第4話 ユークリッド幾何学的上昇曲線を描く快楽係数

ぐっちょ…べっちょ…ぬっちょ…


「ほぐ…むゔぅ…」


ねっちょ…べっちょ…めっちょ…


「も…も…らめ…や…やめ…」


ねっちょ…ねっちょ…ねちょ…


「あああ…そんな…らめって…いったのに…」


「被虐係数が苦痛係数に対して比例的上昇を検知。行為の継続を決定」


まってまってまって…

そういうの科学的に解析しながらやられるのすごい辛い


ぐっちょ…ばっちょ…にゅっちょ…


「おね…まっ…」


グジュグジュグジュグジュグジュグジュ


「やら…おにゃのこみらいに…」


宇宙人から伸びる触手は、僕の『やめて』という声に忠実に従って俊敏に這いずり回る。

その拒絶に含まれる歓迎の声色を悉く拾い集め、ぼくの求める気持ちよさを提供する。


「のりつんズーズズ…ねくんは…ここが気持ちいいんでしょ?わかっているのよ」


驚いたことにぼくが愛してやまない石塚さおみさんの姿と声で、ぼくが毎日のように見ていたAVを再現して話しかける。

ぼくがAVを見ていた理由を『快楽の追求』と話した事が原因で、宇宙人はぼくに極限の快楽を提供してくれると話してくれた。ゆえに石塚さおみさんとこんな人間離れしたえっちしている。

宇宙人の全身はあいまいになっているせいで、まるでイカのさおみさんとえっちしているようだ。

とりわけ、生首がぼくの孤立した乳首を舐めている様子は戦慄したが、情けないことにぼくの体は快楽の享受を優先した。


28回目の射精を終えた時点で宇宙人はようやく開放してくれた。


「はぁ!はぁ!はぁ!」


「教経くん、気持ちよかった?」


「い…石塚さとみさんの顔でそれ言う…」ムクムク


「うふふ…ピーピー…教経くん気持ちよかったかしガーガー」


「要所要所でFAXみたいな音出して分析すんのやめろ」


ともあれ!なんでこんなことしているのか。というかこの宇宙人のしたいことがなんなのかまるでわからない。


「わかった…言うとおりにする…。具体的にどうすればいいの?」


人外の快楽を与えられ命の危機を感じたぼくは、もう反抗を観念して宇宙人にこの地球の支配を委ねることにした。


「普段どおり過ごしていればいい。我々が観測した最も程度の低い人間の日常がいかなるものかを観測する事が目的だ。特別なことをされると寧ろ困る。」


「そういえばそういう話だった気がする」


じゃあさっきのようなえっちは普段しないと言ったらもうできなさそうだ。言わないようにしよう。


「ん?」


「なんだ?」


「姿を隠してこっそり覗く方が良かったんじゃないの?」


「それはもう終えている。今行っているのは、外宇宙生命体と遭遇したときの対応検証フェイズに該当している。貴様が私をどのように扱うのかを含めた調査だ。」


「ほーん。ところでその貴様とかいう話し方ってなんなの。君たちの星の話し方?」


「私が貴様の脳内から基礎情報を吸い出した際、短期記憶に残留していた人格を模倣している。貴様はこの話し方をする人格に対して憧憬や好意を持っているのでそれが最善と判断した。見当違いか?」


「…なるほどなぁ。でも実際対面で話されると威圧的だし、石塚さおみさんはそういう話し方しないからなんかギャップがなぁ」


「ふむ。貴様が望むのであれば好む姿に変えることは可能だ。試してみるか?」


…うーん…


「とりあえず今のままでいいや。」


「了解。では望んだときに声をかけろ。私のことは貴様の私物のように考え使うといい。先程のような行為についても同様だ。指示があれば最善を尽くす。仮に貴様を殺せと命ぜられれば殺すし、この地球を滅ぼせと命ぜられれば、それも遂行する。」


「ハハハ…冗談でしょ…」


「冗談ではない。この星の人類が外宇宙生命体と接したときどのように振る舞うのかを最大限見極めることが目的だ。滅びるのであればそれもまた重要なサンプルだ。」


まるで漫画のようにぼくはつばを呑む。

これは脅しじゃなく、ただ淡々と事実を述べているに過ぎないと思わせるには十分なほどの説得力をすでに見せられている。


疑う余地など欠片ほどもない。


この遊星から来たと自称する宇宙人との奇妙な共同生活がぼくにもたらす変化が、ぼくの矮小な欲望にとどまらないと思い知るのはそう遠くなかった。

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