第2話神様です
ぼくは君たちのこれからの人生を祝福するよ!
君たちはこれから生まれ変わる
記憶は残すも残さないも自由だ!
家庭環境も出来る限り要望に添うようにするよ
容姿についてはあちらの親にかなり左右されるけど頑張ってみるよ!
他にも色々用意するから頑張って生きていってね!
そんな声を聞いて僕は真っ白な空間で目を覚ました。
そこには僕以外にも見覚えのある人たちが倒れていて、
目の前にはカッコいいと可愛らしいの中間ぐらいの容姿をした少年?が僕たちの反応を伺うような表情で見ている。
そして僕たちの視線が自分に集まったと判断したのか
「はじめまして! ぼくは世界と世界の中間管理者 。わかりやすくするなら神さまだよ」
と頭の悪いことを言い出した。きっとここにいる僕と同じ状況の人たちも理解が及んでないに違いない。
「まあまあ、質疑応答はある程度説明をやった後にまとめてやるのがぼくのやり方だからさ。少しだけ静かに聞いていてもらえるかな?」
小学生高学年くらいに語りかける小学校教師のような口調と雰囲気で、そう僕たちに語りかけてきた。
しかし僕たちはここで目覚めてから一言も喋ってない。バカなのだろうか?とここにいるほぼ全ての人間が思ったに違いないね。
「一応神様を自称している者をバカ呼ばわりとは、意外と肝が座ってるね」
自称神がそう言ったとほぼ同時に、僕は顔を自称神様から背けた。
背けた方には、僕と同じように顔を自称神さまから背けている人たちがいる。予想した通りほぼ全員が僕と似たようなことを考えていたんだと思う。
そんな僕たちを見て自称神様(めんどくさいから神でいいか)は手を叩きながらまた喋り出した。小学校の教師口調のままで。
「はーい、みんな前を向いて先せ…ゴッホン。神様の方を見てねー!」
どうやら神は小学校の先生になりきるのにハマったみたいなんだけど、見た目がほぼ小学生もしくは中学一年生に見える神なので少し微笑ましい 。ほっこりして心の緊張がほぐれる気がする。
神は右手をゆるく握って口の前に置き、わざとらしくコホンと咳払いをしてから話を再開した。
きっとあれでさっきの間違えそうになった事をはぐらかそうとしてるんだろうけど、ベタな行動すぎてなんだか劇を見ている気分になってくる。
「(少し顔が赤いのは気にしないよ。指摘もしない、それはマナーだと思うからね)」
ここにいるほぼ全ての人がそう考え、可愛らしい中学一年生教師の話を聞くことにしているに違いない。
「まず、君たちは飛行機事故で亡くなりました。
亡くなる直前のことは今でも思い出せるはずだから、自分がすでに死んでいる事は理解できると思うよ。
その記憶だけでは納得できない人には、予め抜いておいた亡くなる瞬間の記憶と、痛みの感覚をお返しするね。どうする?」
気を改め直してから神が語り出した内容は酷く真面目な話であり、その補足をする様にして、神は顔色を少し暗くしながら聞いてきた。
「あまりオススメはしないかな……今まで何人かがやったけど精神が壊れるか、魂に傷を負うかしてるからね。
ぼくとしては今の精神状態のままでいてほしいからさ、やらないで欲しいな」
僕たちを見つめる目からは、その言葉が本心からの言葉なんだと思わせる何かがあった。
そして白い空間に少しの静寂。そしてその静寂を破る様に周りの人が何人か動くのがわかった。
その人たちを見ると下は十代、上は五十代くらいまでの女性数人と男性数人で、立ち上がって神の方に近づいていく。
神と何か話し合った後、それぞれ神から白く光る球体を受け取り体に取り込んだ。そしてしばらくすると取り込んだ人はうめき出し、泣き出した。
その様子を神は何かを見極めるような表情で男女合わせて数十人を見ていたが、諦めたように手を動かし苦しんでいる人たちを白い玉に変えた。
無意識で口が言葉を紡ごうと動くが、声にならないでいる。僕たちのそんな状況に気づいたのか神は
「この人たちはね、元の世界に守りたい人や会いたい人がいたらしいよ。残っていた記憶だけじゃどうしても納得できなかったんだって。だから記憶と感覚を返してくださいって言われてね。
仕方なく返したんだ。こればっかりはぼくが決めていい事じゃないからね。」
神は数十個の玉を優しく撫でながら
「覚悟をしていてもね、どうしようもないものってやっぱりあるんだよ。今回の事がそれかな。
記憶や痛みを思い出したとしてもね。納得できなくて、信じたくなくてどんどんどんどん自分で心を傷つけていっちゃうんだよ」
神は一通り玉を撫で終わるとどこかへそれを飛ばした
「彼ら彼女らの精神が完全に壊れる前に魂に戻し、本来の命のサイクル通りに魂の記憶を真っ白にして、先に君たちのこれから行く世界に飛ばしたんだ」
神は一呼吸挟んで
「ちょうどいいから本来の命というか魂の流れとか、君たちが今ここでぼくとこうしている経緯とか話そうかな。好きな体勢で聞いてね」
身振り手振りをして楽にしてと伝えてきた。
僕たちは素直に聞く体勢になったことに神は満足そうに頷いてから話を再開する。
「生き物は死んだら記憶を魂に入れたまま、生きていた世界の管理者、まぁ神様のところに行く事になってるんだ。
でも人はちょっと手間でね、宗教や土地とかで別々の神のところに行くんだよね。
宗教や 神話とかによって天国 天界 極楽浄土 冥府 地獄 ヴァルハラ エデン とか色々あるからさ。それらを信じている人は信じている神のところに行って選別されることになっているんだよ」
話を続けながら神の表情はめんどくさそうと言ったものになっていく。
「これがほんっとーにめんどくさいんだ!
一つの土地に一つの宗教とかじゃないからさ!
色々間違いとかがあって神と人が口喧嘩とかが結構あるんだよね!
それでね、ちゃんと人生を歩んだ魂は違う世界に、やり残したことがあったり後悔が強い人生を歩んだ魂はまた同じ世界に、どうしようもない魂は真っ白にして同じような魂とひとまとめにしてかなりの時間漂白することになってるんだけどさ!
神の方がね、そうゆう問題が起こった時にね適当にやっちゃうんだよね!適当にぽいぽいってさ!!
それを尻拭いするのぼくなんだよ!」
と神はためにためた鬱憤をものすごい勢いで吐き出していく。
神は深呼吸をしてから
「後悔とかがある魂はまた同じような環境で同じような過ちをせず、満足いく人生を歩んでもらうために同じ世界に戻す。もちろん記憶は消してね。
意味のないことに思うかもしれないけどね、意外と意味はあるんだ。
後悔とか罪悪感とかってぼくたちが消してもかなりの確率で突然思い出してしまうものでね。
違う世界でも前世のことを思い出す事がたまにだけどあるけどさ、そうなると色々と壊れてしまったり、狂ってしまいやすいんだ。環境や心とかね。
だから出来るだけ傷を癒してもらってから違う世界に送る事になってるんだ。
そういう理由でさっきの人たちは、傷が魂に入る前に魂を真っ白にして違う世界に送ったんだよ。」
「違う世界に魂を送るのは前世を思い出す可能性を減らすため。世界が違ったら常識がかなり違うからね思い出す機会もかなりすくなるのさ。
さっき言ったみたいに絶対ではないけどね」
「どうしようもない魂。真っ白にしてもどうにもならないくらい傷が入ったり 歪んだりしている魂はね、どんなに頑張っても前世を思い出して同じような過ちやよりひどい過ちを犯したりするんだ。
魂に文字通り刻まれてるからね、どうしようもない。
だから一応真っ白にして同じような魂を集めて回し続ける、ぐるぐるぐるぐるってね。
そしたら互いに擦れて小さくなる。ある程度小さくなるとその集団から勝手に出てくるようになっているんだ。」
神はちょっとだけばつが悪そうにして話を続けていく。
「人以外の魂はね、人と比べると小さくてさ。同じ世界に戻しても前のことを思い出すことはないんだ。記憶も殆どの生物は曖昧だしね。
でも大きくなることもあるんだ。成長するだけの経験を偶然する機会があったりしてね。
その大きくなった魂は念入りに真っ白にしてから人に転生させるんだけど、それじゃ動物の魂が減っちゃうよね。だから代わりに小さくなったどうしようもない魂を動物の方に入れるんだよ。」
その話を僕たちはどう受け入れたらいいのかわからなかった。
そして説明がひと段落ついたとばかりに神は僕たちを見回して先生がよくするような確認を入れてくる。
「ここまでは理解できたかな?
かなり貴重で結局意味のない話だけどね。
君たちみたいなのは例外で、普通は記憶を持ち込むかどうかなんて選ばせないもん」
神は自分の手を上げながら
「質問のある人~~~」
と聞いてくる。
本当に先生になりきるのが気に入ったらしいね。
そして早速質問が出る。
「では、私たちがその例外に入れたのはなぜですか?」
女性の声だった。
名前は覚えていないが同じクラスであることは覚えてる。
「いい質問だね。花丸をあげたいくらいさ!
大きな理由は二つあるよ。
1
今から君たちが行く世界を管理している神様と、君たちがいた世界の神様が飲み比べをしてね。負けた方が管理している世界の人の魂を真っ白にせず勝った方の世界に渡すって賭け事をしたんだ。
もちろん負けたのは君たちの世界の神様ね。
それで起こるもろもろの問題は負けた神様が負うことになってるらしいよ。
ぼくにも仕事が回ってきてるけどね。
2
ただ亡くなった人の魂ならなんでもいいってわけにもいかないんだ。
記憶がある状態で違う世界にいくとそれだけで魂に傷が入ったりすることがあるからね。ほら、自分の持っている常識を完全否定されながら生きるのって辛いでしょ?
そこで日本で育った君たちを選んだんだよ。
結構聞くことあるでしょ?転生とか異世界とかさ。
日頃のからの知識としてそういうのがあるとね、わりかし大丈夫なんだ。
常識みたいなのが完全否定されないってのがでかいね!ついでに宗教観が緩くて柔軟な人多いし!」
神の話が終わるとすぐに新たな質問が飛び出る。
「じゃあ俺たちの飛行機事故は神様の都合かよ!」
確か同じクラスのイケイケ君だ。名前は覚えてない。
仕方ない興味がなかったんだ。個別認識するのにはイケイケ君で事足りたしね。
そしてそんな質問に神はイケイケ君を労わるようにして答える。
「ううん違うよ。今回君たちがあった事故はたまたまさ。だからこそ飛行機に乗っていた全ての人がここにきたわけじゃないんだ。ちゃんと選別して違う世界に流す基準をクリアした魂だけがここにいるんだよ。君たちは気づいてないだろうけどね。」
そう答え終わった神くんは何かを決心したような顔で、僕たちに向けて喋り出した。
「話す必要はないかと思ったけどやっぱり話すことにするよ。君たちには知る権利があると思うからね!
負けた神様の御名は須佐之男命っていうんだ。
当神は負けた時のことなんか考えてなかったらしくてね。負けた時に月読尊や天照大御神とかに泣きついて、知恵を貸してもらったらしいんだ。
そしてその二人に知恵を借りて考え付いたのが、地上で物語を書きたいって考えてる人達に異世界転生とか異世界転移とかのアイデアを信託で下しまくるって方法だったんだよ。
それがうまくいって今の日本ではかなり異世界転生とかの知識が浸透したからね、今ぐらいに亡くなった人ならほぼ全部の魂が基準をみたすの様になったのさ。
だから君たちは本当にたまたまなんだよね。
ついでに須佐之男命は今頃、月読尊や天照大御神、日本の死後の管理人である伊邪那美命にしごかれてるよ。
後数百年は三柱に頭が上がらないだろうねあのバ…じゃない須佐之男命。一応ぼくより上位の神様だからね尊敬してるよ。本当に、嘘はついてないからみんなそんな顔でぼくを見ないでくれないかな。」
一通り話終わったのか、神は僕たちを一通り見てから
「もう質問はないかな 。じゃあ改めて!
ぼくは世界と世界の間を管理する者!
君たちは神同士の盟約により、君たちが生まれ育った世界とは違う世界に記憶を保持したまま転生することができる!
君たちが行くその世界は、科学が発展する機会がなく、またその必要性も感じる人がいない世界!
つまりは
もちろん記憶の有無は君たちが選べばいい!当然の権利さ!
生まれる環境は出来る限り希望に沿うようにあちらの神と打ち合わせをするよ!
容姿についてはまぁ頑張ってみるさ!
あんまり期待はしないでいてくれると助かるかな…。
……やっぱり親の遺伝子によるものだからさ。
あちらに記憶ありでいくにあたって苦労することもあると思う!!
だから記憶を持っていく魂に限りぼくとあちらの神様が用意した
もちろんそれがいい結果に繋がるとは限らない。
記憶がない状態で普通に人生を始めた方が幸せになれるかもしれないしさ!!
あちらの神には記憶を持たせた魂を送ることになっているけど、ぼくは選ぶ権利は君たちにあると思っている。だから自分が選びたい方を選んでほしい!」
見た目小学生高学年か中学一年にしか見えない少年が堂々とした姿勢と声音でぼくたちにそう言いきった。
不覚にも神々しく感じてしまう自分がいる。
「(…やっぱり神はダメかな、ちゃんと神様と呼ぶことにしよう。)」
すると「ぼくは本物の神様だよ!」と口パクで僕の方を向いて伝えてきた。
ちょっとホッコリしてしまう。
「(……やっぱり神様じゃなくて神様君にしよう。その方がしっくりくるしね。)」
神様は何かを諦めたようにため息を小さくついていた。
「(……やっぱり神様君は心が読めるらしいね。いや、心の声を聞けるのかな?
微妙な言葉のニュアンスも伝わってるし後者かな?)」
僕が神様君の方を(面白いものを見つけた時の)笑顔で見ると、神様君は苦笑いを浮かべた。
「(……神様君呼びでも怒らないし、問題ないみたいだね。)」
僕は小さく神様君はに手を振っておいた。
そしたらちゃんと手を振り返してくれる神様君。本当にいい子だ。
心の中で面白がっていると神様君は何かを諦めるように小さくため息をした。
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