楽しむために書く短編集
ユアキ
猫吸い
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※小説ルール等が気になる方は閲覧注意です
友人と猫トーク @学校
「あーー、猫が吸いたい」
「いやいや、薬とちゃうんやから」
「癒し効果あるし、もはや万能薬だよ。猫は、うん」
「あーー、そういうの聞いたことあるけど本当なんだね」
「今度、私の家で飼ってる猫吸ってみるかい」
「え、いいの。少し興味あるし、お願いしようかな」
「任せたまえーー、中毒性あるから気をつけてね」
□
友人B 猫を吸う @友人Aの家
「これが我が家の『むぎのすけ』だよ。マジ天使だろ」
「あーー、確かに天使並に可愛いな。触っても良いかい」
「どうぞどうぞーー」
「めっちゃ大人しいし、フカフカで気持ち良いね」
「だろーー、ちょっと私に代わって」
「あ、うん」
「ああああああああぁぁぁ。スーー、ハーー。マジ最高、お腹いい匂い、フカフカ。幸せ過ぎるぁあ」
「猫吸っとる……。傍から見る人の猫吸いって、何か見てはいけない背徳感のような感じがするのね」
「あーー、幸せだった。急にごめんなー、代わるわ」
「ん、どれどれ。スーー、ハーー」
「おおっ、初めての猫吸い上手いじゃん」
「何これ、めっちゃ癒される。フカフカなマクラに近い肌触りだけど、生き物の温もりと鼓動から安心感みたいなのが伝わる」
「そうだろーー、ヤバいだろ」
「これは、薬だわ。ずっと吸いたくなる中毒性高めの薬だわ」
「分かって貰えたようで何より。ようこそ、猫吸いの世界へ」
「扉開いちまったわ……。スーー、ハーー」
□
猫 @家
「にゃーー」
吾輩の声は、下僕には届かぬ。
「にゃーー、にゃん」
今のは『後でチャオチュール寄越せよ』という意味だ。
吾輩の下僕は、夕暮れに帰ってくると、毎日のように吾輩の腹へ顔を填める。
今日は下僕が友人を連れてきたようで、その友人も吾輩の腹に顔を填めてきた。
「んなーー」
今のは『下僕が乗り移ったのか』という意味だ。
言葉の意味が伝わっていないことは分かっている。しかし、声を発すると、何かしら伝えたいことがあると伝わる気がする。
吾輩は綺麗好きなので、誰かに体を触られることは不快である。触れられた部分の毛繕いは大変なのだ。
「むぎのすけーー、愛しているーー」
しかし、この下僕が吾輩の腹に顔を填めてくることは、仕方なく我慢してやってる。吾輩が下僕からチャオチュールをもらう時に感じる幸福感。その幸福感を、この下僕は吾輩の腹に顔を填めることで感じていると知っているからだ。
吾輩は律儀な猫である。与えられっぱなしの堕落した猫とは違う。きちんと借りは返す、ジェントルメンな猫なのだ。
下僕の言葉でいう『猫吸い』の等価交換に、吾輩はチャオチュールをもらうのだ。
□
下僕と猫 @下僕の家
「にゃーー、にゃあん」
「はいはい、チャオチュールを献上致しますよ」
「んな、んー」
「今日も猫吸い最高でございやした、どうぞお召しあがり下さい」
「にゃーー、にゃん」
「友達の猫吸いにも協力して頂いたので、今日は大好物の『まぐろとカツオ』の味付けですわよ」
「んーー、にゃむ」
□
チャオチュール @購入者の家
俺は猫と猫の飼い主の為に調理された。『猫フード』である。
俺の使命は、『猫と飼い主の絆を深める』ことだ。飼い主の手から液状の餌を直接与えるという、今までに無かった食事スタイル。その食事スタイルを可能とする俺は、更に猫と飼い主のコミュニケーションを深められる存在なのだ。
俺は購入者や猫のように声を発することは出来ないが、聞こえるし、理解もできる。
「猫吸い、喜んでもらえてよかったな」
本日、購入者が友人に『猫吸い』の魅力を伝えられてご機嫌であることも知っている。
「んなーーお」
猫の『むぎのすけ』が友人の猫吸いに耐えた分、いつも以上に美味しい猫フードを望んでいることも知っている。
私は購入者に気づかれない程度に、様々な同胞に囲まれたケースの中で自身の存在感を強くした。
ささみ味、今日は貴様の出番ではないのだ。貴様はむぎのすけがご機嫌なときに選ばれる存在なのだよ。
そしてついに、俺の使命を果たす時がやってきた。
「友達の猫吸いにも協力して頂いたので、今日は大好物の『まぐろとカツオ』の味付けですわよ」
「んーー、にゃむ」
むぎのすけの『求めてた、この味!!』という言葉を聞くが最期に俺は意識を失った。
(にゃむにゃむ 意味:おわり)
☆☆☆☆☆☆☆☆
あとがき
閲覧ありがとうございました。
ノリとテンションで執筆しましたが、とても楽しかったです。
執筆しながら物語を考えるので、まさかチャオチュール視点で完結するとは初めは全く思いませんでした。
ちなみにその後、下僕の友人は、近所の駐車場で子猫を拾ったようです。猫吸いを試みますが、カリカリパワーでは等価交換出来ないようで、引っかき傷が耐えません。
楽しむために書く短編集 ユアキ @yuaki
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