第22話黒銀の嵐狼

〜黒銀の大狼〜


ぼくは大きな原っぱで育った。

ぼくは仲間たちの中でも頭が良くて強かった。

仲間と遊んだり獲物を探して食べたり楽しく過ごしていたんだ。

時々小さくて脆くて弱い二足歩行の動物を殺すこともあった。ぼくが通っただけで血だらけになって死んでいく、つまんなくてもろい生き物。



だけどそんな弱いはずの生き物にぼくたちは殺されていった。

いつもと変わらず楽しく生きてたら、あいつらは数えきれないほどの大群でぼくたちの住処に来た。

ぼくたちはその数の多さにびっくりしたけど、所詮もろい生き物がいっぱいいるだけだと考え直して襲いかかった。

最初はぼくたちがあいつらを殺して回った。

だけどいつのまにかそばで戦っていた仲間たちがバラバラなところで戦っている。

そして個別に嬲り殺されてた。



こんな光景を前に見たことがある。

どこにでもいる点々みたいな生き物がぴょんぴょん跳ねるとっても小さい生き物を殺す時に見た光景だ。

どちらも小さいけど、ぴょんぴょん跳ねる奴の方が何十倍も黒い点々よりデカイのに、次第に黒い点々がぴょんぴょん跳ねる奴を覆い尽くして殺すんだ。

今の状況はそれだ。



ぼくはすぐに叫んでみんなにそのことを伝えて、ぼくは奥の方でなにか周りの奴らに言い続けている奴に向かって突っ込んだ。

多分あいつが何かしてるんだ。

ぼくの思った通り、ぼくがそいつに突撃すると仲間たちが少し戦いやすくなったみたいだった。

でも予想外だったのが、奥に行くほどもろいはずの生き物が強くなっていく。ぼくが何回か攻撃しないと死なない


「こいつら生意気!!」


いつのまにかぼくの体にはいくつもの傷がつく様になっていた。それになんだか体も重い。

ぼくは力を使って傷と不調の原因を消していく。

仲間内でもできるやつがそんなにいないぼくの自慢の力をこんな奴らに使うことになるなんて!

どうにか指示を出しているやつの所までたどり着いた


「こいつをやれば!!!」




嘘だ。

偶々だ。

信じられない。

こいつぼくの攻撃を固くて鋭い棒で受け止めた!!

こいつらは弱くてもろい生き物のはずなのに!!!

指示を出している奴の周りにいる他奴らも指示を出している奴よりも弱いけど強い!

追い詰められるけど殺し切れない!!

周りを見たらまた仲間たちが不利になっている。

なんで?なんで?

こいつはぼくと戦うので精一杯なはずなのに!!



原因を探せばすぐにわかった。

違う場所にこいつと同じ様な事をしている奴がいる



グサッ!!


「ああああああああああああああああ!!!!??」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

あああああああああああああああああああ!???!

なんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだなんだ!!


痛い箇所を見ると取り巻きの一人がぼくの横腹に棒を突き刺していた


「おまえかぁぁぁぁ!!!!!!」


ぼくはそいつを思いっきり踏み潰した。

と同時に横腹に激痛が走った。

くっそー!!油断した!!!

やばいもう仲間たちはここにはいない、殆ど殺されて残りは逃げたんだろう。

こんな奴らから逃げないといけないなんて嫌だ。

ぼくはせめてこいつらだけでも殺そうと必死に頑張った。

後数人で殺しきれるというところで"あいつ"が現れた。

あいつはいきなりぼくの前に現れてぼくの尻尾を掴むとぼくを振り回し始めた。

なんなんだよこいつ!なんなんだよこいつ!なんなんだよこいつ!なんなんだよこいつ!

なんでぼくより小さいのにぼくより強いんだ!?



そこからは一方的だ。

あいつはぼくボコボコにしていった。

意識がなくなる直前であいつは少しだけぼくから注意を外した。味方の奴らに指示を出してんだと思う。

その時ぼくは無意識のうちにありったけの力で風を巻き起こし、そこから逃げ出した。

周りから攻撃が飛んできてぼくに傷をつけていく。

でも止まらない、もう一度あいつに捕まったら今度こそ殺される。

ぼくはとにかく走り続けた。

走って走って走って走って走って走り続けた。

川を泳いだ気もするけどあまり覚えていない。

ぼくはいつのまにか気を失っていた。



目を覚ましたら周りは見たこともない様なデカイ木に囲まれていた。

食べ物も探せばいっぱいいた。

とにかくお腹が空いていたから片っ端から食べて行った。

腹も膨れて、傷もほぼ治ったところでようやくぼくは落ち着いて周りを確認できる様になっていた。

と言っても気づいたことは少ない、何かやばいやつがいるってことくらい。

ぼくはそいつの気配とは反対側に進んでいき、あの戦いのことを思い出していた。

なんでぼくたちは負けたのだろうか?

ぼくたちは本当はそこまで強くないのだろうか?

いいや殆どの弱っちいのよりはかなり強いはずだ

でも何人かはぼくとかなり近い位置にいる

そしてあいつはぼくより強かった。


「ぼくはどのくらい強いんだろ?」



そこでぼくは色々なやつと戦ってみることにした。

近くにいるやばいやつ以外の奴らに片っ端から喧嘩をふっかけていった。

結果は圧勝だった。

やっぱりぼくは強いんだ。

そう確信した。

そしてぼくより少しだけ小さい腕が四本ある奴には少し苦戦した。

あいつはぼくとある程度戦うとあっさりと逃げていった。一応標的の印はつけてるから、傷が癒えたらまた戦おう、そう思ってぼくは少しだけ休憩することにした。



目を覚ましたぼくはあいつがいるところに急いで向かった。予想以上に遠くまで行っていて驚いた。


「なにこれ!?」


あいつが居ると思う場所には濃いモヤモヤが発生していて、綺麗なヒラヒラがいっぱいいた。

でもその中からあいつの叫び声が聞こえる。

これはやばいやつだとなんとなく理解できた

それと同時に興味が出できた。

ぼくは気配を消して観察することにした。



モヤモヤとヒラヒラは少ししたら消えていき、中の様子がわかるようになっていった。

中では四本腕がボロボロになって倒れている。

なにをされたらあんな風になるんだろう?

あいつのそばにはちっこいやつらがいた。

さっきのはあいつらの仕業か?

どっちかか、それとも両方かもわからないけどあれは危険だ。

ぼくは奇襲でいっぺんに殺すことにした。

すると一体があいつに近づいてあいつを観察しだした。

そしてぼくがあいつにつけた印に気がついた。

ぼくはその瞬間つっ立っている方に飛びかかった、ぼくの感覚がこちらの方が弱いと言っている。

確実に殺せる方から殺す。

気づいたちっこい方もぼくに気がついて走り出してる。けど僕の方が速い 獲った!!




手応えがない

避けられた?

いきなりちっちゃい方が加速して大きい方の所まで飛んで回転する様に避けられた?と思う。

多分 あんまり自信がない。

でも避けられたなら体制を立て直さないと、でも予想外な事が起きた事で手間取ってしまう。

体制を立て直した時には大きい方はどこかに逃げていた。あいつらは集団で生きてるからそいつらの所に行ったんだろう。

大きい方を追いかけたいけど、ちっこい方が何かしたんだろう、綺麗なヒラヒラがまた増えてきて、モヤモヤも出てきた。

ヘンテコな土のやつや、黒と白のデカめのヒラヒラも増えてる。




???????

周りから音が聞こえない。

ぼくが纏ってる風に木々が揺れる音がしないなんておかしい

ちっこいやつや大きいやつの匂いも感じない

それになんかピリピリする。

やっぱりこの綺麗なヒラヒラとモヤモヤはやばい

纏う風を強めると少しだけマシになった。

このヒラヒラが近くにあると四本腕みたいになるんだとわかった。


「¥・々3々2¥:<kgni」%」+:g」


ちっこいやつが何かを言った途端に変な土の塊が暴れ出した。

ぼくは驚いて少し飛び退いてしまう。

またちっこいやつの方を見るともうそこにいなかった。

さっきまで感じていた微弱な気配も今ではなにも感じない。

やばいやばい

このヒラヒラを潰せばいいのか?

周りのヒラヒラを粗方潰してみたけどすぐに埋め尽くしてくる。

大きい方を追おうとしてもちっこいのが突然現れては

ちっこい割にかなり強い力で切りつけてくる。

土の変な奴が動きを邪魔してくるウザい!!

それにさっきまでなかった嘔吐感や不安感が急に出てきた。

これもあのちっこいのの仕業だな!

ぼくの力は治す力で防ぐ力じゃないからずっと使い続けないとちっこいのの思い通りになってしまう。

そういえばヒラヒラは風で簡単に飛んでいくくらいにもろい、なら!

少し貯めの時間を作って………。

ちっこいのがぼくのやろうとしてる事に気づいたんだと思う。

土の変な奴が集まって大きな岩になった

でも関係ないこのまま一気に解放!!!



ぼくの周りからヒラヒラとモヤモヤ、木々が吹き飛んでいった。

まだ少しヒラヒラが残ってるけどほんの少しだけだ。

感覚も通常の状態に戻った。嬉しい!!

臭いでちっこいのがいる場所もわかる、覚悟しろ!!

ちっこいのが隠れている岩にごとちっこいのを潰すつもりで前足を振るったけど流石に避けられた。

一緒に飛んでった岩石も綺麗に撃ち落とされていく。

ちっこいの意外とよく動けるんだぁ

あの戦いでもちっこいのほど綺麗に棒(ちっこいのが使ってるのは少しだけちっちゃい奴だけど)を使う奴は見たことない。

なんかちょっと楽しくなってきたかも



ぼくはヒラヒラがまた増えてきた事にすぐに気づきすぐさま攻撃を再開した。

危ない危ない。

たぶんこのちっこいのに時間を与えたらダメだ。

またさっきみたいにうまくいくとは限らないしね。



それにしてもちっこいの強い!!!

全然捕まえられない!!!!

ぼくに捕まらないようにしながら上手いこと切りつけてくる!!

あの戦いであいつらが使ってた棒より見るからに弱い棒なのになんであいつらのよりもよく切れるの?

それにぼくの纏ってる風でちっこいのは傷ができるてるはずなのに、傷ができたと思ったらすぐになくなってるしで、ずるい!!

目や鼻で捉えておかないとすぐにどこにいるかわからなくなるし、なんでちっこいのは気配がしないの!

それに時々視界が霞むに、ちっこいのが何人か別れたみたいに見える。

匂いも変な所から漂ってきたりする。


「もうなんなんだよ!!」


黒いのや白いの綺麗なヒラヒラ 土の変な奴もできるだけ巻き込みながら戦ってるのに全然なくならないし!

でも増えたら厄介だからめんどくさいけどこのまま巻き込んで戦わないといけないし!きつい!!

それにあの嘔吐感や不安感は相変わらずぼくを襲ってくるしで力を常に使ってないといけないのは変わらないよ!!



でもたぶんこの戦いは僕が勝てる

あの棒でぼくに着く傷はまぁ痛いけどすぐに治せるくらいの傷だし、たぶん黒いのがかけてくる変な攻撃も力を使い続ければまだ問題ない。

まだ力には少し余裕があるし大丈夫。

落ち着いて戦おう。



なんであんな棒でぼくの体を切れるのかなんとなくわかった。

仲間の中に牙や爪に何かして強くしていた奴がいた。

たぶんそれと同じことをちっこいのはしてるんだと思う。よく見たら仲間の牙や爪についていた光と同じようなのがあの棒についてる。(ちっこいのの方が綺麗で強いけど)

よかった。ちっこいのの棒があいつらが使ってるような棒だったら少し危なかったかもしれない。


ぼくは冷静にちっこいのを観察しながらどんどん攻めていった。


「(ちっこいのに勝ちたい!!!)」


ぼくの頭にあったのはそれだけだった

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