EIGHT ストレッチと筋トレならどっち?
「おかえり、
なんだろ。
僕の身長の半分よりも少し長い円筒形。
「・・・・・・抱きまくら?」
「ブブー!」
ストレッチポールっていうんだね。
「こうやって筒の上に背骨をなぞるように乗っけて仰向けになって・・・」
アパートのキッチンのフローリングに寝かせたポールの上で
そして。
「あ・・・気持ちいい・・・」
とてもよく分かる。背骨の周辺の筋肉に乳酸が溜まった感じになっているのを、ストレッチポールで弛緩させて、なんというか、軽い筋肉痛をほぐすような感覚を縁美の美しい手足とよく伸びた背中の曲線から想像した。
顎を天井に向けて目を閉じ、『気持ちいい・・・』とかすれたような声を出す彼女の顔を覗き込むようにして見たい欲求を辛うじて僕は抑える。
「さ、蓮見君も。現場仕事で疲れた体をケアしないと」
「うん」
縁美と同じようにやってみる。
「ほんとだ・・・気持ちいい・・・・・・」
それからしばらく交代しながら互いの一日の疲れをほぐしていく僕と縁美。
「蓮見くん。ほぐしたら次は鍛えてみようか」
「鍛える?何を?」
「おなか、とか」
縁美によると腹筋は体を起こす時ではなく倒す時に筋肉がつくのだという。
そして上半身を動かして鍛えるのではなく足をまず天井に向けて上げて、そこからその上げた足を倒していくのが効果が高いと縁美は主張した。
「蓮見くん。足を伸ばしたまま倒したら腰を傷めるかもしれないから、膝を屈伸するみたいな感じで、床スレスレに下ろしてきた時にまっすぐに脚を伸ばして、そのまま!」
「えっ」
「30秒静止!」
「さ、30秒?」
いーち、にーい、さーん・・・・・・・・
・・・・・・・・・・長い・・・・・・・・
腰が、痛いし、おなかが・・・
「縁美・・・おなかが、よじれる・・・」
「頑張って!後10秒だよ!」
「・・・・・・!」
疲れた・・・・・
「縁美はいつもこんな筋トレやってんの?」
「体幹トレーニングだね。体を真っ直ぐにしておきたいから」
ああ・・・・なるほど。
「ねえ、縁美」
「なに?」
「おなか、見せてくれない?」
「・・・・・いいよ」
はい、と言って部屋着のスヌーピーのTシャツを、胸の下あたりまでめくってくれた。
「凹んでるね」
「蓮見くん」
珍しく、ジトリとした目になる縁美。
心外なことを言われた。
「エッチだね」
否定はできないけど。
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