第2話 低次元生命体の生態調査実施要綱
窓から差し込む日が容赦無くぼくの目をこじ開けた。
「もう朝か…っあ…」
太腿に強烈な痛みを感じた。
とっさに出た腕もまるで筋肉痛のような違和感でうまく動かない。
「っああっ…」
さすがにここ数日シコりすぎたかな。
1日9回を繰り返せばこうもなるか。
「ひとまず水をのめ」
「ありがとう。っ…つつ…」
1カップの水を手に持っただけで腕がもげそうなほどいたい。
しかし誰か知らないがせっかく入れてくれた水だ。ありがたく飲むこととした。
「ありがとう生き返ったわ。水ってこんな旨かったっけ」
「カリカリ…」
ぼくに水をくれた少女は全裸でメモを取っている。
物珍しさに、悪いと思いながらもたまらず覗き込む。
「何やってるの?」
「貴様の生態調査だ。」
「ぼくの…って君だれ?」
よくよく考えればすごくおかしくないか。
こんな美少女が全裸でぼくの部屋で過ごしてる。
話し方もおかしいし動きもなんというか…へんだ。
「誰…誰だよ!」
一旦意識を向けてしまうと、そこから雪崩のように様々な感情がなだれ込む。
強烈な恐怖に泣きそうになる。
小学生でもやらないようなペンの持ち方でノートに何かを書き込んでいる。
そして目玉が落ちてきそうなほど目を見開いてノートを睨み付けている。
その超絶インパクトのメモ姿で、元々力の入らない体からさらに力が抜ける。
助けを求めるために大声をだしたいが、声の出し方がわからない。
ちょっと気を抜けば呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうだ。
女はひとしきり気持ち悪いメモを取り終えたのち、ぼくに向き直り四つん這いで向かってきた。
「ひぃっ…たす…た…」
股間辺りから温かさを感じつつ怯えるぼくに、女は突如として蟲惑的な笑顔と身振りでさらに近づいてきた。
「わかってるんだよ…?きみ…こういうの好きなんでしょ?」
先ほどの狂ったメモ姿から打って変わって、昨日ぼくが7回オカズにしたシーンとほぼ同じシチュエーションで迫ってきた。
「えっ…え…あの…えっと…」
人間離れした奇怪な動きから、唐突にAV女優さながらの動きに切り替わってしまったので、その違和感は絶大だった。ただし、それでもその性欲を煽る動きは人間の範疇であったためか、ぼくの脳は強制的に違和感を排除し、目前に迫った美女の誘惑に溺れる決断を突きつけた。
「はっ…はっ…好き」
「んっふっ…素直な子は好きだよ。どうして欲しい?」
「あっうっええええっえっとえとえと…乳首舐めてちんちんしごいてほしい」
「んっふっ…かわいっ…れえれれれれれれれれれ」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ぼくに覆いかぶさり、今まさに乳首に顔を埋めようとしていた彼女の様子が激変した。
人間がこんな動きをしているところは見た事がない。
強いて例えるならば、天気予報をしているvTuberがバグってとんでもない動きをしてしまうアレに似てる。
「例外反応を検出。生殖擬態シークエンスを停止」
目的はわからないが、全力で右腕を上げて、その下に首を入れようとしている。
あまりに首に負担のかかる姿勢であったため、首が折れそうだ。
「れえれれれれ…れえれれれれ…緊急メンテナンス…緊急メンテナンス…んっふっ…素直な子は好きよ…れえれれれれ」
「うわぁぁぁあぁぁ!!!!!誰か助けてぇぇ!!!」
あまりにも常軌を逸している事象が目の前に展開され、ただ頭をかきむしって泣き喚くしかできない。顔は笑顔と真顔を交互に繰り返し、全身は微細に振動している。
「んっふっ…れえれれれ…んっふっ…れえれれれ…どうして欲しいのかな?」
「止まってぇぇぇ!!!!!」
どうして欲しいと聞かれたので、とりあえず思いつくお願いをしてみた。
あまりの恐怖に錯乱し、脳で考えたというよりも、脊髄が代理で返答したかのようだった。
「システム強制しれえれれれ…んっふっ…かわいい子は終了しますれえれれれ」
バチンという音が鳴り響き、女は動作を止めた。
しかし、安心する暇もなく女の首が取れ、地面に落ちた。
首の断面は真っ暗でなにもない。血が吹き出したりしないんだなって冷静に見ていたが、より一層この世のものではないと感じさせる。
脳が思考をやめるよう必死に訴えかけているので、もう素直に従うことにした。
「れえれれれ」
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