第10話僕はこの家族が好きだ
体の汗を拭き終わった僕たち男三人組は、ようやく家の中に入ることができた。
数時間ぶりなのにひどく懐かしく感じるのは、この世界に馴染んできた証拠だろうか?
家には朝ごはんを用意して待っているシェーラ母さんが、僕たちを優しく微笑んで迎え入れてくれた。
「$%〆^: <・^:+〆 +・々3〆| #*〆\×=・」
なんと言ってるかは聞き取れないけど、多分「おかえりなさい お疲れ様 ご飯ができてますよ いただきましょう 」と言っているのだと思う
エル父さんは
「÷」<¥=シェーラ |」*\÷^*」
多分「 ただいま シェーラ ありがとう」 と言ってると思う。ニュアンスでなんとなく判断
ルート兄さんは
「+」<¥=シェーラ÷*<|」*\÷^*」
と少し発音に気をつけながら答えている
意味は同じだと思う。
ルート兄さんは勉強熱心ですごいスピードで言葉を覚えていく。
僕もスキルフル活用で頑張ってはいるけど今回は全然わからないし話せない。
僕が覚えたがどうかを基準にしてどんどん新しい言語のバリエーションが増えていくので常は会話には頭を使う。
これまでにもう四カ国語は話せるようになったけど、まだまだ覚える言語があり嫌になってくる。
今回はどうすることもできそうにないので僕は諦めて
「おはようシェーラ母さん 今日も美味しそうだね」
とこの国の主要言語で挨拶をした。
そしたらシェーラ母さんもこの国の主要言語で
「お疲れ様マーリン、初めての剣の練習は疲れたでしょう。今日も腕によりをかけて作ったからいっぱい食べてね。」
と北領同盟王国の言語で返してくれる。
一応話された言語で言葉を返すのが原則だけど、わからない場合は素直に話せる言語で言葉を返すことになっている。
言葉を返す事を第一にしているって事だ。
じゃないと家族間の会話がなくなるからね。
とは言っても一人だけちゃんと言葉を返せないのは少し恥ずかしいものがある。
そんな僕をシェーラ母さんは優しく慰めるようにして頭を撫でてくれるし、エル父さんもルート兄さんも嫌味なことは絶対に言ってこない。
こんな家族の事を好きにならない人はいないだろう。
改めて家族の素晴らしさを感じていると、シェーラお母さんは自分のお腹を撫でながら
「ルートもマーリンがここにいるくらいの時はね、マーリンよりちょっと少ないかくらいの言葉しか覚えていなかったわ。でもマーリンが生まれてからはすごく勉強するようになってたくさん話せるようになったのよ」
ふふふ、とルート兄さんと僕を見ながら教えてくれた
ルート兄さんは恥ずかしそうにしながら
「164943 64943191 シェーラ6164 6163498291」
僕がまだわからない言語でシェーラ母さんに何かを言っている。
シェーラ母さんは、はぐらかすように
「6461853585181 ルート 64926631 91857741」
と言った。
ルート兄さんは諦めた様子で
「ほらマーリン、早く朝ごはんを食べよう。冷めちゃうよ」
と現エルフ語で話しかけてくる。
現エルフ語は二番目に覚えた言語なので理解できるし話せる
「うん。わかったよルート兄さん」
今日の朝ごはんも美味しかった。
シェーラ母さんのお腹には新しい弟妹がいる。
まぁ当然と言ったら当然ではあるんだけどね、毎晩仲良くしてたらそりゃできるはずだよ。
朝ごはんの後シェーラ母さんに呼び止められて
「マーリン 少し 待って 」
これは現ドワーフ語かな
「わかった どうしたの」
(現ドワーフ語は完璧には覚えれてないんだよね)
そういうとシェーラ母さんは僕の手を両手で覆うようにしてから、いきなり魔力を僕に流してきた。
僕は自分の意思にかかわらず増大した魔力循環量を整えようとして、魂から魔力を少しずつ魔力回路に流していき循環量を制御していく。
僕が制御し終わるを最後まで見ていたシェーラ母さんは
「すごく綺麗な魔力コントロールよ、マーリンすごいわ」(ゲオルグ正教法皇国の言語でこの言語は三番目)
と子供の成長を純粋に喜ぶようにシェーラ母さんは僕を褒めてくれた。
そしてシェーラ母さんはいたずらが成功した子供の様な表情で会話を続ける
「エルにマーリンが身体強化を使ってるかもしれないと聞かされて、どうしても気になって試してみたんです。
魔力コントロールが完璧な人ほど、他の人から身体強化をされると驚いてしまうものなのなんですよ。そして無意識に自分で少しずつ身体強化をして、安定させようと行動してしまうの。
これを応用して身体強化を教えることもできるから覚えておいて損なことはないですよマーリン」
(これは中天帝国の言語で四番目の言語だ。ヒューマ
ン最大三ヶ国の最期の一角である。僕の生まれた国の北領同盟王国、ゲオルグ正教法皇国、中天帝国が三大国家だ)
「見事に引っかかったよシェーラ母さん、こんな方法でバレるとは考えてなかったよ」
僕は観念して素直にそう答えた
「責めて ないわ ただ たしかめたかった だけ
そして 頑張った のね マーリン。
こんな に 綺麗に コントロール するの は とても
たくさん 練習 が 必要 に なる もの」
(旧エルフ語で 単語しかまだ理解できない)
そういうとシェーラ母さんは僕を抱きしめていっぱい褒めて撫でてくれた。
シェーラ母さんはあの白い空間でのことを知らないけど僕はシェーラ母さんにあの時間を認めてもらえた様に感じたし、過去の自分が認められた事が嬉しくてかってに涙が出てきてしまう。
シェーラ母さんは涙の理由を聞かないで僕が泣き止むまでそのままでいてくれた。
最近気がついたことだけど、若干僕の精神年齢が下がっているようだ。
流石に元の精神年齢なら母親の前で泣いたりはしない。
僕は泣き止んでからシェーラ母さんに謝ろうとすると、
シェーラ母さんは人差し指で僕の口を塞ぎ、
「わたしは純粋にあなたの成長を喜ぶだけですけどねマーリン。エルは違う意味で喜ぶと思いますよ。
わたしが見たところマーリン、あなたの魔力コントロールは完璧です。
魔力生産量と最大蓄積量まではわからないけれど、コントロールさえできていれば限界まで身体強化を使わせても魔力回路が破れる心配はありません。
つまり今日の夕方からの剣の練習がよりきついものになると思うから頑張ってくださいね」(北領同盟王国)
冗談のように、話をはぐらかすように聖母の微笑みで語るシェーラ母さんの言葉はひどく残酷な言葉だった
「冗談だよねシェーラ母さん?」
一縷の希望を持ってそう聞き返すしてみると
「ふふ頑張ってねマーリン、もうすぐこの子のお兄さんになるのですからね。
苦労することもあると思います。泣きたくなったらまた抱きしめてあげますから。」(ゲオルグ正教法皇国)
「ははは、頑張るよ」
僕は乾いた笑みでそうとしか答えられなかった。
朝ごはんを食べてからは昼食まで自由な時間になっている。
その日によってやることはバラバラで、森に入ってルート兄さんと山菜取りをしたり、家でシェーラ母さんの家事を手伝ったり。
ルート兄さんと本を読んだりもする。
エルお父さんはほぼ毎日届く大量の手紙に目を通す作業をこの時間に毎日やっている
手紙といっても返事を書いたりすることはなく、本当に読むだけだ。
本当に何者なんだろうか?
今日はルート兄さんと遊ぼうと思っていたんだけど、そのルート兄さんはシェーラ母さんと何かを話した後すぐに魔力コントロールの練習を始めた。
すごい集中力で話しかけることが出来なかったよ。
シェーラ母さんに何を話したのか聞いたら
「ふふふルートはね、まだマーリンに追い掛けてもらえるお兄ちゃんでいたいのよ」(現エルフ語)
きっと僕の身体強化のことを話したんだと思う。
シェーラ母さんから言いに行くとは考えにくい。エル父さんには報告するだろうけど、基本シェーラ母さんは個人を大切にしてくれる人だからね。
ルート兄さんはきっと朝の僕とエル父さん、シェーラ母さんとのやりとりを見ていたんだと思う。
ルート兄さんはよく周りを見ているから、そこから推察したんだろうね。
僕がルート兄さんの方見ているとシェーラ母さんは、僕の頭を撫でながら
「心配 は いらないわ。 ルートは 自分 が マーリンより 優れている と は 思ってないの。
でも 卑屈 に なったり も してないわ。
ちゃんと 自分自身 の 頑張り も 認める 事が できているの よ。
ただ もう少し の 間 マーリンに 追い掛けられる お兄さん で ありたいのよ。」(魔人語、聞き取りはかなりできるが、ほとんど喋れない)
本当にシェーラ母さんは聖母様みたいだなと思う。
視野が広くて人の感情の機微にも敏感、話すべきこと、べきてないことの判断もすごくうまい。
そんな風に考えてることが顔に出ていたのか、シェーラ母さんに少し笑われた。
そんなやりとりの後、結局僕は一人で遊ぶことにした。
シェーラ母さんからは一人の時は森に入ったらダメと言われているので、適当に村を回るだけの散歩をするだけだけどね。
「そういえば村を一人で歩くのって初めてだ」
いつもルート兄さんやシェーラ母さんと一緒なので一人で家の外を歩くのはこれが初めてだ。
探検してるみたいで少しだけ楽しい。
ゆっくり村を見て回るように散歩を続けていくと、途中で村の人たちから声をかけられて、少しだけ話すことが数回あったものの順調に見て回れている。
「(ちなみにシェーラ母さんは優しく美人の教育者として老若男女問わず大人気。
エル父さんは子供から少し怖がられることもあるが大人からはかなり慕われていて、男衆から愛妻ぶりをからかわれている姿をよく見る。
ルート兄さんは知的さと子供特有の愛らしさ、シェーラ母さんによく似た柔和な表情で女性陣から大人気。
僕はよく女の子によく間違われる。ガキンチョ連中にそれでよくからかわれてる)」
最後に村の中心にある広場に行ってみたんだけど、そこで出来れば会いたくない奴と会ってしまった。
「あっマーリンちゃんじゃん!今日は一人なのか?」
広場ではガキンチョ連中が仲良く遊んでいた。
そのガキンチョのドン、キコリの大将のドラ息子トムが早速僕を見つけて話しかけてくる。
ちゃん呼びにそこまでの悪意は感じないのでわざわざ訂正させることはしないけど、少しだけイラっとしてしまう。
ちなみにトムは七歳であり、村の十一歳以下の子供のヒエラルキーで上から数えて六番目。
〜村の子供間でのヒエラルキー7位までを紹介〜
一番目は村の自警団(数人規模、エル父さんは非常勤)団長の息子ボヘム、今年十一歳 子供ながらに剣の腕はなかなからしい
二番目は酒場の看板娘サーレ、今年九歳 村の男連中のアイドル、彼女が泣いたらそいつらが怖い
三番目にルート兄さん、今年で六歳 剣の腕と頭の良さついでに顔の良さもダントツ。本人の性格でこの位置にいる
四番目がうちの隣の家の長女マエル、今年六歳。村の教育施設でルート兄さんと唯一勝負できるくらい頭が良い。僕は歴史と地理でコテンパンにされる。
五番目は鍛冶屋の息子ゲン 今年ハ歳 寡黙な男の子 でも密かに子供間では一目置かれてる
六番目が木こりの大将の息子トム 今年七歳 お調子者
七番目に僕ことマーリン 今年三歳 ルールを決めて遊ぶ時に、よく助言をしたため三歳ながらの七番目
「みんなで鬼ごっこやってんだよ!
マーリンもうやろうぜ。んでちょっとルール考えてくれ!
ルールが公平じゃねーってうるさくてよー!」
そうトムはこちらに向かって叫んでくる。
あいつは一度巻き込むと決めたらしつこいから逃げられないと諦めた。
それに昼食までいい暇つぶしと思う事にすればそんなに悪く無い。
そんな感じぇ僕は頷いてガキンチョたちの方に歩いていく。
メンバーはトム、マエル 、僕 その他諸々、男女比率は同じくらい
年齢はバラバラ、下は三歳上は八歳の合計人数十人。
「(さてどんなルールを作ればいいかな)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます