを言っていたが聞き取る前に意識を失ってしまい、分からなかった。ごめん――
意識を取り戻した時、僕は家にある地下牢にいた。
地下牢は地下ということもあり、光が届かなく、とても暗くてジメジメしている。そしてかび臭く、生臭い。
話には聞いていたけど本当にあったんだ・・・
「いたっ…。何これ、なんで鎖僕はで繋がれてるの?もしかして・・・」
そして、たった今想像したことにゾッとし顔が青くなる。
今まで話で聞いたことがあっただけだが、父は生真面目で正義感のある立派な人。という印象が強い反面。
普段は見せないが、とても暴力的であり、人を痛ぶるのが好きという噂がある。
ここは生臭い血の匂いも充満していた。さらに分かりづらいが何かの欠片も転がっている気がする。
ガチャ…ガチャ…ガチャガチャ・・・
必死に動かしても鎖はビクともしない。
もう少し体を動かしていたら良かったと後悔するが遅い。
カツっカツっカツっカツっカツっ・・・
僕が今鳴らした鎖の音に反応したかのように足音が近づいてくる。
灯りを持っているのか近づいてくるにつれて明るくなり、この場所の全容が見えてくる。
「ひぃっ」
恐怖に声が出て涙が出そうになる。
ここにあったのは拷問器具ばかりであった。
そして、何かの欠片だと思ったのは人の指みたいだ。
来るな来るな。僕はそう願うも無慈悲かな、目の前に松明を持った父がやってきた。
「よう。元気そうだな息子よ。いや、
その時の父はとても凶悪な笑みを浮かべていた。
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