第7話わしがこの世界の神じゃよ

神くんと別れを済ませると僕は違う空間にいた。

二人でいた時間はかなり少ないけど神くんとの時間は楽しく、こうして別れを済ましてしまうと少し寂しい 。


移動した空間というか部屋は全体的にクラシック調でまとめられ、執務室兼書庫のようだった。

部屋の両横に本棚が並べられており、中には本やファイルがぎっしりと詰め込まれている。

部屋の奥には大きな机、その上にはいくつかの書類の山々。その前にソファーと小さな机が置かれていた。



「来て早々に悪いんじゃがの、

おぬしから見て右の壁方向に本棚が並べてあるじゃろ?

右端から数えて三番目の本棚で、上から二段目にある背表紙が灰色の分厚めの本をわしのところにもってきてくれんかの〜?」


奥の机で忙しなく手と頭を動かして働いている少女?が僕にそう話しかけてきた。

多分こちらの世界の神様なんだろうな思う。ちっこいし、見た目もかなり整ってる。神くんに勝とも当たらない感じだ。

それに神くんと何か同じようなものも感じる



それとそのお願いを僕は特に断る理由もないので素直に従うことにした。

神くんにも素直に聞く様に言われたしね。


「いいよ、他に何かあるなら一緒にもっていくよ?」


少女は手を休めることなく


「うーむそうじゃの〜〜。

確か同じ本棚の五段目か六段目かに星空が装飾されているファイルがあったと思うんじゃ。それもあったらで構わぬから一緒にもってきてくれぬかの?」


僕は灰色の本(かなり重い)を取り出して、目線を下げてファイルを探した。


「あ〜あったよ。じゃあ持っていくね」


僕はそのファイルをとって少女の下に向かった。



少女は書類を書く手を休めずに僕の方を少し見て


「うむ、礼を言うぞ。あやつの友達、魔理よ。

そなたのことはあやつから手紙で聞いておる。

随分と面白い奴だとな。

もう少しで一区切りつくのでな、すまんが机の空いてるスペースに本とファイル置いてくれぬか?そしたらソファーでくつろいで待っておいて欲しいのじゃ」


僕は言われた通りに本とファイルをを机に起き、ソファーに体を預けた。

かなりシックな感じのソファーで座り心地が非常にいい


「(…部屋に入った時も感じたけどこの部屋にあるのは全部真新しいものばかりだな)」


少女の呟く声と書類をめくる音、ペンの文字を書く音を聞きながらそんな事を考えていた。



数分後


「こんなもんでいいかの、すまんな魔理よ、待たせたの。

転生の手続きをするからこっちに来てくれんかのう」


少女は書類を整理しながら僕に話しかけてきた


「お疲れ様です神様。神様は神くんと仲が良いの?聞いた感じ連絡は頻繁にしているみたいだけど。」


少女はキョトンとしたように首を少し傾げて


「あやつとは仕事柄よく会うのでなそれなりに連絡を取る仲じゃよ。

あとわしのことも好きに呼ぶが良いぞ。呼ばれ方にそこまでこだわりはないのでな。

そう何度も神様と連呼されるのは少しこそばゆい」


神様(幼女様でいっか)は引き出しから.机の上にあるインクとは別のインクを取り出しながらそう言ってくる。


「そんなんだね、じゃあ幼女様って呼ぼうかな」


それを聞いた幼女様はインクの蓋を取る手を滑らしインクをこぼしそうになっていた。

神くんと同じで反応が面白いな。

どうにかインクをこぼさずに済んだ幼女様は床に落ちたインクの蓋を優雅に拾い上げ、広い机にインクと共に置いてから


「な なんじゃその呼び方は!?

他にも色々あるじゃろうが!!!

あやつと同じように神様ちゃんとか神ちゃんとかでよくないかの!!?

しかも少女から幼女にランクダウンしとるし!!!

幼女様とか、わしが残念な子みたいに聞こえるではないか!!!」


はぁはぁと息を吐きながら、僕を見て一気にまくしたてるようにそう言い切った。


「はははやっぱりダメだったか、考え直した方がいいかな?」


幼女様はむ〜〜うといった顔をして


「ま まぁよいわいそれで、好きに呼べといったのはわしじゃからの。

本当にあやつが書いていた通りの男のようじゃの魔理、おぬし」


そう言うと幼女様はまた手を動かし始めた。


「そういえばこの部屋にある物って最近買い揃えたの幼女様?」


幼女様は呼ばれ方に少し反応したものの取り乱すことなく書類を選別しながら


「そうじゃ、前置いてあったものは全部消し飛んでしまっての仕方なく用意し直したんじゃよ。

書類関係も全部一緒に消えてしまっての〜

今こうして必死に仕事をしてると言うわけじゃ」


幼女様は本と一緒に持ってきたファイルを手に取り選別した書類を閉じていく。


「消し飛んだって何か災害でも突然発生したの?」


幼女様は閉じ終わったファイルを端に寄せ、本の方を手に取りながら


「まぁそのようなところじゃよ。

あれは人災じゃがな、全く規格外な奴じゃったよ。

⦅ジョブ》を与える時には基本、書類に魔術をかけてわしは何もしないんじゃがな、その時はたまたまわし自身が対応してのう。

ちょこちょこ会話を挟みながらやっていた訳じゃよ。

そやつはそれでわしと言う存在を認識特定してこの空間に飛んできたんじゃ。

今でも信じられんわ。普通ありえんからのそんな事は」


幼女様は本をペラペラめくり白紙の頁を開き


「それからいきなり戦いを仕掛けてきての、たまたま仕事でここにいたあやつ(神くん)と一緒に迎え撃ってどうにか追い払ったんじゃがな。

奴はわしともう一人神がいることに驚くどころか喜びよったんじゃ!「面白い!!」っと。

絶対奴は頭がいかれとるぞ!

神に戦いふっかけるのもそうじゃし、二柱同時に相手どることに躊躇せんのもおかしい!!

まぁそれで部屋が消し飛んでの、新しく用意し直す羽目になったと言うわけじゃよ。

とんだ災難じゃ!」


「あぁだからか、それでようやくわかった気がするよ」


幼女様は感心して納得したような顔をして


「ほ〜〜、気づいていたこともそうじゃが。

聞いたりもせず、言葉にもしないとは高評価じゃの。

あやつと友になれるわけじゃ」


と言ってきた。その時の幼女様の笑顔は年上の女性が年下の人に笑いかける時の笑顔に見える。

そして幼女様は何かを白紙に書き込んでから話を再開した。


「ではそろそろおぬしの転生に向けていろいろやっていこうかの。

これからいくつか質問するのでな、答えていってもらうぞ。

準備は良いかの?」


幼女様は真面目な顔で僕に聞いてきた


「準備オッケーだよ」

「よい返事じゃ」



「転生するのはなんの種族が良い?

人種とわしらが区別するのはヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人 魚人(人魚はここに分類される)魔人(魔族)

まぁそのた諸々じゃの。じゃが今世界に一定数いる人種はこんなところじゃよ。たまに吸血鬼やハーピィー

妖精、竜種とかに転生したがるものがあるがな、あまりオススメせんよ。種族としての本能が強すぎて人格が維持できんからの。妖精は自然の一部みたいなもんじゃからな。感情を持っている者はかなりおるが、その感情もたかが知れとる。」

「人種なら何でもいいよ、都合がいい種族にして。」


幼女様はふむふむと可愛らしい仕草で本に記入していく。



「人種なら性別は男か女じゃな」

「できれば男かな最悪女でもいいけど」

「おぬしカマが入っとるのか?」

「入ってないからね。神くんには冗談でも言ったらダメだよ。絶対信じちゃうから」

「それはそれで面白そうじゃがな」


「転生するにあたってなりたい身分はあるかの?

王族、貴族 平民 奴隷 、大国 小国とかも聞くぞ」

「身分は飢えずにある程度自由があるのがいいな。

国の大きさはなんでもいいよ」


「容姿についてはどうする?なるべくそうなる確率が高い親元を探すが?」

「こっちの平均ちょい上ぐらいならどんなでもいいよ」

「平均以上は求めるのじゃな」

「容姿が良くて困る事はないからね」


「住む地域の自然環境は希望はあるかの?」

「極端な環境じゃなければ大丈夫」

「四季は日本ほどはっきりしてなくても良いかの?」

「問題ないよ」


「親の性格については要望はあるかの?」

「親同士の仲が良い方がいいな」

「ほーそれは変わった要望じゃの。こーゆうのは自分のことを大抵の者は言うもんじゃが」

「親の喧嘩や離婚騒ぎはめんどくさいからね」


「兄妹の有無はどうするかの?」

「上に兄が欲しいかな、僕は家を出たいし」

「親不孝者じゃなおぬし」

「それはひどい言いがかりだよ幼女様」


「近くの家に綺麗な幼馴染はほしいかの?」

「いやそこまで気にしないでよ、それって今までの転生者たちが頼んだこと?」


幼女様は疲れ切った顔をして


「そうじゃ、これをすべての転生者に確認しとる。

新しく要望されたものもその都度項目に加えていき、それ以降聞いていかねばならんことになっとる。

だから須佐之男命のアホにも酒の席のことじゃから、気にするなとあれ程言っておいたのに。

あのアホは頑固じゃからの律儀に前準備までして送ってきおったわ大量にの。」



幼女様はペンをインク壺に入れてから、どこか遠くを見らようにして


「わかるか魔理、戦闘狂に部屋を壊され、やっとの思いで部屋を作り直しては、溜まりに溜まった仕事と格闘して心身共に参っているというのに次々くる転生者。

あーだこーだこれも大事だ それこれが足りない!とちまちまちまちまゆってくる転生者たち、何度吹き飛ばしてやろうかと思ったかわからんぞ!」


どうやら僕の同郷の人たちがかなり迷惑をかけたみたいだ


「それは大変だったね、お疲れ様。」 


なでなで

思わず頭を机につけて唸っている幼女様をなでなでしてしまった。

ちょうど腕を伸ばしきったところに頭があるから触ってみたくなったんだ。

髪の毛サラサラでめっちゃ撫で心地が良い、ずっと撫でてたいくらい気持ちいい。

元の世界でやったら完全捕まる事をやっちゃっているよ僕 と他人事のように感じていた。

幼女様は即座に体を起こして


「何やっとんじゃおぬしは阿保な子か!?

普通神様の頭を撫でるとかせんじゃろう!

こーなんか不敬とか思うもんじゃろが!!!

そのうち祟りがくるぞ!不用意にこんな事しまくっとたら!」

「いやいや見損なってもらったらダメだよ幼女様。

僕だってやって良いことと悪いことぐらいは区別がつくよ。

ただ僕の意思に体が従わなかっただけなんだ。

だからこれは事故みたいなものだよ」



僕は一生懸命事故である事を主張したけど幼女様は


「それならなおの事たちが悪いわいドアホ!

大体おぬしはわしら神を甘く見過ぎなんじゃ!

普通おぬしみたいな事をすれば魂消されるぞ。

わしはあやつからくれぐれもよろしくと言われとるから何もせんがの。

まだ少しだけ時間がある事じゃし、

特別にこのわし自らが本来の人と神の関係について教えてやるゆえ感謝せい!!

わかったか!?」


僕は前にもこんなことあったなーと思いながら

素早くハッキリと元気に返事をした。


「わかりました!!」


僕は成長できる人なんだよ



幼女様は最初は人と神について真面目に話していたけど僕が相槌を打つようにして会話をしていくと次第に愚痴の割合が多くなり、最終的にお疲れ様会のような感じになった。



幼女様は表情をコロコロと変えて大変可愛らしかった

黙っている時は静かで儚げな雰囲気がよく似合う、賢い美少女(幼女様と呼ぶのはこの方が反応がいいから)だが笑った顔は可愛らしいという感じになる

そのジャップがまた良い


「まぁおぬしも大変じゃったのじゃな

これまでのことは特別に不問とするからの

次から気をつけい」


「よっちゃん(幼女様)も同郷の人たちが迷惑かけたみたいでごめんね。色々と大変だったと思うけどよく頑張ったね

これからも迷惑かけるかもしれないけどよろしくね」


よしよしとよっちゃんの頭を撫でながら僕はそう言った。

なんだかんだと許された、 というよりごり押しした

よっちゃんは開き直ったのか胸を張るようにして


「うむ、仕方がないやつじゃの魔理は!!

安心せいわしがしっかりとフォローしてやるからの!

教会や霊験灼然な場所に来たら祈ってみるが良いぞ、タイミングが良ければ話しをしてやるからの!!」


この僕の友達ちょろかわいい

こんなで神様として大丈夫なのか少し心配にもなるが

大丈夫なんだろう、神くんもこんなだし




よっちゃんは話が終わると仕事モードに早変わりして


「おぬしが転生する場所は決まったぞ。

わし的にはかなり良い物件じゃ、気にいると思うぞ

他の奴らと比べたらちょー楽チンじゃったからのその礼みたいなもんじゃわ

ほんとあやつら頭おかしいぞ。

わしの世界をゲームの世界かなんかと勘違いしとるとしか思えん。

女子連中も乙女ゲーとかいう物の設定を細かくわしに言って探させるんじゃ。あるわけなかろうそんなもん。

記憶を残さない選択をした者らの方が数倍良いは、殆どの者らがわしに礼の一言もいいよった。

あーゆう者らこそ記憶保持を選んでほしかったものじゃ。」


「記憶を消す選択をした人たちにも会ったの?」

「一応流れてきた魂はそこの神が最終確認をすることになっとるからの」


僕が納得した様に頷いていると


「おぬしと話すと話が逸れるのまったく、困ったやつじゃ。

もうそろそろ時間が危ういのでな転生させるぞ」


よっちゃんは色々と記入していた頁に手を置いて、一言呟き青色の炎で出来た紙を抜き取るようにして取り出した。

それを僕に向かって放り


「それはそなたを要望どおりの転生先に導く羅針盤のようなものじゃ、しっかり握っておくのじゃぞ。

心配せんでも熱くはないからの。」

「了解、しっかり持ってるよ。」


よっちゃんは満足そうに頷いてから


「ではの魔理、すぐに会うことになるじゃろうからの!

それまでしばしの別れじゃ!

おぬし以外の殆どの転生者とは会いたくないがの!」

「ははははまぁ頑張ってね、また会った時に話を聞くよ!じゃあね」


そしてようやく僕の新しい人生が始まった

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