第12話あと少しだけ私の愛しい子
そして話は続きに戻り
「ええそうね、マーリンほどの年であそこまでの魔力コントロールができるなんて普通は考えられないわ。
あそこまでのコントロールをできる人なんてそうそういないでしょうし、正直わたしでは正確に実力を測ることはできていません。」
そういうとルートは更にやる気出し早速身体強化の練習を再開しようとしていた。
でもそんなルートにわたしは声をかける。
「ルートもう少し休んでいて、そしたらね…。」
わたしが言い切る前に家の扉が開き
「シェーラさん!わたしの身体強化の練習も見てもらいたいんですが大丈夫ですか!?」
そこにいたのはマエルだった。
とても優秀で優しい子。少し冷たく見えるところもあるけれどそれを含めて可愛らしい女の子。
大急ぎで来たのだろう息は乱れて、額には汗をかいている。
「ええ、いらっしゃいマエル。そろそろ来る頃だと思って待っていましたよ。
あといくら急いでいたとしてもノックなどは忘れてはいけませんよ。」
マエルはそう言われて確認をせずに家に上がり込んだでしまったことに気づいた様で
「ごめんなさいシェーラさん。慌てていてそんなことにも気づきませんでした。」
ショボーンと落ち込んでしまった。
マエルのそんな姿を見てしまうとわたしの方が悲しくなってくる。
「ふふそこまで気にしなくてもいいわ。次からは気をつけましょうね」
「はい」
とても可愛いらしい良い子ですね。
そんなやりとりを少ししてから
「さてマエルも来たことですし、再開しましょうか。
マエルは身体強化はどこまでできるかしら?」
「おばぁちゃんから教えてもらって十分くらい維持はできるようになってます。」
その時ルートが少し驚いた顔をしていました。
マエルもほんの少し誇らしげです。
きっとルートにバレない様にいっぱい練習をしたのでしょう。
そこら辺は年相応な行動でとても良いですね。
マーリンはあまり見せてくれませんから。
「ではルートと一緒のところですね。
次は動きながらの十分間維持というところですか。」
わたしがあえてなんでもない様に言ってみると
ルートは少し誇らしげになり
マエルはルートを見て、顔に少しだけ驚きの表情が出ていた。
本当に可愛い子たちです。
頭を撫でたくなってきますね。
ハグでも良いです。
「(ふふふふ、今日のマーリンはとても可愛らしかったですね。
マーリンももっとこーいう所をわたしに見せて欲しいです。)」
それでも今は教育者としてここにいますので我慢して話を進めます。
「ではまずは軽く走りながらの身体強化をしてみましょう。
強化が切れたらその場にとどまり息を整え、自身にまた身体強化をかけて再スタートすること。
庭を先に二十周した方が勝ちです。
わかりやすいでしょう?
では、はじめましょうか」
わたしの掛け声と同時に二人は自身に身体強化をかけて走り出した。
「……まだまだ二人ともかなりむらがありますが、それでも一応身体強化はできていますね。」
本当に優秀な子たちですね。
今日は教育施設に出勤する日でもないですから、この分なら今日の夕方にでもマーリンを加えて、集中と放出の授業をすることができそうです。
マーリンならきっと既にできてはいるでしょうが、ちゃんとした理屈はわかってなさそうですからね。
今日の予定を考えていたら、もうそろそろ二人とも一回目の身体強化が切れ始める頃ですね。
今のところマエルがリードしている感じです。
やはり今日できる様になったばかりのルートよりもマエルの方が身体強化に慣れていますね。
ちゃんとルールも守っている様ですし、昼食の準備でもしていましょうか。
さて昼食の準備はこれくらいでいいですね。
そろそろ二人がゴールするくらいでしょうし、タイミングとしてはいいくらいです。
次の練習内容を考えながら台所から庭に歩いて向かいます。
ちなみにわたしは魔力眼持ちで相手の体の中の魔力の流れまで見ることができます。
わたしは魔力眼との相性がいいですからそこまで見えますが、全ての魔力眼持ちができることではありませんよ。
庭に出て二人の魔力の流れを確認してみましょう。
二人ともかなりコツを掴んでいるみたいですね、だいぶ綺麗な流れになっていますね。
勝者はやはりマエルでした。
ルートもだいぶ差を縮めたようですがこれは仕方ありませんね。
「お疲れ様二人ともだいぶ魔力の流れが綺麗になっていますよ。
昼食まで後三十分ほどありますが練習を続けまか?」
「「やります!」」
「はい元気な返事ですね。では二人で組手をしてもらいますが、ここでルールを一つ作っておきます。
それはゆっくりとてもゆっくり動くことです。
理由は相手の行動を考えながらの身体強化維持する練習の為と、身体強化した状態で相手に与える影響に慣れるためです。
この練習はわたしか、エル、パームさん、シーカさんがいる時のみの練習とします。
私たちがいない時に身体強化を使って人と争うことは許しません。
わかりましたね?」
わたしの真剣な気持ちが伝わったのか、しっかりと了承してくました。
物分かりが早くてとても助かりますね。
二人は慣れてないこともあり、ぎこちなくではあるものの組手をやっています。
二人とも武術を嗜んでいるのでちゃんと組手になっていますね。
そろそろマエルの身体強化が切れそうですから、止めましょう。
「一旦二人ともやめてください。
深呼吸をしてもう一度自身に身体強化をかけ直してから再開してください」
二人ともしっかり指示にしたがってくれます。
この年くらいであれば少し聞き分けがないのも仕方のないものですが二人とも精神の成長が早いですね。
母親としてはもう少しゆっくり成長してほしいものですがこればかりは仕方ありません。
悪いことではありませんし、子供の成長は素直に喜ぶべきことですから。
マーリンは少しばかり早すぎますが。
お腹のこの子はどんな風に成長していくのかが今から楽しみになってきました。
早く会いたいです。
そんなことを考えながら二人の組手を見ていると
「ただいまー お昼ご飯まだ残ってる?」
マーリンが帰ってきました。
足元の方が上半身と比べると汚れていますから、追いかけっこでもしたのでしょう。
「今から食べるところですよ。ですがまずは手を洗って来ましょうね。
二人とも時間になりましたから昼食を食べましょう。
マエルも今日はパーム(マエルの祖父)さんとシーカ(マエルの祖母)さんは仕事で村を出ていますよね。
よかったら一緒に食べませんか?」
「はい是非ご一緒させてください。」
「では、ルートと一緒に体を簡単でいいので洗ってきてください。」
二人とも駆け足でマーリンを追いかけていきました。
微笑ましい光景です。
「わたしの方も早速昼食を作り上げていかなければいけませんね。
エルもマーリンかルートに呼びに行ってもらいましょう。仕事を始めるとやめませんからねエルは。」
「全員揃ったようですからいただきましょう」
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
お昼に家に帰るとまだ昼食は食べていないようで助かった。
マエルもいてルート兄さんと多分魔力コントロールの練習の一環の組手をしている。
僕が手を洗っているとルート兄さんとマエルも体を拭きに来たようだ。
「ルート兄さん、マエルお疲れ様。もう身体強化はマスターしたんだね」
ルート兄さんとマエルは不思議そうな顔をして
「だいぶコツは掴んできたよ。でもまだまだまだ慣れていかないとダメかな」
「そうよね、まだちゃんと実戦に使えるぐらいにはなっていないわ。
どうしてマーリンは私たちが身体強化をマスターしたと思ったの?」
「シェーラ母さんの顔がワクワクしてたからかな。
シェーラ母さんがあの顔をするなら多分次の段階に入る準備はできたってことだと思うよ。」
二人はまだ少し疑問があるみたいだったけど、僕はこのまま話を進めていく。
「ほら二人とも、まずはお昼ご飯を食べよう。きっとその時にシェーラ母さんの方から教えてくれると思うからね。じゃあ先にいってるよ。」
シェーラ母さんのところに行くとエル父さんを呼んでくるように頼まれたので、エル父さんの部屋に向かいお昼ご飯であることを伝えた。
エル父さんはそれなりの大きさのある机いっぱいにあった手紙を全て読みきったらしく、今は返事を書いているところだった。
エル父さんが手紙の返事を書くのはとても珍しい。
「エル父さん、もうお昼ご飯の時間だよ。」
「あぁわかったマーリン、今行くから一緒に行こう」
それから少しして手紙を片づけたエル父さんが部屋から出てきた。
「待たせたな、さぁ行こう」
「うん」
エル父さんは歩きながら僕に今日の予定を話していく
「今日の夕方は剣の練習は無しにする。あまり最初からやり過ぎるのは良くないからな。」
「そうだね、まだ腕や手は痛いし」
「悪かった、反省はしているんだ。身体強化をゆるく使い続けておけば筋肉痛や筋肉疲労がかなり早く回復する。試しにやっておくといい」
「了解、やってみるよ」
台所ではまだシェーラ母さんが昼食を作っており、
何か手伝おうかと思ったがエル父さんだけ呼ばれ、僕は机で待っているように言われた。まぁまだ三歳児だからね色々不安なんだと思う。
二人の慣れた共同作業を見ながら本当に仲がいいなーとか考えているとルート兄さんとマエルが戻ってきた。
二人が席に座るのと同じくらいに昼食も完成したようで、台所からシェーラ母さんが話しかけてくる。
今日も美味しそうだった。
今日の会話にはマエルもいるからヒューマン三大国家の言語しか使われることはないだろう。
いつもよりも気が楽な時間になりそうだね。
そんなことを考えていた時にシェーラ母さんが僕たちに話しかけてきた。
「今日は教育施設もお休みだから、昼食を食べ終わったらルート、マーリン、マエル三人で魔術と魔法の練習をします。」
一瞬シェーラ母さんが何を言ったかわからなかった。
あれ?魔法と魔術が一緒に存在してるの?魔法だけじゃなかったんだこの世界。
神くんはなんて言ってたかな?あんまり覚えてないや
でも七歳からじゃなかったっけ習うのは?
ルート兄さんとマエルは六歳だから誤差みたいなものだけど僕は三歳だよ?
多分三人ともが同じような顔をしていたのだろう
シェーラ母さんは僕たちのその反応に楽しそうな顔で見つめながら
「練習といっても基本の部分をやっていきます。
本来は七歳くらいを予定していましたが、その必要はなくなりました。
三人とも私たちが七歳くらいに前段階が完成するとした予想を見事に裏切ってくれましたからね。」
前段階というのは多分身体強化の為ことだろうなとすぐに察しがついた。
やっぱりルート兄さんとマエルは身体強化をものにしてたんだなーと思っていると
「その時にマーリンにも説明を手伝ってもらうつもりでなのですが大丈夫ですか?」
予想もしていない言葉ではあったけどすぐにシェーラ母さんなりの気遣いだと気づいて了承した
それからはシェーラ母さんがルート兄さんとマエルに改善点と良かった点を話したりと色々な事を話した。三ヶ国語だけなのでみんな話がしやすいんだろうね。
でもルート兄さんとマエル、あと僕もこの後の練習が楽しみすぎてそわそわしている。
その様子が面白かったのかシェーラ母さんはひどくご機嫌でエル父さんも少し口が笑っていた。
仕方ないんだ。だって僕は三歳児、感情が表に出てしまう年頃なんだから。
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