遊星からのシ者

杉田まが

第1話 流体金属インターフェイスによる知的生命体情報干渉シークエンス

しこしこ…しこしこ…


暗闇の中、知的生命体はモニタに映る同種属の性交渉を視認しながら性器を弄っていた。

本日8回目の行為になる。本生命体の行動を分析した結果、9回目の行為終了時点で活動限界を迎える可能性が高い。この機を逃す訳には行くまい。


生命体は活動限界の後、一切の機能を停止するため、目的の遂行が限りなく容易となる。

ただし、その状態では遺伝子情報の抽出は可能だが、記憶野や言語野からの情報抽出が困難になる。

故に、意識レベルが覚醒と混濁の境界を狙わねばならないのだ。


最低でも言語抽出さえできれば、言語によるアナログアクセスで情報抽出は可能だ。


8回目の行為が終了し、生命体は浅い活動休止状態に入る。生命体の視覚範囲内で活発に動作するが、反応は得られず。視認されていないことを確認。

生命体のプライベートディスタンスへ進入する。


入り口の開閉により発生した音声で、生命体の意識覚醒を期待したが、未だに反応がない。

生命体の活動状態を注視しながら抽出針を露呈し抽出準備を行う。


「あ…あああ…」


意識覚醒の予兆を検知。最終近接距離にまで接近。


「あああああああやべぇおしっこもれそう。超絶気持ちよかった…」


意識レベルが覚醒域に到達したことを確認。肩に抽出針の穿刺を開始。


「って…なん……」


生命体の痛覚検知を確認。至急言語抽出を開始する。


「ぅあっなんっ…なんだ…これ…」


予定どおり、行為中の精神及び身体摩耗により生命体の活動は緩慢で、全抵抗の無力化に成功。生命体の言語情報全抽出に成功。


続いて短期記憶の抽出を開始。


「うあああああああ!なん…なんなんだよこれ!うあああああ!!!」


生命体は全身を振るって抽出針の除去を試みる。口腔から発せられる音声とは裏腹に、動作は極めて緩慢であるため、抽出シークエンスへの影響は一切見られない。想定どおりである。

生命体から現時点で抽出可能な情報はすべて取得できたため、抽出針を抜刺し、

生命体の短期記憶に残る同種属の姿へと変態する。


「山本教経だな」


「は…はは…」


生命体、山本教経は変態後の姿を見て、ぱくぱくと何某か話そうとしたようだが、脳の機能レベルが極めて低いため、発語もままならず、このまま休眠状態へと入る事が推測された。


「っはあはは…」


か細い声だけを残し、山本教経は意識を手放すのであった。

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