死ぬほど強くなる?スキル『デスルート』に殺される僕

六道奏

第1話 選定の儀


 コンっコンっコンっ


 部屋の扉がノックがされた。


「どうぞ。」


「失礼致します。ユリウス様、執務室にて旦那様がお呼びになられてます。」


 入って来たのは幼少の頃から一緒に過ごしている侍女であり、幼馴染のアンナだ。

 彼女は両親がこの家に仕えており、そこに産まれた娘であったため、産まれた時から僕の侍女になる事が決まっていた。



「わかった。ありがとう。すぐに向かうよ。」


 そう言って僕はアンナを連れて父の執務室に向かって歩き出す。


 「ねぇアンナ。僕達は姉弟みたいなもんだし、もうちょっと気軽にできない?」


 アンナとは僕が産まれた時から一緒に過ごしており、彼女は僕より歳が3つ上なため、姉のような感覚である。


「申し訳ございません。私を姉と慕って下さるのはとても有難いです。しかし、私はただの侍女であり、ユリウス様は、このシュタットベルク公爵家のご子息でございます。身分の差があるため、この態度は変えられません。」


「そっかぁ。でも僕は三男で末っ子だし、爵位も継ぐ事は無いんだけどなぁ。」


「それでもご子息にある事に変わりはありませんので。」


「でも父様は僕に関心が無いんだよ?得意の剣術だって教えてもらったことがないし…。」



――そんなこんなで父の執務室の前に辿り着く。



「それでは私は仕事に戻ります。失礼致します。」


 僕は手を振ってアンナを見送る。



「さて、行くか。」


 コンっコンっコンっ


「入れ。」


 ノックをしてから数秒後、中から低い声が聞こえてくる。父の声だ。


 ガチャっ


 中へ入ると父は書類の山に飲まれて、忙しそうにしていた。

 チラッとこちらを見るも、すぐに目線を書類に戻して作業を始める。



「ユリウスよ。明日は選定の儀の日だが、分かっているな?」


--選定の儀とはこの世界で10歳になる者が神殿にて神の祝福を受け、スキルを授かる日である。

 このスキルによって人生が左右されてしまう。--


「はい!僕も父様のような騎士となる為、シュタットベルクの名に恥じないスキル。剣術以上のものを授かります!」


 父はシュタットベルク家の現当主であり、このシュナイロトン王国の騎士団長である。

 もし剣術系統のスキル出なかった場合、廃嫡されて家から追い出されてしまうだろう。

 最悪の場合、シュタットベルク家の汚点として事故に見せ掛けて殺されてしまう可能性もある。


 有り得ないと思うかもしれないが、実は伝統ある貴族家ではよくある事なのだ。


 この選定の儀で授かるスキルは血統も大きく関わるため、代々剣術系統のスキルを授かってきたシュタットベルク家ならば、99%以上の確率で剣術系統である。

 その血を引いている僕ならば、心配する事は無いだろう。


 ちなみに父は最上級スキルである剣聖を持っている。

 


「よろしい。我がシュタットベルク家の名に恥じぬスキルを授かり、騎士となりこの国に貢献するのだ。」


「はい!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 当日


 僕は今、父の共に馬車で神殿へと向かっている。


 父は忙しいが、この日は予定を毎回空けるのだ。

 めでたい日だから。

 と言う訳ではなく、しっかりしたスキルを得られるか。監視のためであり、世間の評判の為でもある。

 平民でさえ、この日は仕事を休み親と共に向かうのだ。貴族として疎かにすることは出来ないのである。


 馬車の中ではずっと無言であり、重い空気が漂っている。

 僕は今、どんなスキルが得られるかのワクワク感と剣術系統のスキルが手に入らないんじゃないか。と言う不安感に苛まれている。


 神殿へ着くと人で溢れかえっていた。

 選定の儀を行う神殿は数少なく、大きな都市でしか行わない。

 ここ王都には周辺地域の10歳の誕生日を迎える人が毎日集まっている。


 平民用の入口は何時間待ちという具合になっているが、僕らの入る貴族用の入口は案内の司祭以外は誰もいなかった。



「着いたか。ユリウス、行くぞ。期待しているからな。」


「はい!」


 初めて言われた―父からの期待している―という言葉。僕はそれが嬉しくて元気よく返事をする。


「それではこちらへどうぞ」


 僕達は真っ直ぐに選定の儀を行う、選定の間へと向かう。

 ここは貴族専用の場所であり、この日誕生日を迎えた貴族は僕以外は誰もいなかった。


 選定の間へと辿り着く。そこには魔法陣の書かれた円形の台があり、目の前のには大きな神の象が置いてある。


「それではその台に乗ってお祈り下さい。」


「わかった。」



 僕は台の上に乗って祈りを捧げる。


(どうか、僕にも父と同じ最上級スキルである剣聖をお願いします。)


 瞬間、僕の体を見たことも無いほどの凄まじい光が包み込む。


「おぉ!凄まじい光!これは最上級のスキルでしょうか!!」


「これは…私の時以上の光があるような…」


 司祭と父が話し声が聞こえる。僕は目をつぶっていたため分からなかったが―凄いスキルかもしれない―声によって期待が膨らむ。


 選定の儀は10秒ほどで終わり、目の前に巻物が現れる。

 僕の得られるスキルで最上級は剣聖だろう。そう考えてワクワクしながら確認する。


「えっ・・・・・・」


 しかし、そこに書かれていたのは剣聖では無かった。

 それどころか剣術系統ですらない。聞いたことも無いスキルであった。



 『デスルート』


 死ぬ程強くなる道が解放される。 


 ※※※※※※※


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