第3話遊ぶ時間じゃないからね
神様君は僕の視線を躱してから一回深呼吸をして、気持ちを整えて話し始める。
「どっちにするか決めた人はぼくの前に来てね。
ぼくの前に来て心の中で言ってくれたらいいからさ。
いくらでも悩んでいいからみんなよく考えてね。」
と言った後に先生がよくやるよる様な人差し指を立てるポーズをして
「友達とか知り合いと一緒にしようとか、意見を聞こうとかしたらダメだよ。あっちでも一緒に居られるわけでもないし、こういうことは一人で決めた方が後悔することも少なく済むからね」
神様君が言い終わると同時に数人の男女が神様君の前に移動した
「……神様君が話している間に決めてたんだろうね、僕ももう決めてるけど最後までいることにしようかな」
神様君はその人達た短く話してから、数人の男女に手を向ける。そしてこの白い空間から数人が消えた。
「さっきの人たちは今ここにはいないけどまだ転生はしてないよ。記憶を消した魂はすでにあっちの世界に送って、記憶を残す魂は違う場所にいって貰っているんだ」
どちらを選んだかは僕たちにはわからないけど、確実にここに残っている僕たちの間に流れる空気が変わった。
こんな異常な状況で自分は出遅れていたんだから、焦りを感じるのは仕方ないだろう。
神様君はそんな僕たちの空気の変化を敏感に感じ取り、優しくフォローを入れる
「焦ってしまう気持ちはわかるけど、急ぐ必要はないよ。先に言ってなかったぼくが悪いんだけどね、ここはぼくが管理している空間だからある程度の時間なら誤差みたいなものなんだ。
だからさっきの人たちを待たせちゃうとかは考えなくて大丈夫だからね」
そして神様君はチラッとこっちを見てから
「あと心が決まったらもう迷わないことだよ。
正解なんかないんだからさ。決めたあとに迷ってしまいそうだと思うんだったら、ぼくのところに来てしまうのも悪くないで手だと思うよ」
かなり露骨に遊んでないで早く来いアピールしてくる
「多分僕に言ったんだろうな」
ちょっと実験してみようと思った。
やることもないし、何かの役に立つかもしれないからね。心の中で大きく声を出すイメージで
「確かにそうかもしれないな~~
長くここにいてもやることもないしな~~」
チラッと神様君の反応を見る
目を瞑って訳知り顔でうんうんと頷いていた。
反応をしっかりしてくれるからすごくわかりやすい。
次は小さな声で言うイメージで
「面白いな神様君」
と言えば、よく聞こえないと言う顔でこちらに耳を傾けている神様君。
「なるほど心の声も音量調整はできるみたいだね。
一対一なら聞こえるだろうけど、周りにいっぱい人がいらから、その人たちの声も聞こえてるんだろうな。それを踏まえると聞く対象は無差別ぽいね。」
まだ神様君は真剣に声を聴き分けようと頑張っているけど、その姿は見るともっといじめたくなる
「やばいかも、ちょっと変な扉が開きそう」
一旦落ち着くために周りを見てみる。
ほとんどの人が真剣に考えてる最中、何人かはどうするかを決めたみたいで立ち上がろうとしていた。神様君は未だに目を瞑って耳をすませている。
からかいたくなって少し話すことにした。
「見た目が少年にしか見えないけど、ちゃんと説明もしてくれるし、やっぱり神様君は立派な神様なんだね。
神様君が僕たちの担当の神様でよかったな~」
神様君はやっと聞こえた俺の声に反応してすぐに聞く姿勢になった。あれでバレてないつもりなんだろうなと思うとなんだかホッコリする。
「須佐之男命様と比較すると神様君の偉大さがすごくよくわかるね。神様君は自分よりも偉大な神様だと言っていたけど、僕からしたら神様君の方が偉大な神様だよ」
神様君はそれを聞くとすぐに表情がわかりやいくらいに変わった。表情筋がビクビクしてるから我慢してるつもりなんだろうけど、口角が上がり、体をえっへんと言う風にそらしている。本当に可愛いね。
そして神様君の前まですでに来ている男女には気づいてないみたいだ。
「ぷふふ…クフフ」
心の声が大きくならないようにするが本当に大変だ。
「あっあのー今大丈夫ですか?」
女子生徒が神様君におずおずと声をかけた。
そうなってしまうのも仕方がないと思う。今の神様君はかなり変だから。
神様君は本当に気づいてなかったようで体が"ビクッ"ってなっていたしね。
その後に急いで姿勢と表情を整える神様君を見て、僕は堪え切れなくなり
「はははっははははハハハハハハハハハハハハハハ
…はぁはぁはははっあははははあははははは」
思いっきり心の中で笑ってしまった。
実際に声を出さないように口を両手で押さえて、体を丸めるようにして耐える。
チラリと神様君を見るとどうにか恥ずかしさを顔には出さずに神様らしく対応していたが、耳を真っ赤にしていた。
また笑いがこみ上げて来たので堪えることに集中する。
どうにか気持ちを落ち着けてから神様君の方を見た時にはもう先ほどの男女数人は姿を消して、新しく数人が神様君の前にいる。
周りで悩んでいる人がもうかなり少なくなってきてるし、あと十数分で終わるだろう。
それと同時にもっと気合を入れて神様君をからかう事を決めた。僕の勘が今のうちにやりまくれと訴えてくるので素直に従うことにする。
「神様君~~顔がまだ少しニヤついたままだよー」
とかなり大きく心の中で叫んでみる。
すると神様君は一瞬驚いたあとにすぐ両手でで自分の頬を触り確かめた。
そのあとすぐに目の前に人がいる事を思い出したのか
「ごめんね、ちょっと口に何かついてるような感覚がしてさ、じゃああっちに送るね!」
と少し早口で言い切り男女数人を違う空間に送った。
そのあと神様君は僕の方を少し怒った風に見てくる。
「ごめんごめん、許して。
悪気はないんだよ、今の僕を動かしているのは好奇心だけだからね。それにニヤついてはなかったけど、耳は真っ赤だったよ というか今も赤いよ」
神様君は何かを言い返したくて仕方がないような顔だけど、まだ悩んでいる数人の邪魔はしたくないみたいで我慢しているようだ。うん優しい。
そのあとに何度も心の中でで話しかけたけど反応してくれなくなった。
でも表情が少しだけ動いていることから僕の声は聞こえていると思うので、めげず話しかけ続ける。
そんな事を十数分間続けたくらいで僕以外の人がこの場から姿を消した。
それと同時に神様君はさっきまでの神様然とした表情が崩れて、今はただの中学生のような雰囲気になり怒った表情をしている。
そして"ズカズカ"と効果音が付いてきそうな足取りで僕の方に歩いて来た。
僕の目の前にきた神様君は僕に
「正座だよ」
と言った。
僕は何となくわかってはいるけど首を傾げて、?という表情をすることにする。
「正座だよ、飛紙 魔理君」
神様君はまさに怒っていますという表情をしていたね。
"プンプン"と効果音が出そうだなと考えつつ、これ以上はまずいかなと思い素直に正座した。
神様君は満足そうに頷いてから
「よろしい じゃあたっぷりと話そうか飛紙 魔理君。
特別に神様自ら、神様にはどういう風に接するべきかをよくよく教えてあげるよ。
数時間で終わるとは思わないことだね。
わかったかい?」
神様君も僕の前に正座をしたけど、身長差でどうしても神様君が僕を見上げる形になるのがよくないと思ったのか、すぐに立ち上がって僕にそう言った。
「返事が聞こえないよ、飛紙 魔理君」
今神様君を少し見上げる形になっているけど、それでも神様君は中学生が背伸びして先生の真似をしているようにしか見えなくて本日何度目かわからないホッコリした気分になった。
「この距離で一対一なら丸聞こえだよ飛紙 魔理君。
最初らへんから思っていたけど君は本当に肝が座っているね 。 神様であるぼくが感心するほどさ」
神様君は深く長いため息をしてからぼくを真っ直ぐにに見下ろして
「返事」
神様君は無表情でそう言ってきた。
「よろしくお願いします!!」
僕は今までの人生で一番いい返事をしだと思う。
僕の勘がそうしろと言ったのでそれに従う事にしたんだ。
それから十時間くらい話したが最終的に疲れていたのはなぜか神様君の方だった。
僕は元気いっぱい気力いっぱいだったけどね。
おかしなこともあるものだけど、よくあることなのだろう。だって異世界転生も実際にあるこの世この世界、この世界の狭間なんだからね。
最後に
「楽しかったね!もう数時間ぐらい話さない?」
と神様君に聞いたら
「もう勘弁して~~」
と言われ、かなりショックだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます